JOG(1465) 第三次石油ショックを機にエネルギー独立を考えよう

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JOG(1465) 第三次石油ショックを機にエネルギー独立を考えよう
原発ゼロのドイツ。エネルギーの独立を考えない国民は、自らその代償を払う。 ■転送歓迎■ R08.03.29 ■ 85,757 Copies ■ 9,424,739Views■ 過去号閲覧: 無料受講申込み: __________ ★★★「国の宝を育てる授業」★★★ 小中高校の先生方に実践いただきたい「お手本授業」です。 子供たちにも、見せてあ…

JOG(1465) 第三次石油ショックを機にエネルギー独立を考えよう

原発ゼロのドイツ。エネルギーの独立を考えない国民は、自らその代償を払う。

■1.イランのホルムズ海峡封鎖で第三次石油ショック!?

花子: 昨日、父がガソリンの価格が190円にもなって大変だ、とこぼしていました。

伊勢: そうだね。アメリカとイスラエルがイランを攻撃して、イランが報復のために、ホルムズ海峡を封鎖した。ホルムズ海峡は日本で使う原油の7、8割が通過する重要な海峡だ。実際、原油価格は過去1ヶ月で約40%も急上昇している。

花子: えっ、それでは電気代も高くなっていくんですか?

伊勢: 日本の電力の約40%が石油とLNG(液化天然ガス)に依存している。原油が1割上昇すると、電気代が数百円から千円増えると言われているから、4割上昇だと最大で毎月4千円ほども値上がりしてしまう恐れがある。

 ただ、どれほど大変な事態になるかは、国ごとの石油やLNGへの依存度によって違う。2024年の家庭用電気料金を比較したデータがあるけど[新電力ネット]、日本は標準家庭(400kWh)で月約11,400円。ドイツは18,400円。フランスは14,100円だ。

花子: ドイツって日本より7,000円も高いんですね! でも同じヨーロッパの隣り合った国なのに、フランスとドイツで4千円も違うのはなぜですか?

伊勢: それがまさに今日話したいポイントなんだ。フランスが日本より高いのは、円安と税金の違いだろう。しかし、ドイツは石油・LNGの比率が約39%と日本と同程度。原子力はゼロで、残りは太陽光や風力など再生エネルギーが60%超。今後の急激な値上がりが予想される。

 一方のフランスは、原子力が67%とまさに「原発大国」だ。石油・LNGは8.2%と低いので、第三次石油ショックになっても、影響は限られる。ドイツとフランスのエネルギーに関する方針は正反対なんだ。

 我が国はどちらをお手本にすべきか、フランス事情に詳しい山口昌子・元産経新聞パリ支局長とドイツ在住40年以上の川口マーン惠美さんの対談本『原子力はいる? いらない?』で、興味深い両国の比較をしていたので、紹介しよう。

■2.ドイツの脱原発・脱石油、「歩き出したらもう考えない」

花子: 先生、ドイツの原子力発電がゼロって、いつからなんですか?

伊勢: 「緑の党」という市民団体から出発した党が、1970年代から原発反対を唱えていた。ただ、政府の正式決定は2011年の福島第一原発事故がきっかけだった。当時のメルケル首相が、この事故を受けて2022年までの「脱原発」を決定したんだ。

花子: 福島の事故が、遠く離れたドイツの政策を変えたんですね…。でも、原発をやめたら電気はどうするつもりだったんですか?

伊勢: ドイツはロシアの安価な天然ガスに頼る計画だった。ロシアとドイツをつなぐ海底パイプライン「ノルドストリーム」を完成させ、以後、ロシアへのエネルギー依存を加速させた。

花子: ロシアに頼るって…今考えると危険な選択だったんですね。

伊勢: その通り。2021年12月にメルケル首相が退任し、社民党・緑の党・自民党による3党連立政権が発足した。連立協定には、緑の党の強い要求により「2030年までの脱石炭」を目指す方針が書き込まれたんだ。

花子: えっ、原発だけじゃなくて石炭もやめるつもりだったんですか?

伊勢: そうなんだ。そしてその年の大みそか、稼働中だった6基の原発のうち3基を予定通り停止させた。しかし、翌2022年2月、ロシアによるウクライナ侵攻が始まって、EU諸国はロシア制裁のために、エネルギー輸入を止め、ドイツは深刻なエネルギー危機に陥った。さらに悪いことに、2022年9月末、「ノルドストリーム」が何者かによって爆破され、ロシア産ガス輸入再開の望みも絶たれたんだ。

花子: 爆破!? それは大変ですね。それでは原発は止められないですよね?

伊勢: そこが驚きなんだけど、止めてしまったんだ。2023年4月15日、エネルギー危機を受けて稼働を3カ月半だけ延長していた最後の3基の原発を停止し、脱原発を完遂した。これ以降、ドイツは一転して巨大な電気の輸入国へと変貌したんだ。ここのところを川口さんはこう書いている。
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 緑の党にとっての脱原発は五十年来の夢だ。そして今、それを成し遂げんとしているのが、彼らの英雄、ロベルト・ハーベック経済・気候保護相。この千載一遇のチャンスを、産業の危機だとか国民の困窮などといった一過性の”些細”な理由で棒に振るわけにはいかない。脱原発は緑の党の偉大な業績として、未来永劫、歴史に刻まれるべきだ、と彼らは考えた。[川口他、p3]
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花子: そんなことをして、国として大丈夫なんですか?

伊勢: 本当にその通りだね。さらに2024年4月1日、電力不足と電気代高騰が続く中、7基の石炭火力発電所を停止させた。

花子: えー! 電気が足りないのに、さらに火力発電所も止めちゃったんですか? 信じられません…

伊勢: ヨーロッパの国民性を表した面白い表現があるんだけど、イギリス人は「歩きながら考える」に対して、フランス人は「考えた後で走り出す」、ドイツ人は「考え抜いた後で歩き出し、歩き出したらもう考えない」と評した人がいる。エネルギーに関しては、まさにこの評どおりだね。

 しかし、失政の損害を受けた国民は政権を拒否した。2024年11月、エネルギー政策や経済対策の失敗などが重なり、連立政権が崩壊したんだ。

■3.ドイツ経済の「目を覆いたくなるような惨状」

花子: そんな無茶をして、ドイツの経済は今どうなっているんですか?

伊勢: 脱原発、脱石炭、脱ロシア産ガスで、電気代が高騰し、ドイツ経済は現在、深刻な不振に陥っている。2023年のGDPはマイナス0.3%、2024年はマイナス0.5%と二年連続のマイナス成長が続いた。

花子: 具体的にどんな影響が出ているんですか?

伊勢: 電気代の高騰で、ドイツ企業がいっせいに国外に逃げだそうとしている。国内の工場では「半端ではない」規模の解雇が予定されているんだ。自動車会社ではフォルクスワーゲン(VW)が2万3千人、自動車部品のコンティネンタルが1万3千人、同じくZFが1万2千人など、自動車産業はドイツ経済の屋台骨だったのに。川口さんは「目を覆いたくなるような惨状」として、こう語っている。
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 これら産業不振の一番の原因は、エネルギー価格の高騰ですが、それをもたらしている脱原発と脱石炭は誰に強制されたわけでもなく、ドイツが自発的にやっていることです。また、ロシアガスのボイコットも、EUがロシアにかけている経済制裁の一環ですから、やはりホームメイドといえます。[川口他、p60]
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■4.フランスの「原発大国」への道

花子: 一方のフランスは、「原発大国」ということですが、どういう経緯でそうなったんですか?

伊勢: 1970年代初頭の第一次石油ショックがきっかけだった。これを機に、産油国の言いなりにならないよう「エネルギーの独立」を大前提とした大規模な原発推進政策が始まったんだ。

花子: 石油ショックって、石油の価格が急騰して大変だった時ですよね?

伊勢: ちょうど、今のようにね。だからフランスは他国に依存しないエネルギー自立化の道を選んだんだ。73年以降、原発依存度の急上昇とともに、電力輸出量も急増した。80年代には欧州有数の輸出国になった。そして80年代後半には56基もの原子炉を運用し、原発依存度75%に到達したんだ。

花子: すごい! でも、福島の事故には影響されなかったんですか?

伊勢: 2012年から2017年にかけて、オランド政権が福島第一原発事故の影響を受けて原発依存度を75%から50%に下げることを公約し、一部の原発停止を決定した。

 ところが、2022年2月に大きな転換があったんだ。マクロン大統領が、改良型の新型炉「EPR2」を最大14基建設する計画を表明した。気候変動対策と電力コスト削減のため、再び原発推進へと舵を切ったんだ。原発の安全性にもしっかり配慮して、バランスをとった進め方をしようとしている。

フランス、カットノン原子力発電所(Stefan Kühn – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=94202による)

■5.フランスの最優先事項は「独立」

花子: 先生、フランスはなぜドイツと真逆の選択をしたんですか?

伊勢: それはフランスの歴史と国民性に深く関わっているんだ。山口昌子さんは、フランス革命でのスローガン「自由、平等、博愛」は、今も国是とされていて、それらを実現するためにも、他国から支配されない「独立」が大前提となっている、と説く。
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「革命の子」を自負するフランス人は、したがってエネルギー政策でも最優先事項は「独立」です。つまり、安全保障及びエネルギー問題は独立を守るためのもっとも重要な政策であることだと、国民は理解しています。「原発」は産油国の言いなりにならないため、フランスのエネルギーの「独立」を守るため、という大前提によって設立が決まりました。[川口他、p17]
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伊勢: 一方、川口さんは「ドイツには、原発と国の独立を関連づけるなどという感覚はまるでありません」と語っている。

 ウクライナ戦争が始まる前には、ドイツは天然ガスの55%、石炭の45%、原油の34%をロシアに依存していたんだ。しかし、ウクライナ戦争で、それも急停止。

 一方、2000年頃から、ドイツは再生エネルギーに突っ走っていった。毎年2兆円規模の補助金を出しながらね。しかし中国は、太陽電池モジュールの世界シェア75%、風力発電タービン(風車)も60%を占める。結局、再生エネルギーに頼るということは、中国の生産力や技術力に依存する、ということなんだね。

 フランスは「エネルギーの独立」を最優先にして原発を選んだ。一方、ドイツは「脱原発」という理想を優先して、結局は他国への依存を深めてしまった。この姿勢の違いが、今の両国の状況の違いを生んでいるんだよ。

■6.「原発ゼロ」を目指す菅直人元首相の「呪い」?

花子: 先生、日本はどうなんですか? フランスとドイツ、どっちに近いんでしょうか?

伊勢: 残念ながら、現在の日本はドイツに近い道を歩んでいる。山口さんはこう言っている。
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 当時の菅直人首相は福島事故から4カ月後の7月の首相官邸での会見で、「原発に依存しない社会を目指すべきだと考えるに至った。計画的、段階的に原発依存度を下げ、将来は原発がなくてもやっていける社会を実現していく」と述べ、日本国として「脱原発」を目指す考えを明らかにしましたが、
会見では現存の原発の今後や代替エネルギーでどう賄うのか、「脱原発」に伴う出費を含めた経済面での対策など具体的なプロセスなどには一切、言及していません。しかし、メディアも国民もそれには疑問を持たずに脱原発路線に流されました。[川口他、p94]
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花子: 具体的な計画もなしに「脱原発」を宣言したんですか?

伊勢: 川口さんも「そこだけはドイツ人そっくり!」と同意しているんだ。菅直人元首相は、『原発事故 10年目の真実』という著書の帯で、「原発ゼロは達成できる」と明言している。その目的は、ドイツの緑の党と同じ。ただ、アプローチはもっと巧妙だ。

 菅直人政権で、「原子力規制委員会」を設置し、その審査に通らなければ、原発は稼働できないようにした。その結果、33基ある運転可能な原発のうち、大震災から15年も経っているのに、稼働しているのは15基と半分以下なんだ。

花子: 半分以下…。審査って、そんなに厳しいんですか?

伊勢: 「世界一厳しい審査」と言われている。審査には3年から7年。地震、津波、火山噴火、テロ対策など数万ページ、厚さにして数メートルの書類を提出しなければならない。

 たとえば、敦賀2号機は審査に12年ほどもかかり、かつ、建屋直下の地層が、「後期更新世(約12〜13万年前)以降の活動が否定できない」として不合格にされている。審査をむやみやたらと難しくして、原発ゼロに日本を追い込むのが、菅直人元首相の「呪い」のように見えてくる。

花子: 12年も審査して不合格…。それじゃあ、事実上、原発を止めているのと同じですね。

■7.エネルギー独立の気概で、豊かな自然エネルギー開拓を

伊勢: その通りだ。しかし、我が国が原子力での高い技術を持てたのは、エネルギーの独立のビジョンを描いていた先人たちのお陰なんだ。川口さんは1956年の第1回原子力長期計画をこう評価している。
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しかも当初の計画から、原子力発電に加えて「ウラン濃縮」、「再処理」、「高速増殖炉」という三本柱、すなわち核燃料サイクルを目指していた。ウランを無駄なく燃料に変えるための「濃縮」、使用済み核燃料を再度燃料として利用するための「再処理」、そして、もともとあった燃料よりも燃料を増やすことができる「高速増殖炉」。・・・このような高い目標を抱いていたから、日本は世界に冠たる原子力技術国になれたのでしょう。
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伊勢: 石油輸入をアメリカから止められたことが、先の大戦に追い込まれた大きな要因だった。敗戦後からわずか11年後、先人たちは、その課題を克服すべく、次の時代を見据えていたんだ。

 ドイツの轍を踏まないためにも、我々国民が、フランスのようにエネルギーの独立をしっかり意識して、国の行く末を考える必要があるんだ。

 ただ私は、フランスのような原発大国とは別の道が我が国にはあると考えている。豊かな海と山、森に恵まれた日本列島では、小水力発電や潮流発電、地熱発電、木くずによるバイオマス発電などの多様で豊かな自然エネルギーがある。太陽光発電は雨の日や夜には稼働しないが、これらははるかに安定的な電源だ。これらを開発することで、君たちの安全安心な未来が開けるだろう。

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