エプスタイン少女売春文書があぶり出した「世界的学者たち」がヤバすぎる!

11月中旬、アメリカの下院監視・政府改革委員会は、登録性犯罪者で失脚した金融業者ジェフリー・エプスタインの遺産から2万件の文書を公開した(エプスタインについては、拙稿「アメリカで大詰めの少女買春疑惑--エプスタインとトランプを結ぶ「点と線」」において詳述したので、そちらを参考にしてほしい)。新たに明らかになった文書によって、著名な学者たちが性懲りもなくエプスタインと交流していたことがわかった。外面と内面は大きくかけ離れている学者たちの正体を明らかにする。
ノーム・チョムスキーの裏の顔
たぶん、新しい発見のなかでもっとも驚きをもたらしたのは、11月20日付で、WBUR(かつてナショナル・パブリック・ラジオと呼ばれていた公共放送のマサチューセッツ州ボストンにある会員局)が報道した記事である。そこには、「エプスタインが2008年に児童買春の斡旋および売春勧誘で有罪判決を受けたにもかかわらず、チョムスキーは少なくとも2017年までエプスタインと緊密な連絡を保っていた」と書かれている。
このチョムスキーとは、マサチューセッツ工科大学(MIT)の言語学の名誉教授であり、著名な活動家、哲学者であるノーム・チョムスキーだ(下の写真)。先の拙稿で紹介したように、『心の社会』(The Society of Mind)で有名なMIT教授マーヴィン・ミンスキーもエプスタインの毒牙にかかっていたのだから、チョムスキーも宜なるかなといったところか。
記事によれば、チョムスキーは、日付の入っていない手紙のなかで、エプスタインの才能と人脈を絶賛している。この応援の手紙がだれに送られたのかどうかは不明だが、最後の署名に、アリゾナ大学の名誉教授とあることから、チョムスキーがその地位を得た2017年以降に書かれた可能性が高いという。
この手紙でチョムスキーは、約6年前にエプスタインと出会い、「それ以来定期的に連絡を取り合い、長時間にわたり深く掘り下げた議論を数多く交わしてきた」と記している。彼はまたエプスタインの世界的な影響力を誇示してもいる。たとえば、「オスロ合意について議論していた時、ジェフリーが電話を取り、合意を監督していたノルウェー人外交官に直接連絡を取り、活発な意見交換が生まれた」とチョムスキーはのべている。
絶望的になるのは、書簡以外にも新たに公開された通信によって、エプスタインとチョムスキーとの親密な関係が明らかになっている点だ。2015年8月6日、チョムスキーに宛てた電子メールのなかで、エプスタインは、「…もちろん、新しい余暇にニューヨークのアパートメントを使ったり、またニューメキシコを訪れたりするのは大歓迎だ」と書いているという。ニューメキシコ州サンタフェには、エプスタインが未成年者との性犯罪の疑いで告発された現場となった彼の屋敷がある。チョムスキーもエプスタインと同じく小児性愛にふけっていたのだろうか。
ここで書いたような事実を知る以前、私はチョムスキーの著作に感銘を受け、自分の書物でも引用してきた。たとえば、拙著『知られざる地政学』(上巻)の第四章第一節「チョムスキーの教え」(92~96頁)において、「「特別階級」と「とまどえる群れ」」という項目を立てて、ノーム・チョムスキー著『メディア・コントロール』の記述を紹介しながら、民主主義の「嘘」を支えるマスメディアの実態について説明したことがある。
こんな私からみると、暴露された事実は重い。彼の著作を鵜呑みにしてきた私自身への反省にもつながる。
(出所)https://www.theguardian.com/us-news/2025/nov/22/noam-chomsky-jeffrey-epstein-ties-emails
サマーズ元ハーバード大学長の女癖
今回の新たな文書の公開によって、ハーバード大学の経済学者ローレンス・H・サマーズは、エプスタインが売春の勧誘で有罪を認めた後も親密な関係を保っていたことがわかった。11月20日付の「ニューヨークタイムズ」によれば、サマーズとエプスタイン間の電子メールの一部を公開され、メールのなかでサマーズは信頼できる友人に頼る様子がみられ、「気になっていた女性が自分を『後方視界カテゴリー』に追いやったとエプスタインに打ち明けている」という。当時既婚者だったサマーズは2019年のメールで、その女性が他の人とかかわっていることに不満を漏らしている。
サマーズは、2001年から2006年までハーバード大学の学長を務め、ビル・クリントン大統領の下で財務長官(1999~2001年)も務めた人物だ。だが、ハーバード大学学長だった2005年1月、ある学会で、数学や科学の分野で成功する女性が少ないのは、男女間の生まれつきの違いによるものではないか、と発言した。サマーズは謝罪し、自分の考えが誤解されていたとのべたが、その後、2006年に辞意を表明した。
実は、2023年5月3日付の「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、サマーズが、妻のオンライン詩プロジェクトに100万ドルの資金提供をエプスタインに求めたていた、と報道していた。「小規模な慈善活動に関する助言が必要だ。リサのために100万ドルを集められれば、私の人生はより良くなるでしょう」とサマーズは2014年4月、妻でハーバード大学教授のエリサ・ニューを指してエプスタインにメールで伝えていたのである。これが事実であったことは、今回の公開によって確認された。
先に紹介したNYTは、「2020年のハーバード大学の報告書では、エプスタインが2008年に未成年者の性犯罪で有罪を認める前に、900万ドル以上を寄付していたことが明らかになった。報告書はまた、彼が2009年に刑務所から出た後、40回ほどハーバードを訪れていた可能性が高いとしている」と報じている。どうやら、大学も学者もカネに弱く、倫理観の欠片もないようにみえてくる。
サマーズは今回の暴露によって、ChatGPTのメーカーであるOpenAIの役員を辞任した。彼は、11月17日には公的生活から退くことを示唆する声明も出した。「深く恥じている」とし、「エプスタインとの接触を継続するという誤った判断について全責任を負う」と表明した。
ただし、ハーバード大学の学生に対しては、「しばらくの間」公的な活動から身を引くことを表明したにすぎない。というのは、サマーズは終身教授職にあり、終身在職権を奪うのは簡単ではないからだ。学長室はウェブサイトで、教授の任命は「重大な不正行為または職務怠慢があった場合のみ」大学最高意思決定機関であるハーバード・コーポレーションによって解除されるとのべている。
それでも、学外は甘くない。「ワシントンポスト」によれば、ファイルが公開された後、イェール予算研究所、ピーターソン国際経済研究所、ブルッキングス研究所のハミルトン・プロジェクト、世界開発センター、アメリカ進歩センターなど、一連の委員会やシンクタンクがサマーズとの関係を断ち切った。左派系シンクタンクの「アメリカ進歩センター」(CAP)は声明で、サマーズがリーダーを務めるはずだった経済提言に焦点を当てたワーキンググループの立ち上げを一時停止したとした。
サマーズが、バージニア大学の歴史学教授フィリップ・ゼリコウおよび2007年から2012年まで世界銀行総裁を務めたロバート・ゼーリックとともに、「ロシアの埋蔵金をウクライナ支援に使うべき理由を語る」という記事をThe Economistに寄稿していたことが思い出される。倫理観に乏しい人物だからこそ、米民主党の戦争好きなリベラル派を臆面もなく擁護する姿勢がとれるものなのだ、と妙に納得するところがある。
(出所)https://www.washingtonpost.com/nation/2025/11/19/larry-summers-jeffrey-epstein-harvard-openai/
世界的宇宙物理学者も密接な仲
ハーバード大学には、数学と生物学のマーティン・ノヴァク教授もまたエプスタインとの関係をもっていた。11月21日付のNYTによれば、エプスタインとノヴァクは、個人的にも金銭的にも長い関係にあった。
2003年、エプスタインはハーバード大学の進化力学プログラムの設立に650万ドルを寄付した。エプスタイン氏は刑務所から出た後、ハーバードを40回ほど訪問したらしい、と大学のレビューが伝えている。なお、ハーバード大学はノヴァクに2年間の制裁を科し、進化力学プログラムを閉鎖したが、彼はハーバード大学の数学と生物学の教授をつづけている。
2017年末、#MeToo運動が始まったばかりの頃、当時アリゾナ州立大学の教授だったローレンス・クラウスがエプスタインと連絡を取り合っていたこともわかった。クラウスは、カナダ系アメリカ人の理論物理学者・宇宙論者である。アリゾナ州立大学(ASU)、イェール大学、ケース・ウェスタン・リザーブ大学で教鞭を執った経験をもつ。
さらに、NYTは、「エプスタインと、MITメディアラボを率いた著名な学者である伊藤穰一との間の電子メールは、エプスタイン氏の影響力がほぼ死の直前まで持続していたことを示している」と書いている。なお、私自身は、2021年8月16日付で「論座」に公開した拙稿「デジタル庁事務方トップ人事に大いなる疑問符:『不適切な人物』に頼る不安」のなかで、エプスタインのMITへの寄付が疑念を招き、MITメディアラボ所長から辞職に追い込まれた伊藤穣一を、日本政府のデジタル庁の事務方トップ「デジタル監」に充てようとする人事を批判したことがある。
つまり、今回の文書公開以前から、伊藤とエプスタインとの関係はすでに知られていた(詳しくは拙稿「「知られざる地政学」連載[103]エプスタイン:権力関係を考察するためのヒント」[上、下]を参照)。
最後に、エプスタインの公開文書に関心のある方は、文書群に閲覧可能なサイトがあるのでそちらにアクセスしてほしい。ほかにも、簡単にメールを閲覧できるサイトもあるので、自分の目でたしかめてほしい。
ここで紹介したように、人は肩書や属性だけでは判断できない。読者も、あるいは、私自身も、肝に銘じる必要があるようだ。
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