ロシアによる資金洗浄の闇…世界に広がる暗号通貨網の裏を暴く

現代のロシア
ロシアによる資金洗浄の闇…世界に広がる暗号通貨網の裏を暴く
欧米諸国や日本などは、ロシアによるウクライナへの全面侵攻後、対ロ制裁として、ロシアがドル決済をできないようにするために、SWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunications) からロシアの金融機関を切り離そうとしてきた。だが、ロシアは、いわゆる「暗号通貨」を使った匿名とおぼしき決済によって、対ロ制裁を回避しようとしている。今回は、ロシアのかかわる資金洗浄の闇について解説したい。

ロシアによる資金洗浄の闇…世界に広がる暗号通貨網の裏を暴く

欧米諸国や日本などは、ロシアによるウクライナへの全面侵攻後、対ロ制裁として、ロシアがドル決済をできないようにするために、SWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunications) からロシアの金融機関を切り離そうとしてきた。だが、ロシアは、いわゆる「暗号通貨」を使った匿名とおぼしき決済によって、対ロ制裁を回避しようとしている。今回は、ロシアのかかわる資金洗浄の闇について解説したい。

発端はエストニアにあり

事の発端はエストニアではじまった。いわくつき暗号通貨であるにもかかわらず、デジタル先進国家をめざすエストニア政府は暗号通貨世界のパイオニアをめざして、2017年に暗号起業家に最大30日でライセンスを付与する欧州初の国となる。

Ekspressによる広範なデータ分析の結果、2017年末から2022年末の間に、1644社がエストニアで暗号通貨の事業許可を取得した。国外からでも簡単に暗号通貨にかかわる事業免許が入手できるという手軽さもあって、いわくつきの取引を行いたいロシア人、ウクライナ人、ラトビア人が多くの免許を取得した。

昨年10月の「エストニアのGarantex Europeの元取締役らに対する裁判が始まる」という記事によると、2019年になって、モスクワ在住の3人のロシア国民、セルゲイ・メンデレーエフ、スタニスラフ・ドゥルガレフ、アレクサンドル・ヌティフォ・シャオ(後述するように、彼は後にアレクサンドル・ミラ・セルダと改名)が、Garantex Europe OÜという商業企業を買収する。

その後、同社はエストニアのマネーロンダリング対策局に暗号通貨の事業許可を申請した。同社は2019年後半、タリンに登録されていたが、Garantexの業務の大部分は、フェデレーション・タワーを含むモスクワとロシアのサンクトペテルブルクで行われていた。下の写真からわかるように、その存在は派手で目立っていた。

この記事の全ての写真を見る(全11枚)

(出所)https://moscow-city.guide/en/towers/mfk-bashnya-federatsiya/

Garantexは、ロシアのダークネット上で運営されているインターネットショップ「Hydra」での決済機能などの役割を担っていた。ダークネットとは、インターネットベースのネットワークで、個人が特別なソフトウェアを使用してアクセスすることで、個人の身元や関連するインターネット活動を不明瞭にするように設計されている。ダークネット上に存在するマーケットプレイスでは、違法サービスや商品の支払いとして、ほぼ独占的に暗号通貨が利用されている。

Hydraは2015年に立ち上げられ、ロシアでもっとも著名なダークネット市場であった。この違法サービスには、たとえば、ランサムウェア・アズ・ア・サービス(RaaS)も含まれていた。これは、ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)の開発者がランサムウェアのコードやマルウェアを「アフィリエイト」と呼ばれる他のハッカーに販売し、そのハッカーがそのコードを使って独自のランサムウェア攻撃を行うというサイバー犯罪のビジネスモデルだ。

Hydraが提供するものには、RaaSのほかにも、ハッキングやソフトウェア、盗まれた個人情報、偽造通貨、盗まれた暗号通貨、違法薬物などがある。販売後、Hydraの商品やサービスを販売・提供する企業や個人は物理的な場所に匿名で違法な商品を投下し、時には目立たない場所に埋めたり隠したりして配布してきた。GarantexはHydraのバイヤーによる支払いなどで多くの場合暗号通貨を使用し、決済機能などを果たしてきた。

その結果、Garantexは、その取引高が年間 50 億ユーロ以上に達するまでに成長する。その事業と顧客の大半がロシアやその他のハイリスク国に関連していた。このため、エストニアのマネーロンダリング対策局は2021年12月にGarantexの調査を開始する。その結果、マネーロンダリング防止およびテロ資金供与対策(AML/CFT)の義務違反が発見されたため、2022年2月、同社は暗号通貨サービスを提供するライセンスを失った。

米財務省による制裁が発動

すでにGarantexの悪名は米国にもとどろいていた。米財務省外国資産管理局(OFAC)は2022年4月5日、前述したHydraとGarantex Europe OÜに対して制裁措置を発動する。この制裁によって、米国内にある、あるいは米国人が所有または管理している、HydraやGarantexの個人および事業体のすべての財産および財産の権利は封鎖された。

それでも、Garantexは存続し、繁栄さえしている。その状況を伝えているのが2023年10月13日付の「ウォール・ストリート・ジャーナル」(WSJ)である。この記事にある下の図からわかるように、2022年4月のOFACによる制裁が発動されたのに、Garantexの取扱高は少なくとも減少したわけではない。制裁がむしろ宣伝になったのである。

記事によれば、顧客ベースにサービスを提供し続けるために、GarantexはITインフラを当初の非公開の場所からロシアに移行し、ドバイやタイといったロシアからの移住者に人気のある場所でパートナーシップを結んだ。その根強い人気の背後には、この取引所が現金を預ける顧客からほとんど情報や身分証明書を要求しないため、犯罪者は安全に収益を暗号に変換し、別の通貨として引き出すことができたからだとみられている。

もう一つ重要なことは、2022年2月24日からロシアによるウクライナへの全面侵攻が開始されたことである。同年4月からのOFACによる制裁スタートはウクライナ戦争勃発後の対ロ制裁回避の芽を摘む目的もあった。

しかし、実際には、「Garantexの顧客層は戦時中に拡大し、多額のルーブルを迅速かつ安価に出国・入国させる方法を探している一般ロシア人や地元企業を含むようになった」、と記事は報じている。

Garantexのモスクワ事務所では、1回の取引で最大1億ルーブル(現在の為替レートで約1億5000万円)を現金で受け取ることができると顧客に説明していた。この規模のルーブル取引は、しばしば国際銀行で懸念を引き起こし、口座凍結や顧客に対する情報提供の要求につながるが、Garantexの顧客は、赤旗を立てることなく複数の取引を行うことができたという。

重要人物がドバイで謎の転落死

実は、これだけ多くの犯罪や不法行為にかかわってきたGarantexは当局からも、あるいはマフィアからも、ずっとにらまれてきた。先のWSJ(ウォールストリートジャーナル)によると、2020年9月のある夜、Garantexの共同創設者の一人、ドゥルガレフの妻オクサナ・ドゥルガレワがモスクワの自宅で過ごしていると、武装警官がドアを破って突入した。

彼らは彼女の夫を探していた。自ら出頭した後、ドゥルガレフはGarantexを利用する犯罪組織に関する情報を警察に提供する合意を結び釈放されたようだ。報復を恐れてドゥルガレフはドバイへ移住したが、妻はモスクワに残留した。そして、2021年2月、ドゥルガレフの知人が妻に連絡し、夫の遺体がドバイの橋の下で発見されたと伝えた。ドバイの道路ジャンクションで車が橋から転落し、死亡したらしい。死因は不明。

こうした「ヤバさ」にもかかわらず、Garantexは規制を回避し、米国を拠点とする事業体との取引を継続していた。Garantexは姿を変えて事業をつづけたのである。

反腐敗に取り組む非政府組織「トランスペアレンシー・インターナショナル」のロシア支部、「トランスペアレンシー・インターナショナル・ロシア」(TPR)のサイトでは、「2022年にOFACから制裁を受け、2025年には大規模な警察活動の標的となったが、Garantexは活動を停止していない」と記されている。

「それどころか、同社のチームは新しいプロジェクト(MKANコイン、Grinex、Exved)を立ち上げ、技術的なトリックに基づいた分散型のマネーロンダリングシステムを構築し、ロシア当局の寛大な態度に支えられている」と指摘している。

【Exved】

TPRの別のサイト情報によると、Garantexインフラの主要設計者である、先に紹介したメンデレーエフは、エクスヴェド(Exved)を設立した。公式にはロシアの決済事業者として位置づけられ、モスクワ市で運営している。「輸出入業者のための最初の取引所 」と自称している。ロシアの顧客はExvedの代理店にルーブルで支払い、海外の取引相手は契約に基づいて必要な金額を不換紙幣または暗号通貨で受け取るという仕組みを提供している。

ルーブルは正式には国境を越えず、暗号通貨による為替取引はロシアの管轄外で行われ、文書に暗号の痕跡は残らない。Exvedはデュアルユース商品の取引に使用されており、ウクライナ戦争に使用する兵器の部品を企業に支払う際に利用されていると思われる。

【MKANコイン】

Garantexへの2022年4月5日の制裁発動後、同年4月、元Garantex幹部モハメド・ハリファによって登録されたのがMKANコインである。ハリファは以前、アラブ首長国連邦(UAE)の金融規制当局が監督するビジネス拠点「ドバイ国際金融センター」の上級職員を務めていた関係で、同社はドバイ拠点を拠点としている。

先のWSJによると、MKANコインは2023年初めまでGarantexのウェブサイトで提携先として掲載されており、ロシアの富裕層向けに移住サービスを提供していたUAE企業グループの一角だった。

TPRの別のサイト情報によると、MKANコインはゼロから生まれたのではなく、Garantexの資金洗浄スキームを継承し、新たな名前で複製し、制裁や検査に耐えうる分散型のグローバルネットワークに拡大したものである。同サイトは、MKANコインが「瞬く間にブラジル、キルギス、スペイン、タイ、グルジアに広がり、ルーブルをオフショアでステーブルコインや通貨に引き出すサービスを提供した」と書いている。

ドバイの規制当局は2024年半ばにMKANコインを閉鎖したが、ネットワークは復活した。今年の年初までに、後述する後継取引所Grinexとそのルーブル・ステーブルコインA7A5は、数十億ドルを扱うようになる。

【Grinex】

Garantexの傍若無人に対して、今年3月6日、米国シークレットサービスは、ドイツおよびフィンランドの法執行機関と連携し、Garantexのウェブドメインを差し押さえ、Garantexが管理する2600万ドル以上の暗号通貨を凍結するなど、Garantexのコンピュータインフラに対する破壊的措置を講じた。さらに、翌日、米司法省はGarantexの幹部アレクサンドル・ミラ・セルダ(共同創設者アレクサンドル・ヌティフォ・シャオの改名後の氏名)とアレクセイ・ベショコフに対する起訴状を公開した。

ベショコフは米国制裁法違反と無登録決済サービスの運営でも起訴された。起訴状公開後、ベショコフはインドで逮捕された。このような破壊的な措置が取られた後、Garantexは、制裁措置や法執行措置にもかかわらず事業を継続するために、顧客基盤と資金を後継取引所であるグリネックス(Grinex)に移したのである。

TPRの別のサイト情報によると、今年サービスを開始したGrinexは、ロシアとCIS市場に明確な焦点を当てたサービスを提供している。さらに、Grinex を介して新しいA7A5「ステーブルコイン」が開始されたことも注目されている。ステーブルコインは、既存通貨価値に固定されるかたちで価値が定められながらも、国家に管理されていない暗号通貨といえるかもしれない。あるいは、ドルなど既存の法定通貨に価値が連動する「通貨」といった定義も可能だろう(詳しくは拙著『知られざる地政学』[下, 333~334頁]を参照)。

A7A5はTronおよびEthereumブロックチェーン上で取引されるロシアルーブル担保型トークンである(「OFAC制裁指定のロシア暗号資産ネットワーク」を参照)。A7A5に関する2025年2月のプレスリリースによると、この暗号通貨はルーブル建ての預金で裏づけされており、具体的には、この新しい金融商品を決済に利用することに関心のある企業がPSB(Promsvyazbank, プロムスヴャジ銀行)にルーブル建て預金をするところからはじまる。 

PSBは米国、英国、EUの制裁下にあるロシア国営銀行であり、軍産複合体の決済銀行の役割を担っている。A7A5はおそらく、対外貿易と制裁回避のためのツールとして意図されている。4カ月間で、A7A5ステーブルコインはGrinex取引所を通じて93億ドル相当の取引を行った(TPRのサイト情報を参照)。

おそらく軍産複合体の武器製造のための部品を海外から輸入するための代金決済としてA7A5ステーブルコインによる決済が行われていると思われる。そう、きな臭い動きがGrinexによって広がっているのだ。

A7A5トークンはキルギスのオールドベクター(Old Vector)社によって発行されている。同社は、A7A5トークンの作成においてGarantex社などと協力してきた。収益を失ったGarantexのユーザーには、その損失相当額がA7A5トークンで提供された。

このトークンは、制裁回避に使用されるクロスボーダー決済プラットフォームを提供するロシアの企業A7のロシア人顧客向けに作成された。 A7 、その子会社A71 Limited Liability Company (A71) 、A7 Agent Limited Liability Company (A7 Agent)は、制裁を受けたモルドバのオリガルヒ(寡頭資本家)イラン・ショル(Ilan Shor)が所有するロシアのクロスボーダー決済プラットフォーム、A7 に直接関連している。

米財務省による新たな制裁

このようにみてくると、ロシアは暗号通貨を利用した闇取引を通じて海外との貿易を継続しており、それが制裁回避につながっていることになる。このため、先月14日、米財務省外国資産管理局(OFAC)は、2019年以降、不正行為に関連する1億ドル超の取引を処理することで、悪名高いランサムウェア行為者やその他のサイバー犯罪者を直接助長してきたGarantexを制裁先として再指定した(財務省のプレスリリースを参照)。

OFACはまた、Garantexの後継者であるGrinexを指定し、Garantexの3人の幹部と、同取引所の悪質なサイバー活動への関与を支援してきたロシアとキルギス共和国の6つの関連企業に対する措置を講じている。ほかにも、OFACは、さらにバラク・オバマ大統領によって署名された2015年4月1日付大統領令13694号に従って、財産および財産権益が封鎖されているA7を実質的に支援、後援、または財政的、物質的、もしくは技術的支援、または物品およびサービスを提供したことで、前述したOld Vectorを制裁対象に指定した。

OFACの調べによると、A7A5は、制裁対象のプロムスヴャジ銀行(PSB)の預金によって裏づけられており、発行以来取引量が大幅に増加し、累計で511億7000万ドル以上の取引を処理しているという。Grinexも8月14日のOFACによる制裁指定を受けており、A7A5取引の主要プラットフォームとなっている。

今度は重要人物がインドで謎の死

先に紹介した、今年3月7日に米司法省が起訴状を公開し、インドで逮捕されていたベショコフ(46歳)は、約半年後、米国への身柄引き渡し前に死亡した。ベショコフはロシア在住のリトアニア国民で、家族と休暇を過ごしていたインド南西部のケララ州で拘束されていた。死因は不明である。

ただ、匿名のテレグラム・チャンネル「VChK-OGPU」によると、「彼は米国に強制送還されることに同意した。9月の予定だった」という。つまり、ベショコフは、米国への身柄引き渡しに同意した直後に死亡したと主張していることになる。

彼の死については、Garantexの主任設計者とみなされている、2021年2月のドゥルガレフの死後、株主リストから消えていたメンデレーエフは、「私は彼の一生を知っていたような気がする。このような結果になったことは、とてつもなく悲しい」とテレグラムに書いている。

もう一人の注目される人物

いわくつきの会社Garantexだけに、同社にかかわるもう一人注目に値する人物がいる。それは、Garantexの共同所有者兼地域ディレクターであったパヴェル・カラヴァツキーだ。

昨年3月に公表された、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の報告書「制裁を受けた暗号取引所Garantexに関連する企業は、モスクワのギャングのリーダーのパートナーであり、クレムリンが支配するロスネフチとつながりがある」によると、先のメンデレーエフに代わって株主リストに登場したのはイリーナ・チェルニャフスカヤというロシア人だ。彼女は、クレムリンが支配する企業と長年つながりのあるロシア人経営者、パヴェル・カラヴァツキーのライフパートナーであるとされている。

エストニアの企業登記簿にある2021年2月の委任状によると、チェルニャフスカヤはカラヴァツキーと同じモスクワ中心部のアパートで登記されているという。二人には、息子がおり、3人の間に家族関係があると推測されている。

報告書は、「カラヴァツキーは2017年にペレスヴェト銀行の取締役に就任していたが、この銀行はロシアの強力な国営石油会社ロスネフチによって買収された」と記している。さらに、彼がペレスヴェト銀行の取締役に座っていた時期は、元ロシア連邦保安局(FSB)のオレグ・フェオクチストフが頭取の顧問として雇われた時期と重なっている。加えて、カラヴァツキーとフェオクチストフは密接な関係にあると指摘されている。

何が言いたいかというと、ロシアでは、ソ連崩壊後、それまで権力を牛耳っていた国家保安委員会(KGB)が解体され、その後、その主要な権限はFSBに継承されたが、企業の安全保障のために元KGB職員や元FSB職員を幹部や顧問として雇用するケースが多くみられた。ペレスヴェト銀行も同じように、FSBと深い関係をもっていたことになる。

しかも、同行を買収したロスネフチのイーゴリ・セ―チン最高経営責任者(CEO)はウラジーミル・プーチン大統領の最側近であっただけでなく、副首相時代に法執行機関の監督者を務め、FSB内に内部安全保障局を設置した。その局の第六部署を創設したのがフェオクチストフだったという因縁まである。そう、この二人の関係から、カラヴァツキーもプーチンの最側近であるセ―チンとのパイプをもっている可能性があるのだ。

報告書はさらに、カラヴァツキー自身がFintech Corporationというロシアの企業の一部所有者であり、そのウェブサイトによると、Garantexが暗号投資初心者にコースを提供するために設立した教育プログラムであるGarantex Academyを運営している。

UAEで活動を続ける男

カラヴァツキーは、2022年4月までGarantexのエストニアの親会社の株主であったヌティフォ・シャオ(2025年2月からミラ・セルダ)とFintechを共同所有している。Fintechという会社の変遷をたどると、実に興味深いことがわかる。

報告書によると、ロスネフチは2016年にタルギンという会社を買収し、その3年後、ロシアの企業登記簿によると、何者かがタルギン・ロジスティクスという名前の二つ目の会社を設立した。この二つの企業が関連しているかどうかは記録にはないが、タルギン・ロジスティクスが2020年にフィンテック・コーポレーション(Fintech Corporation)に社名を変更した後、カラヴァツキーがCEOに就任したという。つまり、カラヴァツキー自身もロスネフチと密接な関係を有しているようにみえる。

Fintechは、2016年に恐喝計画で流刑地に7年の刑を受けた有罪判決を受けた暴力団リーダー、アレクサンダー・ツァラプキンとともに、Academy of Conflictsという債権回収会社の50%も所有している。釈放後、ツァラプキンはAcademy of Conflictsで債権回収と、ロシアの企業記録では「問題解決」(暴力や脅迫などで懸案を片づける)と呼ばれる活動を再開したという。

暗号通貨の教育会社であることをアピールしているFintechが、なぜ債権回収会社を所有しているのかは不明だ。ほかにも、ヌティフォ・シャオ(ミラ・セルダ)はツァラプキンと音楽出版とスタジオ事業を共同所有しており、ツァラプキンとFintechは2022年3月までAnatomy of Lawという法律事務所も共同所有していた。

前述したように、今年3月7日、ミラ・セルダは、ベショコフと同様、Garantexとの関連で米国当局から指名手配された。しかし、ベショコフとは異なり、彼は逮捕を免れ、アラブ首長国連邦(UAE)から活動を続けている。

UAEと結びつく中国軍

これまでの記述からわかるように、現在、UAEは暗号通貨の世界できわめて重要な拠点となっている。そんな矢先、今月15日付の「ニューヨークタイムズ」は、「二つの巨大取引の解剖: UAEはチップを手に入れた。トランプ・チームは暗号通貨で大儲け」という興味深い記事を公表した。

もう紙幅が長くなりすぎているので、詳しい説明は割愛するが、UAEのシェイク・タフヌーン・ビン・ザーイド・アル・ナヒヤン(通称シェイク・タフヌーン)という人物が紹介されている。彼は、UAE.の国家安全保障アドバイザーを務め、英国の元スパイやレバノンの元首相を含む同志に囲まれてきたという。2023年までにシェイク・タフヌーンは、王室の国富を支える重要な指揮官という新たな役割も担うようになり、「1兆ドル以上の国費を自由に使えるようになった」と記されている。

最近では、彼は、2018年にアブダビで設立された、UAEのAI分野の持株会社である「Group 42 Holding」(G42)へ多額の投資をしている。G42は、シェイク・タフヌーンがAIビジネスやゲノムやクラウド・コンピューティングの最先端ベンチャーを個人的にコントロールする大企業とされている。シェイク・タフヌーンの副官の一人で、G42の暗号部門の責任者を務めるコンピューター・サイエンスの専門家、フィアック・ラーキンは、トランプ一家が手掛けている暗号通貨ビジネス(ワールドリバティ)に加わり、トランプ家の金儲けを手伝っていたという。他方で、UAEは中国軍と合同演習を行い、G42は中国のハイテク企業と広範な業務提携を結んでいる。

このように、UAEをめぐって、何やらとてつもなく深い闇が広がっていることがわかる。関心のある読者は、7月に公開した拙稿「「知られざる地政学」連載(98):オールドメディアが報じない「クレプトクラシー」の実態:UAEを暴く」()をぜひ読んでほしい。

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