イラン・ハメネイ師への「断首作戦成功」が中国・ロシア・インドへ与えた強烈なメッセージ トランプは体制転換など必ずしも期待していない

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ハメネイ師への断首作戦成功が中国・ロシアへ与えた強烈なメッセージ
アメリカとイスラエルが共同でイランの最高指導者ハメネイ師を排除する軍事作戦を実施し、成功を収めた。この作戦は、ロシア、中国、インドに対して強いメッセージを送り、アメリカの軍事的影響力を示した。トランプ大統領はイランの現政権に対し譲歩を迫る考えで、イランの反米行動を抑制する狙いがある。今回の成功は、国際秩序を守る上でも重要な意味を持つ。

イラン・ハメネイ師への「断首作戦成功」が中国・ロシア・インドへ与えた強烈なメッセージ トランプは体制転換など必ずしも期待していない

ハメネイ師の死

アメリカとイスラエルによるイランに対する軍事作戦が展開され、イランの最高指導者であるハメネイ師をはじめとした多くのイランの要人の命が奪われた。

アメリカといえば、今年の年初に起こしたベネズエラに対する電撃的な軍事作戦で鮮やかな成功を収めた記憶がまだ新しいが、今回もこれに並ぶ鮮やかな展開を見せた。今回の作戦で、米軍に50名の死者が出たとイラン側は発表したが、米軍はこの情報を完全に否定した。米軍の犠牲者は3名だったようだ。

ホメイニ宗教革命以降のイスラム独裁国家としてのイランは、中東の安定を脅かす最大の問題だというのが、イスラエルやアメリカの基本認識である。

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それでもアメリカはこれまで、イランを攻め落とすという行動を考えてこなかった。それは地政学的に見た場合に、イランは攻め落とすのが非常に難しいという事情が絡んでいる。

イラク、クウェート、サウジアラビア、UAEなどで採掘した石油を世界に運ぶには、ペルシャ湾を通ってホルムズ海峡を通過しなければならないが、イランはペルシャ湾に面していて、ホルムズ海峡を封鎖することも容易なポジションにある。

イランを攻撃した結果として、ホルムズ海峡の封鎖という事態が生じ、世界に石油が供給されないようなことを引き起こすわけにはいかないという事情は、決して軽視できないものだろう。

普通の手段では攻め落とすことが不可能な国

また、空爆によって、主要な軍事拠点や政府庁舎などに甚大な被害をもたらしたとしても、それだけで敵を屈服させるというのは、甚だ困難である。

地上軍を投入して、相手が抵抗する意思を見せてきても、簡単に鎮圧できるという状態にならないと、体制転換はなかなかできるものではない。

そもそもイランは国土の大半を山が覆っている国で、主要都市の平均標高が1000メートルを超える高原国家だ。首都テヘランにしても標高1200メートルという、極めて高いところにある。

ペルシャ湾岸に沿ってザグロス山脈があり、カスピ海に沿ってアルボルズ山脈が走っており、海から上陸して進軍しようとしても、こうした山脈が行く手を遮る働きをする。

大軍が上陸できる場所が限られており、仮に山を越えても、広大な乾燥地帯が広がっていて、山あいの地形では地対地ミサイルやドローンを隠しやすい。山がちな地形にあっては、小規模部隊が分散してゲリラ的な動きをして残留することが容易で、上陸軍が補給線を維持するのが難しいことも見ておかなくてはならない。

国土の多くが乾燥地帯であるから、水を現地で補給することも困難であり、水すらも補給しなければならない。これは当然にも補給に大きなストレスを与える。

こうしたことは軍事的には常識であり、この常識に従えば、アメリカによるイランの体制転換を狙った軍事作戦はありえない話であった。

常識を崩した詳細な情報収集

だが、今回、アメリカはイスラエルと合同で、イラン攻撃に進んだ。「トランプはバカだから」みたいな見方をする人もいるが、先入観で物事を捉えるのはやめた方がいい。

むしろ、これまでの常識を崩せると、アメリカとイスラエルが考えたからだと見た方が正しいのではないか。

今回空爆された都市にザンジャンというところがあり、ここでは大きな爆発が起こっている。独立系アナリストとして知られるシャナカ・ペララ氏によれば、ここは核施設がある場所でもなく、イラン革命防衛隊の司令部がある場所でもなく、IAEAや米議会調査局の報告書にも一切登場しないところだという。空爆されたのは弾薬の保管庫で、イラン側が密かに用意した、ミサイルなどに搭載する爆薬類を、装填する前に保管する倉庫の1つだ。

イランの体制側からすれば、外部に知られているはずがないこの保管庫が空爆の対象になったということは、イスラエルとアメリカの徹底した諜報活動の結果として、こうした倉庫レベルまでの詳細な情報を、イスラエルとアメリカが把握していることを意味する。

イランはこうした倉庫レベルを含めて、数十年かけてイラン全土に分散型の国防施設を築いてきたが、その全貌をイスラエルとアメリカは把握している自信があり、今後も空爆を継続することによって、そのほぼ全ての戦力を無力化できると考えているのだろう。

革命防衛隊のかなり上層部にまで協力者が

今回のハメネイ師の排除においても、作戦会議のためにハメネイ師の周りに軍の首脳が集まったタイミングを見計らって空爆を実施し、一度に多くの首脳を亡き者にしたもののようだ。これまではイスラエルとアメリカの攻撃は全て夜に作戦が展開されていたので、日中に攻撃があるとは、イラン側は考えていなかったとされる。

イランの政府と軍の首脳陣の動きを押さえているのであれば、問題のある行動を取れば、いつでも居場所を特定していつでも叩くことができる。このプレッシャーを効かせることができるなら、陸上戦力を展開しなくても、イランの体制を大きく変えることができると、イスラエルとアメリカは判断したのだろう。

そもそもイスラエルとアメリカがイランの政府と軍の首脳陣の動きを押さられるようになっているのは、イラン革命防衛隊のかなり上層部にまで、イスラエルとアメリカに協力する人たちがいることを意味する。

昨年6月の空爆で、イラン内部のスパイと疑われた人たちが大量に処刑されたと伝えられていた。一見すれば、これはイスラエルやアメリカにとって大きな打撃だということになるが、これすらも実は正確な調査によって行われていたのではなかったとの疑いを持つべきだ。イスラエルやアメリカの手の込んだ工作によって、イランの体制維持を支持している側が、逆にスパイとして疑われる状況を作り出し、体制側が自分たちの味方を大量に処分する動きになっていたかもしれないのだ。

そしてそうとでも考えないと、昨年6月の空爆から1年もしない間に、イランの体制内部の最上位レベルの動きを詳細に押さえられるまで、イスラエルとアメリカのスパイ網が築かれているということは、およそ考えにくい。

トランプのコスパ重視戦略

さて、トランプ大統領は、アメリカ側が圧倒的に有利になったこの局面を利用して、イランの現政権に大きな譲歩を迫ることになるだろう。イラン国民に対して体制転覆を呼びかけてはいるが、その本音として、完全な体制転覆のみを求めていることは、恐らくないと見た方がいい。コスパを重視するトランプ大統領は、米軍のコストが大きくなることは何としてでも避けようとするだろう。ベネズエラと同様の妥協を、現政権との間で結ぶことは、十分な選択肢になるはずだ。

ただし、現政権が仮に継続するとしても、反米的な行動はもはや取ることはできず、怪しい行動があれば、いつでも空爆によって排除できることを、今回の軍事作戦は見せつけた。イラン国民に対する弾圧的な姿勢も、取れなくなるだろう。

イランがヒズボラ、ハマス、フーシ派といったテロ組織を支援することを停止するとすれば、中東の安定は格段に向上する。イランが核開発を放棄する代わりに、アメリカがイランの安全保障に責任を負うとして、イランをアメリカの同盟国の中に取り込んでしまうことも、トランプ大統領は考えているかもしれない。

このイラン情勢の急展開に、ロシアのプーチン大統領と中国共産党の習近平総書記は、内心大いにビビっているだろう。今回もまたロシアや中国の防空レーダーは、全く機能しない中で、鮮やかな斬首作戦が成功しているからだ。

トランプ大統領は3月31日に訪中し、4月1日に習近平総書記と会談することになっているが、中国側が、アメリカが望まない動きをしたら、イランと同じような作戦を中国でも展開すると示唆すれば、相当な圧力になるのは間違いないだろう。ロシアに対しても同様の圧力が生まれることになるだろう。

アメリカの求めに何かと抵抗しようとするインドでも、恐らく流れは変わってくるだろう。

国際秩序を守り、西側の価値観を守るという見地からすると、今回のイランに対する軍事作戦の成功は、大きな意味を持つものではないだろうか。日本の立場からすれば、今回の軍事作戦の成功は歓迎できるものだと私は思う。

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