
宇宙は膨張と収縮を繰り返している? やがて我々は一点に収束してしまう「ビッグバウンス理論」

宇宙は誕生以来膨張を続けていると考えられてきましたが、近年の研究では膨張と収縮を繰り返している可能性が示唆されています。最新の宇宙論に基づくシミュレーションや観測データにより再び注目を集めている「ビッグバウンス理論」をご紹介します。
■宇宙の膨張と「ビッグバウンス」理論

従来の宇宙モデルは、約138億年前の「ビッグバン」によって宇宙が誕生し、加速膨張を続けていると考えられてきました。しかし、膨大な宇宙を加速膨張させている力は何なのでしょうか。それは、「暗黒エネルギー(ダークエネルギー)」によるものと考えられています。ダークエネルギーは宇宙の全エネルギーの約70%を占めていると考えられる、正体不明のエネルギーです。宇宙空間を収縮する方向に力を与える重力とは異なり、宇宙空間を膨張させる斥力を発生させています。
しかし最近の理論では、宇宙が膨張と収縮を繰り返している可能性が浮上しているのです。これは「ビッグバウンス理論」と呼ばれる仮説であり、宇宙は無限に続くサイクルの一部であるとする考え方です。その理由として挙げられるのは、ダークエネルギーの変動です。ダークエネルギーの密度が一定ではない可能性が示唆されており、これが宇宙の収縮フェーズに移行する要因となる可能性があるというのです。
■最新の研究が示す根拠

もし本当に収縮が始まるのだとすると、この宇宙はある程度まで膨張すると収縮を始め、やがて一点に収束し、再び新たなビッグバンを引き起こします。つまり、宇宙の始まりと終わりは一度きりではなく、何度も生まれ変わっている可能性があるのです。
近年の観測や理論研究により、ビッグバウンス理論を支持する根拠が提示されています。それは、宇宙の誕生の痕跡とされる「宇宙マイクロ波背景放射(CMB)」に微妙なゆらぎが見られることが報告されています。このゆらぎは、以前の宇宙が収縮した際の痕跡である可能性があり、宇宙がサイクルを繰り返している証拠となるかもしれないのです。宇宙背景放射の精密観測が進むことは、宇宙の収縮・膨張メカニズムの解明に繋がる可能性を秘めています。
■もう一つの終焉のシナリオ「ビッグリップ(大裂破)」

宇宙の未来には、ビッグバウンス理論以外にもシナリオが考えられています。その一つは、永遠に宇宙が加速し続ける「ビッグリップ(大裂破)」です。ダークエネルギーが宇宙の膨張を加速させ続け、最終的に銀河や原子までもが引き裂かれ、バラバラになるシナリオです。私達を構成している分子や原子などの引力より、ダークエネルギーの斥力が上回ることで、私達はその形状を維持することができなくなります。この場合、宇宙は永遠に拡大し続け、有限な時間という概念さえ無限大に到達し、やがて物理法則すら成立しなくなる世界が待っていると考えられています。
宇宙が本当に膨張と収縮を繰り返しているのか、それとも永遠に膨張し続けるのか、あなたの明るい未来は今も膨張していますか?
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