4月1日、イスラエル軍が、シリアのダマスカスにあるイラン領事館を空爆した。
この攻撃でイランの将校7名が死亡したと伝えられている。
イスラエルは、国際法で保護されている外交施設を破壊した攻撃により、国際法を守る意思がないことを自ら示すことになった。また、ガザではイスラエル軍による破壊と殺戮が続いており、すでに3万数千人が殺害されたと言われている。このような状況で国際社会のイスラエルに対する非難が集中し、国際社会の中での孤立を招いている。
この攻撃の意図は、イランに対する挑発、反撃を狙っているものだと思われるが、イランは「対抗措置をとる権利を留保しつつ、反撃の種類と攻撃者への処罰を決定する」と慎重な姿勢を示している。
直接的な武力での反撃が始まれば、中東戦争や核兵器の使用、そして世界大戦にまで広がる危険性があるが、現段階ではこの可能性は低いと思います。
イランやイスラム教国、そしてバックにいるロシアや中国は、政治的にイスラエルと米国、英国を追い詰める方策をとると思います。
或いは、ホルムズ海峡、バブ・エル・マンデブ海峡の封鎖、海底ケーブルの切断などでイズラエルや欧米諸国に経済的打撃を与える作戦に出るかも知れません。
いずれにしても、予断を許さない状況だと思います。
国際法を無視してイランの領事館を空爆したイスラエルをアメリカは擁護し続ける
イスラエル軍は4月1日、シリアのダマスカスにあるイラン領事館をゴラン高原の方向から空爆した。イランのIRGC(イスラム革命防衛隊)の特殊部隊と言われているコッズのモハマド・レザー・ザヘディ上級司令官と副官のモハマド・ハディ・ハジ・ラヒミ准将を含む将校7名が死亡したと伝えられている。国際法で保護されている外交施設を破壊したイスラエルは国際法を守る意思がないことを示した。イスラエルの守護者であるアメリカやイギリスやも同様だ。
現在、ガザではイスラエル軍による破壊と殺戮が続いている。すでに3万数千人が殺害されたと言われているが、瓦礫の下に眠っている死体の数は不明だ。イスラエルやその守護者たちは虐殺が始まれば住民が逃げ出すと思ったのかもしれないが、そうした展開にはならず、殺戮者としてのイメージを世界に広めている。
イスラエル政府は領事館への攻撃でイランを挑発、反撃を誘っていると見られている。その反撃が激しければ、アメリカ軍が介入する理由として使えると考えているのだろう。イスラエルはレバノンへの軍事侵攻を計画していると言われているが、単独で侵攻すればヒズボラに負ける可能性が高い。アメリカ軍が必要だ。
2014年にアメリカのバラク・オバマ政権の政策によってダーイッシュ(IS、ISIS、ISILなどとも表記)は作り出され、その武装集団は残虐さを演出、アメリカ/NATO軍を介入させようとした。
しかし、その直前、シリア政府の要請でロシア軍が介入してダーイッシュやそのほかのアル・カイダ系武装集団を敗走させてしまった。そこでアメリカなど西側の国は「静かに」軍隊をシリア領内へ侵入させ、基地を築いて戦闘員を訓練したり石油を盗掘している。
領事館の破壊と要人の殺戮はイランがイスラエルに対して大規模な反撃を始める正当な理由になるだろうが、今回の場合、イラン外務省のナセル・カナニ報道官によると、イランは「対抗措置をとる権利を留保しつつ、反撃の種類と攻撃者への処罰を決定する」と慎重な姿勢を示している。ホセイン・アミールアブドッラーヒヤーン外相はアメリカの責任にも言及した。
10月7日に実行されたハマスを含む武装集団によるイスラエルへの攻撃はイランが首謀者だとイスラエルは主張しているが、その証拠は示されていない。そもそもハマスはPLOのヤセル・アラファト対策でイスラエルが創設した組織。ムスリム同胞団のメンバーだったシーク・アーメド・ヤシンは1973年にイスラエルの治安機関であるシン・ベトの監視下、ムジャマ・アル・イスラミヤ(イスラム・センター)を、そして76年にはイスラム協会を設立している。そして1987年、イスラム協会の軍事部門としてハマスは作られた。
2004年にヤシンとアラファトは暗殺されているが、09年に首相へ返り咲いたネタニヤフはPLOでなくハマスにパレスチナを支配させようとしたという。そのためネヤニヤフはカタールと協定を結び、カタールはハマスの指導部へ数億ドルを送り始めたと言われている。
イスラエル軍がシリアのイラン大使館を空爆、イスラム革命防衛隊の准将ほか、7人の軍事顧問が死亡 〜 国際社会では完全に孤立し、中東での紛争拡大が思うように進まず、焦っているイスラエル
イスラエルは国際社会で完全に孤立しており、中東での紛争の拡大が思うように進まないために焦っているようです。イスラエルにしてみれば、ガザ攻撃はもちろん、様々な挑発を行ってイランからの報復攻撃を待っているわけですが、イランが決して乗ってこないので、ついにシリアのイラン大使館まで攻撃したということでしょう。
冷静に対処するだけで、イスラエルは自滅するところまで追い詰められていると言えそうです。
国連で世界の他の国々に反対しているのは「ならず者」アメリカ
2024年3月28日
Moon of Alabama
テッド・スナイダーは次のように問うている。
「一極」という言葉は、かつて少なくとも理論上は、アメリカが単独で世界を率いていることを意味していた。今や「一極」とは、アメリカ合州国が孤立して、世界と対立していることを意味する。
ガザでの停戦を「要求」し、人質解放を「要求」し、ガザへの食糧やその他物資の妨げない供給を「要求」した最近の国連安保理決議2728にスナイダーは言及している。
スナイダーはこう書いている。
3月25日、アメリカは更に一歩踏み込み、ルールに基づく秩序で国際法に取って代わる「ならず者国家」への一歩を踏み出した。国際法は憲章制度と国連に基づいており、普遍的に適用可能だ。ルールに基づく秩序は、出所や同意や正当性が不明の不文律で構成されている。世界の大多数にとって、これら不文律は、アメリカとそのパートナーに利益をもたらす時には発動され、そうでない時には発動されないように見える。
3月25日、安保理は「ラマダン月中の即時停戦を、全当事者が尊重し、永続的で持続可能な停戦に導く」ことを要求する決議を採択した。決議案が可決できたのは、アメリカが傍観し、他の14の安保理理事国に拒否権を行使せず、棄権して可決させたからだ。
しかし、決議案可決後のアメリカ棄権についての説明で、「驚くべきことに」「我々は、この拘束力のない決議の重要な目的のいくつかを全面的に支持する」とアメリカのリンダ・トーマス・グリーンフィールド国連大使は述べたのだ。
安保理決議に拘束力がないという彼女の主張は、台本から外れた即興発言ではなかった。それは国際法ではなく、アメリカ主導のルールに基づく秩序を執行する国の戦略だ。
アルノー・ベルトランも同様の考え方をしている。
当初から、ガザが、多くの点で国際法と、アメリカの「ルールに基づく秩序」との戦いだったのは明らかだった。
国連決議をめぐるこの出来事は、このことの完璧な表現だ。国連安全保障理事会が特定行動を「要求する」決議に拘束力があることに関し、国際法学者の間で議論はない(法学者による良い説明はこちら)。実際、安保理決議は国際法であり、国連憲章第25条には「国際連合加盟国は、この憲章に従って安全保障理事会決定を受諾し、実行することに同意する」と明記されている。
ところが、今アメリカは、この「ルール」は実際は違うと主張している。「拘束力のない決議なのだから、イスラエルに対して何の影響もない」と主張している。
国連安保理が「永続的で持続可能な停戦につながる全ての当事者が尊重するラマダン月の即時停戦を要求する」場合、それに拘束力はなく、紛争当事者に「全く影響がない」という規則は一体どこに書かれているのか?
とこにもない。そこが、規則に基づく秩序の良い点だ。規則は、状況に応じて、アメリカとその取り巻き連中の権益にかなうように、その場で作り上げられるのだ。
ここで大問題は、文字通り全世界がアメリカの主張に同意しないことだ。
またしても、スナイダーだ。
全ての国連安保理決議には法的に拘束力があり、国際法の地位を有する。だからこそ、「この決議は実施されなければならない。失敗は許されない」とアントニオ・グテーレス国連事務総長が述べ、国連のファルハン・ハク副報道官が「安保理の決議は全て国際法だ。国際法と同様拘束力がある」と説明したのだ。
アメリカの主張に対し、他の国々も同じように反応した。決議案を起草した安保理理事国10カ国を代表して「全ての国連安保理決議は拘束力があり、義務的だ」とモザンビークのペドロ・コミサリオ国連大使は述べた。その上で「本日採択された決議が、全当事者により誠実に実施されることが、10カ国の希望だ」と付け加えた。
イギリスもアメリカの主張を「共有せず」、イギリス国連大使は「我々は全ての安保理決議が履行されるよう期待する。これも例外ではない。決議案の要求は極めて明確だ」と述べた。中国もアメリカの評価に賛同しなかった。安保理決議には拘束力があると中国の張軍国連大使は述べた。
フランスもアメリカの主張を否定し、国連安保理決議第2728号は絶対に拘束力があり、特にイスラエルを拘束すると主張している。
「国連安保理決議は国際法上拘束力がある。全ての関係当事者、特にこの決議を実施する義務があるイスラエルは、それを実行しなければならない。
ロシアも同様のことを言っている。
即時停戦と人道支援を利用する権利を求めるガザに関する国連安保理決議2728は、イスラエルを含む全当事者を拘束すると、火曜日、ロシア外務省は述べた。
…
「拘束力ある国連安保理決議第2728号が、ラファでのイスラエル作戦を阻止し、人質を解放し、(そして)ガザ地区の民間人への人道支援を増大させるなど、ガザにおける暴力緩和に貢献することをロシアは期待している」と述べた。
国連安全保障理事会常任理事国五カ国のうち四カ国(アメリカの主要同盟国二カ国を含む)と非常任理事国全員と国連事務総長は国連安保理決議第2728号には拘束力があると明言している。
アメリカ(と、その二流属国のいくつか) は、これに公然と異議を唱える唯一の国だ。
これは重大な影響をもたらすと、ベルトランは指摘している。
これが国際関係の一体性にとってどれほど重大かは、いくら強調してもし過ぎることはない。事実上、それを支える一連の制度や規則や規範は無意味だとアメリカは皆に言っているのだから、そうすることで、アメリカは、第2次世界大戦後、自らが大部分を構築した世界秩序を事実上破壊しているのだ。今我々は警察や政府や基本的信念が完全に堕落しているのを誰もが認識している世界体制の中にいる。これは全てを変える。
次はどうなるのか?アメリカはもう戻らないと思う。そして連中は、おそらく無意識のうちにこのことを知っていると思うが、そうでなければ、少なくとも全ての人のより良い利益のために行動するふりをするはずだ。連中がそうしていない事実は、連中が覇権回復する野心を事実上放棄したことを示している。連中は、普遍的な見せかけはやめたのだ。連中は、今や自分のために世界体制を搾取すべく、むき出しでそこにいる。
国連安全保障理事会は、大部分をアメリカが作り上げた後で、破壊しようとしている唯一の機関ではない。
2019年、世界貿易機関(WTO)は控訴裁判所を失った。
国際貿易の最高裁判所とされる世界貿易機関(WTO)上級委員会は、火曜日深夜、新たな紛争事件について判決を下す能力を失った。
その決定が世界貿易の数十億ドルに影響を与える、この委員会には判事が七人いることになっている。だが、過去三人の大統領の下で、WTOのやり方に抗議するために、後任者就任をアメリカが阻止した結果、彼らの人数が減った。
判決を下すには最低三人の判事が必要で、最後の判事三人のうち二人の任期は火曜日深夜に終了した。
これは世界の貿易体制に大きな打撃を与えるだろうと批判する人々は述べ、この状況は、拘束力ある国際ルールではなく、権力に基づく貿易体制を生み出す危険性があると主張している。
アメリカは現在、保護主義や補助金や関税を行使しているが、これらは以前合意したWTOルール下では明らかに違法だ。しかし何ら真剣な議論をすることなく、アメリカがWTO法廷を破壊するのに成功したため、もはやアメリカを罰する直接的方法はない。
しかし、貿易は国際関係の一分野に過ぎず、他のWTO加盟諸国は、裁判所がなくとも紛争を解決する方法を見つけている。
平和の問題や大量虐殺を意図して行われる戦争に関して、リスクは遙かに高くなる。
ベルトランは次のように結論づけている。
だが、ほとんどの国は、ルールや規範のない「食うか、食われるか」/「力は正義なり」世界には暮らしたくない。だから、やがて新しい制度が生まれるだろう。
最大の未知数は、こういうことだ。大規模な世界大戦を起こさずに、それが出現し得るのか、誰がその基礎建設を主導するのか、そして今回、誰にとっても公平で、誰からも尊敬されるようにするには、一体どうすれば良いのかということだ。
これら疑問に関する熟考は皆様にお任せする。
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イギリス、トラファルガー広場 ジェノサイド反対・ガザ解放集会
様々な人々の力強い演説。締めはジェレミー・コービン。
大本営広報部大政翼賛会がテレビで流すスナクや、カメロンや、ボリス・ジョンソンだけがイギリス人ではない。
植草一秀の『知られざる真実』
今朝の孫崎享氏メルマガ題名
随想⑭ 太郎と呼べば太郎は来る 花子は来ない
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