シリア「アサド政権崩壊」は世界戦争へのトリガーになるか?トランプが手にした“対プーチン”の有力な交渉カード

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反政府勢力の蜂起からわずか10日あまり、12月8日に崩壊したシリアのアサド政権。「今世紀最大の人道危機」とも呼ばれるシリア危機を引き起こしたアサド氏の失脚は全世界で大きく報じられましたが、この事態は国際社会にどのような影響を与えるのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケ

シリア「アサド政権崩壊」は世界戦争へのトリガーになるか?トランプが手にした“対プーチン”の有力な交渉カード

反政府勢力の蜂起からわずか10日あまり、12月8日に崩壊したシリアのアサド政権。「今世紀最大の人道危機」とも呼ばれるシリア危機を引き起こしたアサド氏の失脚は全世界で大きく報じられましたが、この事態は国際社会にどのような影響を与えるのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、周辺各国や欧米、ロシア等の思惑を読み解きつつ、予想される今後の動きを考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:世界の火薬庫・中東地域の緊張激化と大きくなる世界戦争の足音

アサド政権崩壊という衝撃。「シリアの政変」は世界戦争の扉を開けるのか

「アサド政権崩壊」

ジュネーブから帰国していきなり飛び込んできたのが、このニュースでした。

11月末から北西部イドリブから大規模攻勢をはじめ、アレッポやハマといった要衝を次々に陥落させ、一気に12月8日首都ダマスカスを制圧し、アサド大統領が職を辞してモスクワに逃れたことを受け、約半世紀続いたアサド家による独裁政治にピリオドが打たれました。

そして2011年から始まった残虐極まりないシリア内戦も終わりを迎えました。伝えられるところによりますと、2023年末の段階で51万人ほどが内戦で命を落とし、約640万人が周辺国や欧州各国に難民として国を離れるという、まれにみる悲惨な内戦でした。

今回、アサド大統領が国外に逃れ、独裁に終止符が打たれたことで、難民の帰還が始まる見込みとのことですが、アサド政権を打倒した反政府勢力がシリアに平和を取り戻すことができるかどうかは不透明です。

それは今回の作戦を主導したのが、HTS(シャーム解放機構)と呼ばれる組織で、アルカイダを源泉とするため、欧米諸国からはテロ組織認定されており、今後、このHTSがどのような役割を新しいシリアで果たしていくのかによっては、さらなる混乱材料になるかもしれません。

シリアを離れる際、アサド氏は政権のジャラリ首相に「円滑かつ平和的な政権移譲を行うように」との指示をし、ジャラリ首相はこのHTSのリーダーであるジャウラニ氏とも連絡を取って、今後のことについて協議しているそうですが、その先行きは不透明です。

かつてのイラクのように、フセイン政権を打倒した際、明確な後継者をイメージしていなかったため、群雄割拠の状態が起き、もともとあった部族間・宗派間の争いが激化して、互いに血で血を洗う内戦に発展した結果、ISの付け入る隙を与えたという恐ろしい前例が繰り返される可能性は否定できないのではないかと感じています。

「アサド政権を打倒する」という旗印の下、様々な反政府勢力が結集しての攻撃ですので、その目的達成後、誰がどのような未来を描いているかによっては、新たな内戦を呼ぶことになりかねません。

特に今回、シリアの反政府勢力を支援していたのが、アサド政権と対立していた隣国のトルコであると思われ、今回、アサド大統領を追い出した後のシリアの国づくりにいろいろな形で関与しようとしてくると思われます。

640万人に上るシリア難民のうち、300万人以上を受け入れ、シリアから逃れてきた人たちを国境沿いに難民キャンプを作って収容していましたが、早速、シリアへの帰還を(支援までつけて)促し始め、トルコ政府の高官によると「基本、シリアの今後はシリア人が決めるべき」と言いつつも、「必要であれば、トルコ政府は全面的にシリアの復興と治安の回復に貢献する用意がある」と介入・関与の方法を探っているようにも聞こえます。

トランプ次期大統領がシリアから距離を置く2つの理由

アメリカのバイデン政権は「アサド後のいかなる勢力とも対話の用意があり、平和なシリア作りのために力を注ぐ」として、こちらも国づくりへの関与を明言しているものの、かつてイラクやアフガニスタンで国づくりに失敗し、結果、内戦を再開させてしまったことに鑑みると、あまり期待はできないかと思われます。

それに加えて今回の事態を受けて、トランプ次期大統領は「アメリカはシリアに関わるべきではない」と発言し、距離を置く姿勢を見せています(とはいえ、前政権時にトマホークミサイルを60数発シリアに撃ち込んだ大統領でもありますが、それは中国を怯えさせただけで、結果、効果が見られなかったことを、どうもトランプ次期大統領自身も気づいているようです)。

トランプ次期大統領がシリアから距離を置こうとしているのには、いくつか理由がありそうです。

一つ目は前政権時から繰り返していた“アメリカの非介入主義”の徹底です。

実際にアフガニスタンやイラクから米軍を完全撤退させたのは、後任のバイデン政権でしたが、トランプ氏は前政権時には「アメリカ人の血を他国の問題のために流すのは許さない」と任期中、新たな国際問題への軍事的な介入は控えましたし、その背景にはAmerica Firstで、アメリカ国内の問題、特に経済問題に力を注ぐという方針がありました。

そのターゲットとして利用されたのが中国やメキシコでしたが、どちらとも軍事的な対峙は望まないとのクリアな方針を貫いて、経済戦争を仕掛けていました。

今回、非介入の方針を継続するつもりであれば、アメリカをまた中東の泥沼に引き戻しそうなシリア情勢には直接的な関与はしないということになります。

二つ目は、どう転ぶかまだ分かりませんが、イスラエルへの配慮が考えられます。

アサド大統領がロシアに逃亡し、政権が崩壊するや否や、イスラエルはダマスカスに空爆を行い、続いてシリアとイスラエルの1970年代以降の係争地で、イスラエルが実効支配してきたゴラン高原のコントロールを確実なものにすべく、1万1,000人規模の地上部隊を送って、その支配を確実なものにしました。

それについてトランプ次期政権が支持するかどうかはまだ不透明なのですが、「地域のことは地域で解決すればいい」という方針を示すのであれば、イスラエルの責任でイスラエルがしたいようにさせるのではないかと考えます。

その場合、イスラエルのシリアに対する影響力は高まりますし、ヒズボラの弱体化に伴って、隣国レバノンへの影響力も高まることで、ガザの問題を何らかの形で終わらせることが出来れば、一応、物理的に近接する“敵国”を排除し、イスラエルの“懸念”をしばらくの間は払しょくできると踏んでいるのだとしたら、アメリカが望む中東地域からの脱却を可能にする状況が作れるという計算もあるのではないかと感じています。

ただ、イスラエル軍によるゴラン高原への攻撃と侵攻は、アラブ諸国の激しい反発をすでに引き起こしており、スンニ派諸国の雄であるサウジアラビア王国は「シリアが安全保障を回復する機会をイスラエルは阻害し、かつ地域の平和を脅かす蛮行である」と激しく糾弾し、それにUAEなどの国々が追従する形をとっているため、これがもし単なる外交的な圧力に留まらない対峙に発展した場合、今後、一気に中東地域の軍事的な緊張が高まる恐れが懸念されます。

アサド政権崩壊で「損」を被りそうな欧州各国

今回のシリアでの出来事は、

【ロシアがウクライナにてこずっていることでシリア防衛に手が回らなかったこと】

【シリアのアサド政権と盟友関係にあったヒズボラも、イスラエルとの戦争で弱体化し、シリアに力を割く余裕がなかったこと】

【シリアのアサド政権の後ろ盾を自認してきたイランも、イスラエルとの高まる軍事的緊張に直面して、手が出せないこと】

といったように様々な要因が重なり、そこに地域のバランサーを自任するトルコが付け込んで、反政府勢力を支援して、アサド政権打倒に動いたことがあります。

ロシアはメンツをつぶされ、このままでは国際情勢における影響力拡大のために進めてきたアフリカへの進出とその足掛かりを失うことにつながるため、何らかの手を、シリアにではなく、まずウクライナに対して打ってくることが予想されます。

トルコは、すでに深くシリアに入り、アサド後の体制を作るべく、暗躍していますが、そのトルコがどの組織の誰をサポートするのかは、今後を占ううえで非常に大きなカギになるものと思われます。

そしてイスラエルは、あわよくばシリアを取ってしまい、アラブ諸国に対する物理的な壁・緩衝地帯として獲得したいと考えて、今後、シリア奥深くに入り込んでくる可能性は否定できません。

またイスラエルによるシリアおよびヒズボラ、レバノンへの攻勢は、ガザ問題の当事者であるハマスにも強いメッセージを送ることになり、今後、国際社会からのプレッシャーを受けつつも、ガザにおける停戦、人質の解放、そしてガザ地区の今後の統治などの重要問題において、少しでも有利な条件を引き出すための材料に使うかもしれません。もちろん、「イスラエルに死を」と常に叫ぶイラン革命政府への強い牽制にもなるでしょう。

特に「トランプ政権誕生で、イスラエルに追い風が吹いている」と信じ切っているネタニエフ首相にとっては、リスクは承知の上で、一気呵成にイスラエルの国家安全保障と安心の確保のためにシリアをレバノン、そしてガザ、さらにはパレスチナを押さえにかかる気配も感じられます。

今回のことで様々な意味で損を被りそうなのが、欧州各国です。シリア情勢については、内戦時に非常に大規模なシリア難民受け入れを行い、それが、今のウクライナ難民のケースと同様、各国内での亀裂と衝突を引き起こしたという大きなコストを払ったにも関わらず、恐らく今回のシリア絡みの中東における勢力図再編の輪の中にまぜてもらえない可能性が高まっています。

それは各国内における政治・経済的なスランプと、極右勢力の台頭により、他国への介入を控え、今は自国民・EUの経済的な回復に力を注ぐべきという民意が高まり、対外支援に二の足を踏みつつあります。

フランスは国内の政治的な混乱と経済のスランプ、ドイツは連立政権の事実上の崩壊を受けて、ショルツ首相の発言力がかなり低下している不安定な政治状況、英国では、アメリカへの配慮と追従の傾向が残るものの、スターマー政権は、前のスナク政権に比べて、外交面でのパフォーマンスを際立たせようとはしていない傾向などがあり、今はウクライナに対しても、中東に対しても積極的にパイを奪いに来ようとはしていないように思います。

イタリアのメローニ首相については、イスラエル軍が国連安保理決議に基づき平和維持活動をしているレバノンのUNIFIL(注:イタリアも要員を派遣)に攻撃を仕掛けたことに対してイスラエルへの批判を強めていますが、今のところ、イタリアが積極的にレバノンやシリアに関与しようとしているとは思えません。

ただし、かつてのように、中東地域の混乱、とくに地中海沿岸地域の混乱は即時に南欧、つまりイタリアなどへの難民の流入に繋がる恐れがあるため、かなり注意は払っていると思いますが、あくまでも受け身の姿勢であり、積極的に予防的な対策を、中東地域において取ろうとはしないと考えられます。

アサド政権崩壊がトランプに与えた対プーチンの有力な交渉カード

積極的な関与と口出しを欧州にさせない理由が、欧州自身、直接的な安全保障上の懸念であるウクライナ情勢とロシアとの緊張の高まりにリソースを割いており、今、イスラエルを核とした中東情勢の不安定化に、重大な懸念は示しても、実際には何ら積極的な関与ができない現状です。

特にウクライナ情勢を巡って、すでにEU内での意見の統一ができない状況がしばらく続いており、中東欧諸国やバルト三国、そして北欧諸国は、EUの古参のメンバー(すでに挙げた西欧諸国)が国内政治の不振で動きが取りづらいことに我慢できず、EUとは袂を分かって、独自の防衛政策と対ロ・対ウクライナ政策を実施しようとしています。

ウクライナ情勢においての主役はすでにポーランド、バルト三国、そしてスウェーデンに移っていると言われていますが、これらの国々もロシア絡みの自国の安全保障への対応が精いっぱいで、気にはしていても(特にスウェーデンは人道支援大国の一つですので)、イスラエルの所業に対峙し、かつガザ地域への人道支援を強行する人的・経済的・軍事的な余裕がないのが実情です。

つまり、現時点では、いろいろな懸念を表明しても、EU諸国とNATOはイスラエル絡みの問題に何ら有効な介入が出来ない状況です。もちろん、アメリカ合衆国という例外を除けば(とはいえ、バイデン大統領の任期もあと1か月ほどですので、効果的な介入は期待薄ですが)。

そうなるとイスラエルのネタニエフ首相は、期せずしてフリーハンドを得たように思われますが、それはトランプ次期大統領がどのようにイスラエルの所業を認識し、どのような対応を取るかにかかっており、100%安心とは言えません。

トランプ次期大統領周辺の外交・安全保障担当の専門家たちによると、トランプ次期大統領は本気で中東からの脱却を実行しようとしており、先述の通り、シリア情勢についても、もしかしたら、良くも悪くもネタニエフ首相の期待に反して、イスラエル絡みの問題の“解決”にも積極的に関わらない可能性が高いとのことでした。

ただここの“積極的に関わらない”の意味するところは謎です。

トランプ次期大統領は、選挙戦中、「自分が大統領に就任したら24時間以内に戦争を終結させる」という発言を繰り返していますが、その戦争は、よく挙げられるウクライナ戦争のみならず、バイデン政権がてこずっている中東の情勢悪化(ガザ情勢、ヒズボラとイスラエルの武力紛争など)も対象としているとのことですが、それは「イスラエルの好き放題にさせて、その上で中東の安定の責任を負わせる」という丸投げ方式なのか、それとも就任してすぐに、ネタニエフ首相を含むすべての当事者に「自分がアメリカ合衆国大統領になったからには、戦争をすることは許さない。今すぐ戦争を止めるか、それともそれなりの代償を払うか。どちらかを今、俺の前で選べ」という形で即時“解決”を迫る形なのか。

申し訳ないのですが、私にはこれくらいしか思い浮かびませんし、仮にこの選択肢が正しいとしても、どちらが選択されるのかは分かりませんが、どちらもあり得るなあと感じて、一応の準備はしています。

ただ、一つはっきりしているのは、今回のシリアのアサド政権の崩壊と、ロシア政府によるあからさまなアサド前大統領への支援は、トランプ次期大統領に対プーチン大統領の有力な交渉カードを与えたのではないかということです。

反政府勢力にとって「明らかな敵」であるロシア軍

今回の反政府勢力によるダマスカス制圧と、アサド政権打倒によりはっきりするのは、反政府勢力にとって、これまでアサド政権側に立って、自分たちに対して爆弾の雨を降らせ、ずっとイドリブに閉じ込めたロシアとロシア軍は明らかな敵であることは間違いありません。

ゆえにロシア軍もアサド政権から借り上げていた港から艦隊を沖合に脱出させ、空軍基地からもロシア軍機を脱出させて、非常事態に備える決定を下しています。

HTSを含め反アサド勢力にとって、ロシアと今、手を結ぶ利益はないため、直接的な攻撃まではしないにせよ、ロシアの影響力をシリアから排除する動きに出るのではないかと考えます。

ちなみにロシア政府は、シリアの拠点をアフリカ大陸へのアクセスポイントとしており、ロシアが再びグローバル・パワーに回帰するためには欠かせないものと認識しています。

それを認識して、もしトランプ次期大統領がプーチン大統領に対して、ウクライナでの戦争処理への協力と、ロシアがイランなどへの支援を行わないことを条件に、シリアでの権益保持に口を挟まないとか、黙認するといったようなディールを持ちかけるというシナリオが考えられますが、これは私のただの妄想でしょうか?

それをロシア側も認識して、ちょうどこのコラムを書いている時に、カタール・ドーハでシリアに影響力を行使できる国々―トルコ、ロシア、イランの外相たちが集ってシリアへの対応を協議しているようです。

その内容は流れてきませんが、アメリカ政府による介入への対処法、ポスト・アサドの政権作りに向けた意見交換と支援のオプション、それぞれの取り分の協議などが行われているのではないかと思われます。

それに加え、中東における緊張の高まりへの対応を包括的に協議するために、いかにイスラエルと話しをまとめるか、ということにも触れているのではないかと想像します。

イランがここにいるので表立ってイランとイスラエルの外相が会うということはないと思われますし、トルコのエルドアン大統領がネタニエフ首相をナチス扱いした舌禍もあり、イスラエルとトルコの外相も表立っては会えないと思いますが、ロシアが間に入り、イスラエルにも影響力を及ぼして、水面下で何らかの、アメリカ抜きの、ディールメイキングをするかもしれません。

もしかしたら、ちょうどサリバン大統領補佐官(安全保障担当)が中東を訪問するタイミングと重なりますので、アメリカも交えて、密談が開催されるのかもしれないと、勘繰りたくなる見事なタイミングでもあります。

ちなみに今、イスラエルも含め、いろいろな情報交換が嵐のように行われていますが、イスラエルも「アサド政権の崩壊はチャンスであると同時に、重大な危険もはらんでおり、慎重かつdecisiveな対応が必要だ」との認識を示して警戒し、そしてシリアの“安定化”に寄与できそうな国や勢力との協議を急いでいるようです。

ただ“重大な危険を認識しているが故のdecisiveな対応”こそが、恐らく空白を突いたゴラン高原への軍事侵攻であり、反政府勢力が集まるダマスカスへの空爆であるのではないかと、いろいろな情報を踏まえて、感じています。

的中しかねない「2025年は波乱の一年になる」という予測

イスラエルがガザに侵攻し、ヒズボラ掃討のためにレバノンにも攻撃を加え、そして今、シリアにも侵攻しようとしているのは、イスラエル人の心の奥底にこびりついて離れない“生存へのあくなき探求とそれを脅かすものへの著しい恐怖感”だと考えます。

ただイスラエルのというよりは、ネタニエフ首相の、向こう見ずな思い切った賭けは、確実に中東地域のデリケートな“安定”を崩し、静観を保つ予定だったサウジアラビア王国などのアラブ諸国の大半に行動を取らざるを得ない状況を作り出し、イランとレバノンには対イスラエル報復の熱量を上げさせることに繋がってきています。

今、表向きにはイスラエルとヒズボラ、そしてレバノンの停戦協定(60日間)はまだ継続中ですが、度重なる攻撃の応酬と、レバノン政府の面子を傷つけたとの認識が高まるにつれ、その効力は風前の灯火になっているように見えてきます。

アサド政権を崩壊させた反アサド・反体制派の面々が、今後シリアをどのような方向に導き、そしてイスラエルを含む周辺国とどう付き合っていくのかによっては、イスラエル・パレスチナ・レバノン・シリアを核とした大戦争が勃発し、それに隣国トルコも巻き込まれ、その火はアラブ全体に広がるのと同時に、イランの攻撃を誘発し、そしてロシアとウクライナの戦争にも飛び火したり、ロシアとトルコがそれなりにまだ関わるナゴルノカラバフ問題(アルメニアとアゼルバイジャン)の燻る炎を再度大きく燃やしたりすることになる危険性が一気に高まってきます。

シリアにおけるアサド政権の崩壊は、これまでギリギリのところで踏みとどまってきた世界的な戦争への門を開けてしまうきっかけになりそうな予感です。

いろいろな場で「2025年は波乱の一年になる」という予測を耳にするようになりましたが、本当にとんでもない状況が私たちを覆うことになるかもしれません。

以上、今週の国際情勢の裏側のコラムでした。

(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2024年12月13日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録ください)

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