財務省「自賠責特会ネコババ」解消の背景にある高市総理の「政治的な思惑」と国交省が抱えた「新たな悩みのタネ」

現代の日本
「自賠責特会ネコババ」解消と高市総理の思惑
財務省は、自動車保険料を原資とする特別会計の資金を一般会計に流用してきたが、高市総理の「積極財政」により5700億円の一括返済が実現した。これは、国民民主党との連携強化を狙った高市政権の意向が反映されたもので、今後、自動車ユーザーから保険料引き下げの要望が高まる可能性がある。国交省は新たな課題に直面している。

財務省「自賠責特会ネコババ」解消の背景にある高市総理の「政治的な思惑」と国交省が抱えた「新たな悩みのタネ」

事故被害者を救済する目的で自動車ユーザーが支払った、自動車損害賠償責任保険(自賠責)の保険料が原資の特別会計「自動車安全特別会計」(自賠責特会)の資金を一般会計に注ぎ込んだまま、「ない袖は振れない」とばかりに全額繰り戻しを拒否してきた財務省。「霞が関最強官庁」の傲慢さ故の所業とも言えるが、その鼻をへし折ったのは、「積極財政」を掲げた高市政権ならではと言える。

前編記事『戻ってこないと思っていた5700億円がなんと一括で返ってきた!「アンチ財務省」高市政権が終止符を打った「自賠責特会ネコババ」問題の深層』に続き、問題の背後に潜む高市早苗総理の真意を推し量る。

主計局はぐうの音も出ず

基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の単年度黒字化目標を事実上撤回した高市早苗首相は、自らが初めて手掛ける総合経済対策の規模を石破前政権時代よりも大幅に膨らませようと意気込んでいた。

冬場の光熱費補助や子育て世帯への給付金、物価高対策を名目にした自治体向け重点支援交付金の拡充などのメニューを揃えていく中で、自賠責特会への借金の一括返済は「マスコミからバラマキと批判されない筋のいい施策」(官邸筋)として歳出拡大の格好の材料となったようだ。

官邸筋によると、片山さつき財務相も「できるならやった方がいい」と首相に加担。あれほど一括返済に抵抗してきた主計局は今回、ぐうの音も出なかったという。

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高市氏には、自動車総連を有力な支持団体とする野党の国民民主党を味方に取り込む政治的な思惑もあった。日本維新の会と連立した高市政権は11月、無所属議員3人を与党会派に加え、衆院で過半数を確保したが、参院は少数与党のままだ。

玉木代表は満足気

憲法が定める衆議院優越の規定で予算成立のめどこそ立ったものの、税制改正など他の法案を国会で通すには、野党の協力が欠かせない。

国民民主は政策ごとに協力を取り付ける部分連合の最大のターゲットだ。玉木雄一郎代表や浜口誠政調会長(全トヨタ労連出身)ら執行部を懐柔するには「ガソリンの暫定税率廃止に加え、自動車業界が長年、切望してきた『財務省による自賠責特会のネコババ』に終止符を打つことが手っ取り早い」(与党筋)と判断したようだ。

実際、「自分たちの主張が実現した」(玉木代表周辺筋)と満足気な国民民主党は、12月の臨時国会で政府の総合経済対策の裏付けとなる25年度補正予算案に賛成した。

財務省に長年虐げられてきた国交省はさぞ溜飲を下げていることだろうと思いきや、「自賠責特会への全額繰り入れに伴い、厄介な事態も起こり得る」(自動車局幹部)との不安気な声も漏れ聞こえる。

さらに煽る玉木代表

特会への早期の全額繰り戻しを諦めていた国交省は23年度に「積立金の取り崩しが発生しており、早ければ10年以内に事故被害者支援の財源が枯渇する恐れがある」として、自賠責保険料に上乗せされる賦課金を自動車1台当たり年100円以上も引き上げた経緯がある。

ところが、想定外に一括繰り戻しが実現したことで状況は一変。今後は自動車ユーザーから賦課金の引き下げを求める声が出てくることも予想されるからだ。

実際、国民民主の玉木代表がX(旧ツイッター)に「保険料の引き下げにもつながる」と投稿するなど、ユーザーの期待を煽る動きも出ている。

当然の理屈だが、せっかく増やした財源を減らしたくないのは、霞が関官僚の性(さが)。また、朝令暮改のような賦課金の引き下げは、財務省に力負けしてきたこれまでの国交省の弱腰ぶりをクローズアップさせるおそれもある。

自動車ユーザーの納得を得られる落とし所をどう探るか。国交省にとって新たな悩みのタネとなりそうだ。

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