兵士不足のウクライナ軍が外国傭兵部隊と化していく現実

定員の半数の兵士しか配置できない?
6月20日、サンクトペテルブルグ国際経済フォーラムの全体会議に出席したウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナの兵員不足について興味深い指摘をした(下の写真)。「戦闘部隊の人員配置は47%だ。全部で47%だ! 彼らは基本的に戦闘態勢を失っている」
この47%という数字の根拠は示されていない。それでも、ロシア側からみて、ウクライナ側の兵員の数があまりにも少ないというのが実感であることが想像できる。
(出所)http://static.kremlin.ru/media/events/photos/big2x/OddWf2hMCBVz7E8LeuZzAUltIA1BAJk3.jpg
つまり、このサイトで何度も書いてきたように、ウクライナは敗色濃厚なのだ。そもそも、戦うべき兵士がいないのだから。拙稿「【信じられない真実】3年目の新年、すでにウクライナ戦争の勝負は決している」において紹介したように、もはや戦争に勝てると思っているウクライナ人は少数にすぎない。
2022年2月24日以降のウクライナ戦争勃発直後には、侵略された側のウクライナの軍隊の士気はたしかに高かった。ゆえに、志願してウクライナのために戦おうとする若者も多かった。だが、戦争が長引くにつれて、あるいは、負け戦になるにつれて、ウクライナの人々のなかには、兵役を忌避したり、国外に脱出したりして、何とか兵士への動員から逃れようとする者が急増している。
兵士になっても、「脱走」という手がある。前述の拙稿で紹介したように、脱走兵数が「20万人に上る可能性がある」。
こうした厳しい「現実」に対応するため、ウクライナ政府は、路上強制連行(「バス化」)を黙認してきた。だが、不条理な暴挙への風当たりは強く、各地で、強制連行を働いている地域募集センター(TCC)と地元民の騒動が頻発している(拙稿「ウクライナで恐ろしい「バス化」=路上強制兵役連行が頻発中!」を参照)。
外国人傭兵への依存が増す一方
このため、別の兵員集めとして注目されるようになったのが外国人傭兵である。昨年10月に公表された記事によると、「ウクライナ政府は2万人以上の外国人志願者を募集したと主張しているが、現在の独自の推定では、ゼレンスキーの呼びかけに実際に応じたのは数千人に過ぎないだろう」という。
ただ、最近になって変化があった。外国人の傭兵を募集しやすくするため、ウクライナ政府は4月、軍隊への非国民の徴兵手続きを簡素化し、当局が彼らの交通費、食費、宿泊費を手配・負担する権限を与えたのである(「ニュース・プラウダ」を参照)。
6月19日付のThe Economistの記事「ウクライナは労働力強化のため海外に目を向ける」によれば、「デジタル広告キャンペーンが開始され、当初はラテンアメリカに集中した」。そして、「1日に100件以上の新規申し込みがあり、その勢いは期待できる」、と紹介している。
新兵は通常、自費でウクライナに赴き、ウクライナ兵より優遇されることはなかった。 しかし、前述した4月の改正により、外国人のウクライナへの渡航費用が支給できるようになった。さらに、月給が3000ドル(南米の貧しい地域の平均の10倍)という、前線での給与が傭兵応募の動機づけとなっているという。
ロシア軍もすでに「多国籍軍」
なお、ロシア側も外国人傭兵を活用している。ロシアの独立系メディア『Important Stories』が4月23日に発表した調査結果によると、2023年4月から2024年5月の間にモスクワの採用センターを通過・処理された外国人は48カ国、1500人以上で、少なくとも1300人の国籍が特定されている(下図を参照)。
ネパールがトップで、少なくとも603人がロシア軍に入隊した(ネパールからの外交的抗議を受け、年末までに募集は減少したと伝えられている)。その他の国籍としては、スリランカ(64人)、中国(51人)、インド(43人)、セルビア(8人)、キューバ(8人)、ラトビア(4人)などである。旧ソ連諸国からは、タジキスタン(86人)、ウズベキスタンとベラルーシ(各71人)、キルギス(64人)、カザフスタン(59人)、トルクメニスタン(19人)、モルドバ(12人)などが入国している。
(出所)https://istories.media/en/stories/2025/04/23/mercenaries/
深刻なウクライナの兵員不足
ウクライナの兵員不足の深刻さは、大学や大学院で学ぶ学生を除籍処分として、動員しようという苦肉の策によっても証明されている。
ウクライナの情報によると、昨年4月から8月にかけて、30歳以上の男子学生2万3448人がウクライナの高等教育機関から退学処分を受けた。その理由は、学業成績不良、授業に出席しないなどだが、動員忌避のために学生身分になった者が相当数いた。つまり、大学などの高等教育機関の側から、2023年から2024年にかけて、軍人の年齢(とくに30歳以上)の男性を大量に入学させ、動員から逃れる手助けをすると同時に、多額のカネを得ていたケースがあったのだ。ウクライナ国家行政庁の勧告により、ウクライナ国家警察は高等教育機関の職員に対して8件の刑事訴訟を開始したという。あるいは、高等教育機関の免許剥奪事例も増加した。
さらに、オクセン・リソヴィ教育科学大臣は今月、リヴィウ州の高等教育機関の学長らと会合を開き、25歳以上の学生に対する偽の教育について話し合った(「フェイスブック」を参照)。昨年4月、動員の対象年齢が27歳から25歳に引き下げられた結果、25~60歳までの男性が強制動員の対象となっているため、25歳以上の学生について、大量退学をさせることが決まったとみられている。
報道をみると、リソヴィ大臣が「教育を受ける権利は、国家を守る義務から免除されるものではない」とか、「これは単に合法性の問題ではなく、名誉、職業上の名声、市民としての責任の問題でもある」と強調した、としか書かれていない。だが、これは事実上、25歳以上の学生を大学・大学院から除籍させて動員に道を拓くものと理解されている。
ウクライナで腐敗が蔓延
このように、ウクライナの内情を知れば知るほど、ゼレンスキー大統領が多くの国民を無駄死にさせようとしている「現実」がみえてくる。だからこそ、プーチン大統領も、紹介したサンクトペテルブルクでの話のなかで、「私たちはウクライナに降伏を求めているわけではない。私たちは、現地で形成された現実を認めることを主張しているだけだ」とのべている。
ウクライナの「現実」として、腐敗の蔓延がある。その腐敗の当事者がゼレンスキーの側近であるにもかかわらず、ゼレンスキーはこの「現実」を国民に知らせないようにしてきた。もちろん、ゼレンスキーの肩をもつオールドメディアはこの「現実」に目を瞑(つむ)ってきた。
実は、6月20日、「ゼレンスキーの財布」と呼ばれるティムール・ミンディッチ(下の写真)が、カルパチア山脈の西、トランスカルパティア地方経由で海外に逃亡した。 オレクサンドル・ドゥビンスキー元国会議員が反逆罪で服役中の刑務所から「テレグラム」で伝えた。ミンディッチは映画プロデューサー兼実業家で、ゼレンスキーが大統領就任前に共同設立した「クヴァルタル95」の共同経営者の一人である。
一説には、選挙キャンペーン中にゼレンスキーが運転したのはミンディッチのメルセデスであり、2021年のパンデミックの隔離のさなかに大統領の誕生日にサプライズがあったのは、ミンディッチのアパートだったとされる。そう、それほど二人は太いパイプで結ばれていたのだ。
ミンディッチ逃亡の背後には、独立系ジャーナリストによって運営されるBihus.infoが5月20日に公表した調査結果がある。ウクライナの要塞建設における工作に関する調査で、ジャーナリストたちは、この目的のために割り当てられた予算資金のかなりの部分が、ゼレンスキーの仲間、とくにミンディッチとつながっている可能性のあるフロント企業を通じて引き出されていると主張した。
副首相にも嫌疑がかかった
より深刻なのは、オレクシー・チェルヌイショフ副首相兼国家統一相(下の写真)にも汚職の嫌疑がかかっていることである。6月13日、ウクライナ国家汚職対策局(NABU)と汚職対策特別検察庁(SAP)は、国家の最高幹部が関与した建設分野における汚職事件を摘発し、その被害額は10億フリヴニャ(約36億円)以上にのぼると発表した。NABUとSAPは5人の容疑者を起訴したが、そのなかにチェルヌイショフに関連する2人、元国家建設省事務次官のヴァシリー・ヴォロディンと元大臣顧問のマクシム・ゴルバチュクも含まれていた。二人とも、チェルヌイショフが国営のナフトガスで経営トップに就いていたとき、彼を支えていた人物だ。
NABUとSAPは、6月23日にチェルヌイショフに容疑状を交付するため、内閣事務局に召喚状を送った。
同日、「ウクラインスカヤ・プラウダ」は、6月19日にチェルヌイショフの息子が、6月20日に妻がウクライナを離れ、本人もオーストリア出張から戻らないのではないかとの見方を報じた。実際には、22日になって、チェルヌイショフは自身のファイスブックに、「ようやく帰宅。大変だったけれど、とても重要な出張(一部のメディアのおかげで、思いがけず人気が出た)が終わった」と投稿した。
(出所)https://www.rbc.ru/politics/21/06/2025/685703a29a7947725df22092?from=from_main_9
なお、先のドゥビンスキー元国会議員によると、「チェルヌイショフはミンディッチの助けでキエフ州の知事になり、その後、地域大臣(地域開発大臣)、国営のナフトガスのトップになった」という。つまり、二人は接点をもち、二人ともゼレンスキーの側近であった。どうやら、ゼレンスキーの周辺には、灰色や真っ黒な要注意人物が多くいるようなのだ。
ウクライナのラスプーチン
この「現実」を率直に認めようとしないゼレンスキーの背後で、彼を操っているようにみえるのがアンドリー(アンドレイ)・イェルマーク大統領府長官である(下の写真)。彼については、拙稿「ゼレンスキー大統領を操る「ウクライナのラスプーチン」の正体」で詳しく説明したことがある。
最近になって、政治に特化した米国のニュースメディアである「ポリティコ」は、6月19日、「ワシントンはアンドリー・イェルマークにうんざりしていた」という記事を公表した。イェルマークのワシントンでのやり取りを知る人物など14人に話を聞いて書かれた記事のなかで、行政当局の考えに詳しい人物は、イェルマークがウクライナを「世界の中心」のように振る舞っているとのべた、と書かれている。トランプは「彼らの言葉や行動は役に立たない」と常に言っている、とこの人物は述べたという。そう、ウクライナの「現実」を糊塗し、嘘ばかり言っているからだ。
つまり、少なくともホワイトハウスの当局者は、オールドメディアと異なって、イェルマークが隠そうとしているウクライナの内情を知っている。イェルマークやゼレンスキーが「現実」を隠蔽してワシントンを騙そうとしているということにも気づいている。
気づいていないのは、オールドメディアの情報しか接する機会のない大多数の人々ということではないか。米国では、ようやくイェルマークやゼレンスキーの嘘が暴かれつつある。しかし、日本ではそうではない。相変わらず、オールドメディアが国民を騙しているからではないか。ここで紹介したような事実を報道しないオールドメディアは、不誠実そのものである。



コメント