またもや愚挙…ゼレンスキーがトランプを無視して「8月まで戦争継続」を決断

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は4月15日、議会に戒厳令と総動員を90日間延長する法案を提出した。その二つの法案は16日に可決された。法律は5月9日に発効するため、戒厳令の期間は8月6日まで延長されることになる。
法律案第13172号「ウクライナにおける戒厳令の延長に関するウクライナ大統領令の承認について」は、357人の国会議員が賛成票を投じ、1人の国会議員が反対票を投じた。法律案第13173号「総動員期間の延長に関するウクライナ大統領令の承認について」は、346人の国会議員がこの決定に賛成し、1人が反対、1人が棄権した。具体的には、2025年4月15日付ウクライナ大統領令第235号「ウクライナにおける戒厳令の延長について」と、同大統領令第236号「ウクライナにおける総動員の延長について」が採択され、5月9日からさらに90日間、8月7日午前5時29分まで戒厳令と総動員を延長するものである。
(出所)https://www.golos.com.ua/article/383439
戦争を継続したいゼレンスキー
この出来事は、戒厳令と総動員の期限がまだ残されているなかで、早めに延長を決めることで、ゼレンスキー大統領に停戦する気がないことを示している。なぜなら、動員の継続は、ウラジーミル・プーチン大統領が出していた完全停戦のための条件に明らかに反しているからである。
プーチンは、3月18日、2時間半にわたるドナルド・トランプ大統領との電話会談のなかで、ウクライナにおける強制動員やウクライナ軍の再軍備が停止される(つまり武器の納入が停止される)場合にかぎって完全停戦に同意するとしていた。その意味で、この最低条件を守るつもりのないことを示すことで、ゼレンスキーはウクライナ側に停戦する気がないことを明示したかったのだろう。
しかも、戒厳令と総動員の期限がまだ3週間あまり残されているにもかかわらず、早めに90日間の延期を決めたことで、戦争継続路線が確固たる方針であることをあえて内外に誇示しようとしているようにみえる。こうしたゼレンスキーの姿勢は議会にも影響し、議会内において、ほとんど反対者を出さないまま、二つの法案の可決にも成功した。
ただ、反対票を唯一投じたオレクシー・ホンチャレンコ議員は、動員解除がまだ行われず、復員も兵役条件もまだないなかで、動員をつづけようとするゼレンスキーを厳しく批判していた。しかも、「バス化」と呼ばれる、人々を路上で無理やりバスに押し込めて動員するやり方に大きな疑問符を投げかけてきた(昨年12月11日付拙稿「いつまでも戦争止めないゼレンスキー」を参照)。
ゼレンスキーを批判すれば殺される
ただし、この議会採決は、ほぼ100%の議員が戒厳令と総動員の延長に心から賛成していることを意味しているわけではない。ゼレンスキーを表立って批判すれば、殺されるかもしれないというムードが、ウクライナ内部に広がっていることを忘れてはならない。
おりしも、ウクライナの作家でジャーナリストのオレシュ・ブジナが2015年4月16日、キエフの自宅玄関で射殺されから、10年を経過した。ブジナはいわゆる「マイダン革命」によって政権に就いた政府とドンバスでの戦争に反対しており、ウクライナ政府当局やナショナリストから強く反対されていた。いまだに犯人は逮捕・起訴されていない。それどころか、殺人事件にウクライナ当局がかかわっていた可能性がある(「ストラナー・ニュース」を参照)。
つまり、クーデターによって武力で政権を握った側は、それに反対する国内にいる批判勢力を殺害することで、権力保持に奔走してきた。ゆえに、たとえ選挙で当選したペトロ・ポロシェンコやゼレンスキーが大統領になっても、それらの政権は、クーデター政権の延長線上で暴力による支配から脱したとは言い難い状況をつづけている、と指摘しなければならない。そう、裏では、反政府勢力は弾圧されており、下手をすると、殺害されかねないのである。
アメリカが離反していく
戒厳令と総動員が延長されることになったとはいえ、ゼレンスキーは政令によって簡単に戒厳令と総動員を撤廃できる。このため、ゼレンスキーは敵対する候補者を油断させて突然、戒厳令や総動員を停止して、大統領選に打って出る可能性もある。
ごく単純に考えれば、今回の延長によって、大統領選は早くとも11月にしか実施されないことになる。8月6日以降に戒厳令が継続されない場合、大統領選挙運動のための90日間を考慮すると、11月になってしまうからだ。
それでも、選挙が近づいているのは間違いない。ゆえに、4月13日付の「ニューヨーク・タイムズ」は、「ウクライナの政治家たちは国内で策略を巡らせ、舞台裏でトランプ政権に働きかけている」と書いている。
他方で、こうしたゼレンスキーの身勝手な判断はトランプを怒らせる可能性がある。戒厳令を延長させることで、大統領選を実施せず、1年以上も大統領の座にいすわろうとするゼレンスキーは、そもそもおかしい。2月に、トランプがゼレンスキーを「選挙なしの独裁者」と呼んだことは、その通りなのである。
それどころか、独裁者ゼレンスキーは、戦争継続の理由をプーチンの好戦性に求め、自分は何も悪くないという姿勢をとりつづけている。民主主義を無視し、敗色濃厚なウクライナ戦争の継続にしがみついているゼレンスキーを支持・支援しているのは、もはや欧州諸国と日本くらいだろう。
たとえば、米国は、4月13日に35人の死者を出したウクライナの都市スームィへのロシアのミサイル攻撃を非難する共同声明に賛同しない意向をG7の同盟国に伝えた、と「ブルームバーグ」は報じている。
(出所)https://novayagazeta.eu/articles/2025/04/14/sunday-bloody-sunday-en
今回のゼレンスキーのやり方をみて、戦争を停止しようとしないゼレンスキーのひどさに、欧州諸国も、そして、日本も気づいてほしいと思う。少なくとも、トランプはすでにゼレンスキーのひどさに気づいているのだから。
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