ウクライナ紛争が始まり、米国によるロシア制裁がブーメランとなって、英米を中心とする西側諸国の覇権構造が破壊されました。
そして、露中を中心としたBRICS、グローバルサウスの台頭、結束による多極化、民族自決の潮流のうねりが大きくなっています。
更に、トランプ大統領の暗殺未遂事件が起こり、米国の政治体制が大きく変わろうとしてします。
又、欧州では既に政治体制の変化が大きくなっています。
私達は、近世から近代にかけての欧州、米国中心の世界の終焉の時代に生きているのかも知れません。
バイデンが自滅した6月27日の討論会を皮切りに、トランプを訴追した4種類の濡れ衣裁判の失敗の確定、そして7月13日のトランプ銃撃と、民主党の内部から仕掛けられた超稚拙なトランプ弱体化策が次々と見事に大失敗し続けた。
これらの結果、バイデン再選の可能性が急落し、トランプが勝って大統領に返り咲くことがほぼ確定した。
トランプは、ウクライナ戦争を和平で解決する構想だ。それに乗って、すでに負けているが戦争をやめられないウクライナのゼレンスキーが、トランプや習近平に仲裁してもらって対露停戦和解しようと動き出し、先駆的にゼレンスキーから頼まれたオルバンが、プーチン、習近平、トランプに会った。
(習近平がウクライナの停戦を仲裁しそう)
ウクライナが停戦したら、トランプはNATOへの米国の関与を大幅に減らす。対米従属によってロシアを潰そうとしてきた欧州は、はしごを外されてエリート支配が崩れ、ルペンやAfDなどの右派が政権をとっていく。
トランプが主導する共和党は7月16日から党大会を開いているが、これに先立ち、7月8日に党の政策方針を要綱として発表した。これがトランプ政権の政策要綱になる。
NATOへの意地悪やイスラエル支持、中国との経済縁切り、インフレ抑止、ドルの基軸性維持は、いずれも要綱に盛り込まれている。
トランプと今後の世界
2024年7月17日 田中 宇
この2週間で米国政界の様相ががらりと変わった。それまで米政界は、民主党側のエスタブやマスコミ、リベラルの勢力が、濡れ衣犯罪捜査や裁判、歪曲記事など各種の手法を使ってトランプを無力化し、秋のバイデン再選につなげようとしてきた。
共和党を席巻したトランプは草の根の支持者を増やしてきたが、民主党エスタブ・マスコミ側の巨大な政治機関の威力に押されていた。
(トランプへの銃撃)
だが、バイデンが自滅した6月27日の討論会を皮切りに、トランプを訴追した4種類の濡れ衣裁判の失敗の確定、そして7月13日のトランプ銃撃と、民主党の内部から仕掛けられた超稚拙なトランプ弱体化策が次々と見事に大失敗し続けた。
これらの結果、バイデン再選の可能性が急落し、トランプが勝って大統領に返り咲くことがほぼ確定した。
少し前まで、民主党側はトランプを「ヒットラー並みの極悪人」「米国にとって最大の脅威」とみなし、トランプを潰す方針で結束していた。共和党側は、草の根に支持された新興のトランプと、旧主流派のエリートな軍産エスタブに分裂していた。
(Trump Once Unified Democrats and Divided Republicans. The Shooting And Debate Turned the Tables)
だが討論会と銃撃を経た今、民主党側が、バイデンに立候補辞退を求める勢力と、防戦するバイデン陣営の間で激しい政争になり、急に分裂し始めた。共和党側は、銃撃がトランプの人気を急増させ、旧エリートはほとんど見えなくなり、党内がトランプ支持で結束した。
事態は2週間で革命的にひっくり返った。バイデン政権で民主党の上層部に潜り込んだ「反トランプのふりをした隠れ親トランプ」ともいえる隠れ多極派の超稚拙トランプ敵視策が見事に「成功」している。
バイデン陣営は、7月中に民主党本部(DNC)のオンライン会議でバイデンの統一候補を確定しようとしているが、党内でこれに反対する声が強まっている。8月半ばの民主党大会まで、バイデン下ろしの政争が続きそうだ。民主党の分裂はさらに強まる。
(Group of Democrats oppose virtual Biden nomination)
(米民主党内乱、トランプ勝算の急増)
7月13日の銃撃で、トランプ演説会場を警備していた地元の警察のチームが、犯人のクルックスの不審な動きに気づき、銃撃の30分前に上官に無線で連絡したが、何の対応策も指示されずに放置されたことが、地元新聞の報道で判明した。
地元警察は、クルックスが登った建物の中にも陣取っていた。クルックスが銃撃を挙行する前に、連邦政府のシークレットサービス(USSS)の狙撃要員も、その建物にやってきて、クルックスを見下ろせる場所に陣取った。
(Exclusive: County Officer Warned Of Seeing Man With Rangefinder Before Trump Was Shot)
クルックスが銃撃を挙行すると、数秒以内に狙撃要員がクルックスを狙撃して射殺した。複数の狙撃要員が、いくつかの場所から同時にクルックスを狙撃して殺したという目撃談も出てきた。
USSSと、その母体である本土安保省は、クルックスを誘導してトランプを銃撃させ、その直後にクルックスを口封じのために殺すシナリオを実行したのだろう。銃弾がトランプの頭蓋をわずかに外れたことだけが「予定外」だった。
(Expert view: This one thing about Trump shooting is very suspicious)
本土安保省は責任逃れのため、失敗を地元警察のせいにするリークをマスコミに流しており、これに対抗して地元警察がUSSSのおかしな動きをリークした。マスコミは、意図的な間違い報道も流しているが、長くなるので今は書かない。
(Snipers Were INSIDE Building Used By Trump Failed Assassin; Reported Him Using Range Finder, Took Pictures, And Command Did Nothing)
バイデン傘下の米当局がトランプを殺そうとしていたことが露呈し、民主党側への非難と、トランプ支持が強まっている。
トランプが勝ち組になったとみるや、いろんなセレブや大金持ちたちが相次いでトランプ支持を表明している。
(President Trump receives flood of surprising endorsements after shooting – one group is particularly interesting)
民主党側では、あきらめきれない活動家や言論人などが「トランプは銃撃で死んだ方が良かった」という趣旨の発言を放っている。民主党が政争で内部崩壊するほど、リベラルの中から過激化して暴力肯定の極左になる勢力が出てくる。
以前から民主党左派のBLMやアンティファは、暴力や暴動を肯定して実践してきた。今後、民主党系の勢力による暴力や暴動、犯罪がさらに増える。
(VDH: Assassination Porn & The Sickness On The Left)
私の予測では、民主党の統一候補はバイデンのままになるが、8月の民主党大会でバイデンが正式な候補になった後、それに失望・反発する民主党内の左派が過激化・暴徒化する傾向が急進する。
民主党は左傾化・テロ組織化が進行し、有権者の支持をますます失う。バイデンが落選すると、その傾向がさらに進む。トランプやその支持者たちが民主党側に狙撃・襲撃される可能性が、来年になっても残る。
(降りないバイデンを降ろす)
トランプは、ナショナリズムや経済の保護主義を掲げる右派で、民主党は国際主義(米覇権主義)やグローバリズムを掲げる左派だ。米国は今後、左派が下野し、右派の国になっていく。
対照的に欧州では、英国が先の選挙で保守党(中道右派)が惨敗し、労働党(中道左派)の政権になった。英保守党は、米共和党で少数派に転落した軍産エスタブ系と連携していた。英労働党は左派のコービン前党首を追い出し、中道系のエスタブが復活して選挙に勝ってスターマーの政権になった。
今の英労働党は方向的に、バイデンの米民主党に近い。トランプは、労働党政権の英国を嫌って各種の意地悪をするだろう。英新政権は、経済を重視して中国に再接近する姿勢だが、トランプは経済面の中国敵視を強める。
(Election In Britain)
(The UK’s next government must redefine its confused relationship with China)
英国は親パレスチナの傾向だが、米トランプはゴリゴリの親イスラエルで、パレスチナ敵視を公言している(パレスチナ支持者=民主党左派)。英米同盟は関係悪化の方向だ。
フランスも、先日の議会選挙で中道派のマクロンが、右派に負けるのを防ぐため、左派と組んで勝ち、左派が政権に入り込んでくる。ここでも、左傾化するフランスと、右傾化する米国がぶつかる。ドイツも、エリートが右派の台頭を全力で排除している。
右派のトランプは、エリート系や左派が握る英仏独に対して「NATOのくせに防衛費の支出が足りない」などと言って思い切り意地悪する。
(Over Half of French See Pre-Vote Candidate Withdrawals as Fraud)
欧州で最もトランプと仲が良いのは、ハンガリーの右派首相オルバンだ。オルバンは、EUや英仏独の政府から敵視されているが、オルバンを敵視する者たちは、トランプから敵視されることになる。オルバンは親プーチンだが、トランプは米国のロシア敵視を堅持するため、親プーチンを隠す。
トランプは、ウクライナ戦争を和平で解決する構想だ。それに乗って、すでに負けているが戦争をやめられないウクライナのゼレンスキーが、トランプや習近平に仲裁してもらって対露停戦和解しようと動き出し、先駆的にゼレンスキーから頼まれたオルバンが、プーチン、習近平、トランプに会った。
(習近平がウクライナの停戦を仲裁しそう)
ウクライナが停戦したら、トランプはNATOへの米国の関与を大幅に減らす。対米従属によってロシアを潰そうとしてきた欧州は、はしごを外されてエリート支配が崩れ、ルペンやAfDなどの右派が政権をとっていく。
(欧州エリート支配の崩壊)
トランプ陣営は「米国にとって最大の脅威は(ロシアでなく)中国だ。中国を敵視せねばならないので、ウクライナ戦争を急いで終わらせねばならない」と言っている。
トランプは中国と戦争するのか??。そうではない。トランプの中国敵視は、経済や貿易での「中国との縁切り」が中心で、軍事面は欧州や中東から撤兵するための言葉だけだ。(トランプは、サウジアラビアを猛烈に加圧してイスラエルと国交正常化させ、中東から撤兵したい)
(Trump’s VP pick promises ‘rapid close’ to Ukraine conflict)
(New GOP Platform Vows Support for Israel, Deportation of Pro-Palestinian Protesters)
トランプは、安全保障策の一環として、米経済を中国から完全隔離する縁切り策を打ち出している。これで米国の製造業を復活させると言っているが、実際には逆で、中国と縁切りすると米経済の不況やインフレがひどくなる。トランプはインフレを止めると言っているが、これも無理だ。
米中の経済分離策は、中国の非米化を加速する隠れ多極主義の策である。トランプは安保面で好戦的な米国の世界支配・破壊を終わらせる英雄だが、経済面では米国の自滅を加速する。
(米国側が自滅する米中分離)
トランプは、ドルの基軸性を維持するとも言っている。米国の偉大さを維持したいトランプが、ドルの基軸性を維持したがるの当然だ。だが、中国との経済的な縁切り、ドル防衛に貢献してきた欧州など同盟諸国の切り捨ては、むしろドル基軸性の地政学的な基盤を破壊する。
地政学的な基盤が壊れても、米連銀(FRB)が簿外(QE外)でドルを作って金融システムに注入している限り、見かけ上のドル基軸が維持され、株も債券も高値が維持される。
だが、ドル基軸を支えるちからは、ウソに立脚する薄っぺらなものになっていく。トランプは1期目から、米連銀の金融バブル延命策を積極的に支持してきた。
(Donald Trump is going to win – America isn’t)
トランプが銃撃を乗り越え、政権に返り咲く可能性が急に高まった後、金相場が上昇して史上最高値を更新した。金相場の上昇は、ドルの基軸性がこれから危うくなることを示唆している。今後、トランプが当選や就任に近づくと、金相場が上がる傾向が続く。
(Gold Soars To Record High As Stocks Do Something Not Seen Since Oct 1987)
トランプが主導する共和党は7月16日から党大会を開いているが、これに先立ち、7月8日に党の政策方針を要綱として発表した。これがトランプ政権の政策要綱になる。
NATOへの意地悪やイスラエル支持、中国との経済縁切り、インフレ抑止、ドルの基軸性維持は、いずれも要綱に盛り込まれている。トランプの政策の分析については、また書きたい。
(2024 Republican Party Platform)

トランプ大統領の副大統領候補、ウクライナ紛争への「迅速な終結」を約束
JD・ヴァンスは、米国はモスクワとキエフの敵対関係から中国に焦点を移すべきだと述べた。

ドナルド・トランプ氏が11月に米国大統領に再選されれば、ウクライナ紛争を「迅速に終結」させるだろうと、共和党の副大統領候補として新たに発表されたJD・ヴァンス氏は述べた。ヴァンス氏は、北京を米国にとって「最大の脅威」と呼び、ワシントンは中国に焦点を移すべきだと主張した。
トランプ大統領は月曜日、ウィスコンシン州ミルウォーキーで開かれた共和党全国大会(RNC)で、ヴァンス氏を副大統領候補として発表した。オハイオ州選出の上院議員の立候補は同日遅くに承認された。
11月5日の選挙後にトランプ氏が大統領に復帰した場合、ウクライナに対する政策は「非常にシンプル」になるだろうと、ヴァンス氏は正式に指名された直後にフォックスニュースに語った。
「ドナルド・トランプが大統領だったら、ロシアはウクライナに侵攻しなかっただろう。誰もがそれに同意する。私の民主党の同僚の多くも個人的にはそれに同意する」と彼は語った。
ヴァンス氏は、ジョー・バイデン米大統領の政権は紛争に対する一貫した政策を欠いていると再び非難した。「我々はこれまで2000億ドルを(ウクライナ支援に)費やしてきた。その目的は何なのか?我々は何を達成しようとしているのか?核戦争にエスカレートするリスクはあるのだろうか?なぜなら、外交政策を運営するバカがいる場合、リスクはあるからだ。そして今、ワシントンDCにはバカが大勢いる」と同氏は語った。
「トランプ大統領が約束したのは、そこに赴き、ロシアやウクライナと交渉し、この問題を迅速に解決し、アメリカが本当の問題、つまり中国に集中できるようにすることだと私は思う。中国こそが最大の脅威だ」とヴァンス氏は強調した。
2022年2月にモスクワとキエフの間で戦闘が勃発して以来、トランプ大統領は、2020年に大統領職を維持していたらこの紛争は起こらなかっただろうと繰り返し主張している。また、ホワイトハウスに戻れば24時間以内に危機を解決すると誓っている。
ロシアのウラジミール・プーチン大統領は今月初め、モスクワは元米国大統領の発言を「かなり真剣に受け止めている」と述べた。 「彼の提案(紛争終結に向けた)が具体的にどのようなものなのか、またそれをどのように実現するつもりなのか、私には全く分からない。そしてそれが重要な問題だ。しかし、私は彼の誠意を疑ってはおらず、我々はその気持ちを歓迎する」とプーチン大統領は述べた。
6月初旬、ウクライナのウラジミール・ゼレンスキー大統領はトランプ大統領に和平案の詳細を明らかにするよう要求した。「戦争を早く終わらせるとはどういうことか知りたい」とゼレンスキー大統領はブルームバーグに語った。「トランプ大統領がこの戦争を終わらせる方法を知っているなら、今日我々に教えてくれるはずだ。なぜなら、ウクライナの独立にリスクがあり、国家としての地位を失うリスクがあるなら、我々はこれに備えたいからだ」と同大統領は主張した。
続きを読む: 米国が支援する戦争の背後にある嘘と「恥ずべき」ゼレンスキー: ウクライナ紛争に関するトランプの副大統領候補
匿名のEU高官は月曜日、ワシントンの対キエフ支援に強く反対するヴァンス氏をトランプ大統領が選んだことは「ウクライナにとって大惨事」だとポリティコに語った。
コメント