トランプはゼレンスキーを見限った。首脳会談が鮮明に決裂

現代の世界各国

トランプはゼレンスキーを見限った。首脳会談が鮮明に決裂

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 「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和七年(2025年)3月1日(土曜日)
         通巻第8675号 
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 トランプはゼレンスキーを見限った。首脳会談が鮮明に決裂
   合意文書に署名せず、記者会見はキャンセル
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 最初から喧嘩腰で始まったトランプ大統領とゼレンスキー・ウクライナ大統領との首脳会談は緊張した雰囲気につつまれた。バンス副大統領も加わって激論となり、罵倒の応酬、交渉は決裂した。 

 予測された鉱山開発合意文書には署名せず、予定された記者会見もキャンセル、トランプは「彼は停戦の用意が無い。彼は無礼である。アメリカの支援への感謝の気持ちがないことが分かった」とし、ホワイトハウスを去るゼレンスキーを見送らなかった。

 最初から激突は予測されていた。
トランプが用意した鉱山開発の利権シェアなどといっても、これはトランプが何もカードをもたないゼレンスキーに提示した「助け船だ」ったのに、ゼレンスキーの視野狭窄と頑迷さが、停戦への展望を壊した。
 トランプはゼレンスキーを見限った。

 のこる選択肢はゼレンスキーの退場でしかない。ウクライナに新しい指導部が生まれ、改めての停戦交渉となるだろう。
 ウクライナ抜きの米露会談はつぎにトルコで開催される模様である。

 ウクライナの鉱山開発に関して。大手メディアを読んでいると分からない人が多いだろう。
この鉱区の多くはドネツク、ルガンスクにある。チタンとリチウム、ウランの埋蔵が顕著だが、とくに重工業の基板材料となるチタンは世界埋蔵の25%、ハイテク製品に欠かせないリチウウは世界埋蔵の20%と見積もられ、ソ連時代から操業は続いている。

 すなわちロシア軍が占領している地区も主な埋蔵地である。
ということは、米国がゼレンスキーと合意文書を取り交わしたところで、リアルな取引ではなく薔薇色の将来のシナリオを語り合っただけ。トランプ政権の一方的な予測は2500億ドルだが、そうした具体的数字を上げて、取引カードとし、ゼレンスキーは花道を飾らせようと意図したのだろう。それゆえトランプが提示した助け船だったといえる。

 レアメタル、レアアースの生産は中国が世界一だが、埋蔵はじつはアメリカが世界一である。世界中を見渡せば、他の地域の鉱脈でも、たとえば日本領海の南鳥島の海底とか、フィンランドあたりでも、あのアフガニスタンでも埋蔵が確認されている。

 ▼鉱山開発には最低十年の歳月と膨大な投資を必要とする

 新規鉱山開発には莫大な資金が必要である。ウクライナ鉱山開発に興味をしめす米国企業はない。ベンチャーファンドでも前向きなところはない。

将来の収入に見合うほどのコスパが得られるかどうか。
鉱山はアクセスがたいそう不便な地域にある。まずはトラック、ブルドーザ、クレーンを運べる道路建設、発電所建設、そして資材置き場、建築労働者の宿舎、兵站を維持するインフラが必要である。
この整備に三年以上、五年はかかるだろう。

 第二段階は具体的な埋蔵集積場所がどこかをボーリングをおこなって調べる。そして地下トンネル、トロッコ鉄道を敷き、地下を往復するエレベータの建設となり、最終的は岩盤を運び出して精錬する。ウクライナには製錬技術が不足している。

 まして電力を大量に必要とする精錬所はおそらく港湾に近いところに建設される。どんなに急いでも十年、ウクライナ鉱山の拡充に必要な資金は数十億ドル。
 あまつさえ停戦合意がもし成立しても、小競り合いや戦闘がつづくだろうから鉱山エンジニアに志願する労働者もあらわれないだろう。

 トランプが本気で開発に乗り出すなどとは考えられず、有権者を得心させ、ウクライナに注ぎ込んだ支援1750億ドルを相殺するのだという政治ジェスチャーのためだったことが分かる。したがって2月28日のトランプvsゼレンスキー会談で合意文書に署名しなかったのも、当然なのである。 

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