「ライバルなのかパートナーなのか?」習近平国家主席がアメリカへ問いかけたワケ

現代の中国

中国はアメリカの言行不一致にずっと苛立ちを募らせてきた。アメリカは「『一つの中国』政策に変更はない」と言いながら台湾への武器売却のレベルを上げ続けている。また、「同盟体制を強化することで中国包囲網を築かない」と言いながら日本やフィリピンと同盟関係を強め、東シナ海や南シナ海では大規模な軍事演習を続け、中国へのプレッシャーを強めている。そのことはメディアで「中国を念頭に」という言葉が頻出する点からもよく分かる。

サリバンが北京に到着した同じ27日にも米インド太平洋軍のサミュエル・パパロ司令官が、南シナ海で補給任務に当たるフィリピン船を「アメリカの船が護衛する可能性がある」と述べ中国側の神経を逆なでした。

半導体などハイテク製品の輸出を制限し、中国の発展を抑制しようとする動きも相変わらずだ。つまり、バイデンとの首脳会談でいくら原則を確認し合ったところで、中国側には徒労感が残るばかりだというのが習政権の言い分なのだ。

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8月29日、中国の習近平国家主席は、訪中したアメリカのサリバン大統領補佐官と会談。バイデン政権による電気自動車(EV)への追加関税の流れがEUにも広がった微妙な時期に、習近平氏がサリバン氏をにこやかに迎え入れたことは、識者にとっても少し意外だったようです。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』で

「ライバルなのかパートナーなのか?」習近平国家主席がアメリカへ問いかけたワケ

8月29日、中国の習近平国家主席は、訪中したアメリカのサリバン大統領補佐官と会談。バイデン政権による電気自動車(EV)への追加関税の流れがEUにも広がった微妙な時期に、習近平氏がサリバン氏をにこやかに迎え入れたことは、識者にとっても少し意外だったようです。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では、多くの中国関連書を執筆している拓殖大学の富坂教授が、中国政府にとって外国の要人との会談での表情がいかに重要かを解説します。そのうえで、笑顔が多かった習氏からバイデン政権への問いかけを抜粋。その背景を説明し、可能性が浮上した米中首脳会談の行方に注目しています。

サリバン訪中 中国はバイデン政権のメッセージをどこまで本気で受け止めたのか

習近平国家主席は8月29日午後、北京を訪問したアメリカのジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)と人民大会堂で会談した。まず気が付いたのは、案に反して習近平がにこやかだったことだ。キッシンジャー元国務長官(故人)を迎えるほどではないにしても、終始笑顔だった。

国民が注目する会談では、表情の硬軟は重要な意味を持つ。どんな表情を見せるのかは当然ながら中国の外交姿勢を示すからだ。今回のサリバンとの会談は、中国を取り巻く国際環境を考えれば、習政権にとってメリットは少ない。バイデン政権が仕掛けた「中国EV(電気自動車)に対する反補助金関税」の流れは、いまやEU(欧州連合)、カナダにまで広がり、中国の自動車メーカーはその対応に四苦八苦している。そんななか、大統領補佐官を笑顔で歓待すれば国民の不満が政権へと向きかねない。

大統領選挙を控えた時期であればなおさら様子見を決め込むのが得策である。ジョセフ・バイデンに代わり新たな民主党の大統領選の候補となったカマラ・ハリス副大統領も、現状を見る限り共和党と競うように対中強硬姿勢を打ち出している。

サリバンは北京で、軍の制服組幹部・張又侠党中央軍事委員会副主席とも会談した。そのとき張が「あなたが私と会うことを求めてきた」と語ったように、今回の会談はバイデン政権からの要請で実現している。その意図は「最大の競争相手の中国ともきちんと関係を築いている=コントロールできている」と大統領選挙前にアピールすることだと考えられる。習政権はそれに応じたということだ。

さて、その上で今回の会談の意味を考えよう。少し乱暴に中国側の目的を一言でまとめれば、「はっきりしろ!」だ。「アメリカはいったい、中国との関係をどうしたいのか?」というメッセージをアメリカに送ることだ。サリバンを迎えた習近平は、世界に対する米中両大国の責任と平和を維持する役割に触れた後に、こう問いかけている。

「中国とアメリカは一体ライバルなのか、それともパートナーなのか。そうした根本的な問いにしっかりと答える必要がある」

以前にもこのメルマガで書いてきたが、中国はアメリカの言行不一致にずっと苛立ちを募らせてきた。アメリカは「『一つの中国』政策に変更はない」と言いながら台湾への武器売却のレベルを上げ続けている。また、「同盟体制を強化することで中国包囲網を築かない」と言いながら日本やフィリピンと同盟関係を強め、東シナ海や南シナ海では大規模な軍事演習を続け、中国へのプレッシャーを強めている。そのことはメディアで「中国を念頭に」という言葉が頻出する点からもよく分かる。

サリバンが北京に到着した同じ27日にも米インド太平洋軍のサミュエル・パパロ司令官が、南シナ海で補給任務に当たるフィリピン船を「アメリカの船が護衛する可能性がある」と述べ中国側の神経を逆なでした。

半導体などハイテク製品の輸出を制限し、中国の発展を抑制しようとする動きも相変わらずだ。つまり、バイデンとの首脳会談でいくら原則を確認し合ったところで、中国側には徒労感が残るばかりだというのが習政権の言い分なのだ。

サリバンは、会談なかで「バイデン大統領は、近い将来に再び習主席との意思疎通の機会を得ることを望んでいる」と述べ、これを受けてメディアは「大統領選挙前の米中首脳会談の可能性が出てきた」(香港TVB)と報じている。とはいえ中国は、前回カリフォルニアで行われた米中首脳会談をある程度評価し、その感覚は米中が共有している。サリバンは、「サンフランシスコでの米中首脳会談以来、双方は両国首脳間の共通認識を真剣に実行に移し、前向きな進展を得てきた」と語っている。

たとえ牛歩の歩みといえ、米中関係は前に進んでいる。少なくとも後退はしていないという認識だ。その上で次に首脳会談を行うのであれば、「はっきりしろ!」と中国が──(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2024年9月1日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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