トランプが決してロシア寄りでもないのに、ヨーロッパを小馬鹿にし、世界を振り回し続ける理由

現代の米国
決してロシア寄りではない「マッドマン」トランプの本音
トランプ大統領は、ロシア寄りの姿勢を演じることで、アメリカの核攻撃を防ぎ、ヨーロッパの防衛力を高めようとしていると考えられている。彼は表面的な発言で本音を隠し、リベラルなヨーロッパを批判している。トランプは、現実的な問題解決を重視し、ヨーロッパの「キレイゴト」を小馬鹿にする立場を取っている。

トランプが決してロシア寄りでもないのに、ヨーロッパを小馬鹿にし、世界を振り回し続ける理由

本当に西側の価値観を壊すだけなのか

日本経済新聞に「『西側』でなくなる米国」との評論記事がアップされた。この記事の結論は、トランプ大統領が率いるアメリカはもはや西側の一員ではないというものだ。日本経済新聞は、トランプ大統領が法の支配や多様性の尊重といった戦後秩序の中核だった価値観を軽んじているとの認識を示している。

記事はその証拠として、以下のような例を挙げる。NATOの仮想敵はロシアであったはずなのに、トランプ政権はその敵国ロシアと手を結ぶことを優先し、ロシア寄りの立場でウクライナに停戦を迫ることを続けている。昨年12月に発表したアメリカの国家安全保障戦略では、ロシアや中国への批判を和らげた一方で、欧州については移民流入などで「文明の消滅」に向かうと厳しく断じた。トランプ政権はデンマーク領であるグリーンランドの獲得を狙い、場合によっては軍事力の行使も否定しないという態度にさえ出ている。

報道の自由、学問の自由を「制限」する姿勢も見せている。中央銀行の独立性を脅かすような言動を繰り返し、議会に諮らずにベネズエラに対する軍事作戦まで展開した。こうしたことは全て、西側の価値観を突き崩すことだ。だから、アメリカはもはや「西側」ではなく、むしろ「西側」の価値観を壊す側に回っているのだと。

この捉え方はおそらく世間的には標準的なものだろう。アメリカでも民主党支持者は同じような見方をしているのが普通だ。民主党支持者ばかりでなく、共和党支持者の中でも、トランプ政権のあり方に疑問を持つ声はかなり上がっている。熱烈なトランプ支持層であったMAGA派の中にも、大統領就任後のトランプのあり方についていけないとして、一部離反する動きも生まれている。

かつては熱烈なトランプ支持派だったマージョリー・テイラー・グリーン氏も、そんな一人だ。彼女とトランプ大統領とは、エプスタインファイルの公開のあり方で真っ向対立したところから急激に関係が悪化し、彼女は今や強烈な反トランプ派に鞍替えした。トランプ政権に少しでも打撃を加えたいということなのか、彼女は1月5日に下院議員を辞職した。

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だが、日本経済新聞的な見方はトランプ大統領を正しく捉えたものではないというのが、私の考えである。何度も書いてきたが、トランプ大統領は気狂いを装うマッドマン戦略を採用しており、表面的な言葉によってその真意を知ることができない。世間においては、表面的な言葉だけを捉えて、「幼稚な考えだ」と小馬鹿にする向きが強いが、オールドメディアを全面的に敵に回して選挙戦を戦ってアメリカの大統領選挙に勝利した人間の考えがそんなに幼稚なのか、もっとよく考えるべきではないか。

勘違いしてもらいたくないが、私はトランプ大統領の政策全てに賛成しているわけではない。私はトランプ関税はおかしいと思っている。メキシコ湾をアメリカ湾に呼び方を変えたことについても、メキシコ人の反アメリカ感情を作り出す愚かな行為にしかならないと思っている。カナダをアメリカの51番目の州にするんだとか、グリーンランドをアメリカのものにするためなら、軍事力の行使もありうるといった発言に至っては、怒りすら感じている。こうしたことからすれば、私がトランプ盲信ではなく、トランプ政策を是々非々の立場で捉えていることがわかるだろう。

本心を悟られないように

トランプ大統領は自分の言動に世の中がどう反応して新しい世界が作られていくかを考え、望ましい世界に導くために何をすべきかを逆算して、そのために必要な発言と行動を行なっている。しかも、本心を悟られるとその効果が大きく減衰するために、簡単に悟られないようなことまで行なっている。矛盾する発言、頭がおかしいとしか思えないような発言、カネのことしか考えていないとしか思えない下劣な発言を繰り返すようなことまで行う。だからその読み取りには慎重を要する。

こんな抽象論では私の言っていることがわからないだろうから、ウクライナとロシアとの戦争において、トランプ大統領がロシア寄りの姿勢を見せていることについて、具体的に考えてみよう。

確かにトランプ大統領はロシアの要求を呑めとウクライナに圧力を加えているように見える。しかもかなり強力な圧力を加えているように見えるのは確かだ。私は今「見える」と表現したが、受けているウクライナの側からすれば、まさに圧力を加えられている強い実感もあるだろうから、「見える」という表現に抵抗を感じる人もいるだろう。私が言いたいのは、本音としてはロシア寄りではないのに、ロシア寄りに見える演技をしているということだ。こうした圧力を加えたところで、ウクライナがそれに乗ってくるわけがないことを十分に理解した上で、敢えてやっているのである。

そもそも、ウクライナを早々に敗北させることをトランプ政権が本気で考えているのであれば、米軍が得たロシアに関する軍事情報のウクライナへの提供を真っ先に止めるのではないか。トランプ政権の意向に反した対応を現場の米軍は行っているが、そうやって現場に裏切られていることにトランプ政権の主要メンバーの誰も気づいておらず、そのまま流れ続けているなんてことがあるのか。

トランプ政権はとびっきりのボンクラの集まりだから気づいていないのだというなら、一応は理解可能だ。では、そんなボンクラたちが、イランやベネズエラで見せたような鮮やかな電撃作戦を実行できるのか。そもそも日本人の私でも十分に理解できるレベルの話を、トランプ政権の主要メンバーの誰もわからないなんてことがあるのか。ありえないだろう。

トランプの本音は「親露」ではない

トランプ大統領の真の狙いは何だろうか。私は3つあると考えている。

1つ目は、ロシアが今後どんな状況に追い込まれたとしても、アメリカに核兵器を飛ばしてこないようにすることだ。表面的にはロシア寄りの姿勢をずっと取り続けているなら、何があってもロシアがアメリカを核攻撃することは起こりえない。プーチン政権がトランプ政権の意図を正確に理解し、トランプ政権の本音が親露ではないことに気づいていても、その結論は変わらない。

なぜなら、ロシア国内では長引く戦争に国内の不満が溜まっているが、そのガス抜きのためには、トランプ政権が親露姿勢を演じていることをプロパガンダとしてどうしても利用したいからだ。ロシア国民にはトランプ政権が親露姿勢なのだと植え付けられていく。トランプ政権は親露の立場から戦争を終結させようと努力しているとロシア国民みんなが思い込んでいるのに、アメリカにロシアが核兵器を打ち込むことなど、不可能だろう。

2つ目は、このトランプ政権の見せかけの親露姿勢は、ロシアによるウクライナに対する核攻撃を防止するのにも役立つところだ。今後ロシアが劣勢になって追い詰められるようなことが起これば、形成逆転を狙ってウクライナに対して核兵器を使うことをロシア側が考えることもあるだろう。だが、トランプ政権が表面的には親露的な姿勢から停戦を求める立場を続けていくなら、トランプ大統領の顔をどうしても立てざるをえなくなる。ウクライナに対する核攻撃を完全に防止する力まではないかもしれないが、使用したい誘惑をかなり抑制できるはずだ。

3つ目は、お花畑モードの「リベラル」に染まったヨーロッパを目覚めさせることだ。従来のNATOは、ヨーロッパの安全保障のための枠組みのはずだが、肝心のヨーロッパ自身は大した努力をせずに、アメリカの防衛力に頼り切ることが当たり前になっていた。こうしたNATOのあり方に、トランプ大統領はたびたび苦言を呈し、求められる国防義務を果たさないなら、アメリカはヨーロッパを守らないどころか、ロシアに好きにさせるぞ、とまで言った。

これにビビったヨーロッパ諸国は、急激に防衛費の増額に動き、GDP比5%まで防衛費を増やすことを約束するようになった。これで最も困るのはロシアだということを「リベラル」勢力は完全に見落とした上で、「トランプはロシア寄りだ」と決めつけている。

バイデン政権下でのウクライナ支援も、アメリカが支援の中心であることが前提とされた上で、ヨーロッパもそこに加わる形を取りながら、発言だけは一人前にさせてもらうという身勝手なことをやってきた。だがトランプ体制のもとでヨーロッパ諸国も従来の姿勢を転換させざるをえなくなり、ヨーロッパがウクライナ支援に大きく関与するあり方にかなり変わってきた。

トランプ大統領は、これでもまだヨーロッパの動きは十分ではなく、もっとそのあり方は変わるべきだと考えている。だからその方向にヨーロッパがさらに動くためには、アメリカがどう動くのが正解なのかというのが、トランプ大統領の考えていることだ。

仮に今アメリカがウクライナ支援に積極的に乗り出せば、ヨーロッパは再びその事態に「安心」して、ヨーロッパによるウクライナ支援が再び弱まる可能性も考えられるだろう。ヨーロッパにウクライナ支援を責任を持って担わせるには、ヨーロッパをまだまだ焦らせる動きに出た方がいい。ロシア側に立つようなそぶりを見せ続けないと、ヨーロッパは焦らないだろう。

ウクライナへのパトリオットミサイルの供与が一時中止された後にすぐに再開されたのは、パトリオットミサイルの費用をヨーロッパが負担することになったからだが、これまた表面的な理解に留まるべきではない。トランプ政権がケチだからというのは間違ってはいないだろうが、それだけではない。「平和を望んでいれば平和は守られる」というような甘ったれた考えからヨーロッパを脱却させなければならないと考えていたのだろう。

「リベラル」というヨーロッパの病

さて、ヨーロッパがハマってきた「リベラル」思想は、決して国防だけに限られない。移民の大量流入を許して国を滅茶苦茶にしてしまった点については、ヨーロッパ内においてもかなり反省が進んできたが、これにしてもまだ完全に払拭されたわけではない。例えば、ドイツで移民反対を掲げてきて、今や国民の支持率調査でも第一位になることが多い「ドイツのための選択肢」を、今なお「過激な民族主義政党」「危険なネオナチ政党」だと扱い、与党から排除するようなことが続いている。

脱CO2の過度な重視もいくらか修正されてきてはいるが、今なお十分に修正されたとは言い難い。従来の路線を抜本的に転換しないと、再生可能エネルギーの主力とされる太陽光発電・風力発電、新エネルギー車としてのEVやそのもとになるリチウムイオンバッテリーは、共産中国にいいようにやられるのがはっきりと見えている。

「リベラル」が言うほど地球温暖化が大問題だとは私には全く思えないが、仮に大問題だとしても、露骨な覇権主義を振りかざす共産中国の世界的影響力拡大の方が、もっとリアルな大問題ではないのか。ところがヨーロッパにおいては、共産中国の膨張の問題よりも、脱CO2を重視する姿勢がまだ残っていて、抜本的な政策転換はまだ進んでいない。

「リベラル」思想に染まっていることにより、理念的な美しさを優先して実質性を無視する傾向が、ヨーロッパ諸国には強くある。ヨーロッパ諸国は口先ではウクライナ支援に全力を上げるようなことを言い、F16のウクライナへの供与も確かに進められた。だが、F16の主要機能であるLink16と呼ばれる高度な通信機能はわざわざ外された上でウクライナ側に引き渡されたのが実際だ。

Link16を付けたままだと、Link16を使った運用がどうなるかがロシア側に漏れる可能性があるから、これを防ぐためだとされているが、ロシアとガチの戦争を戦っている際に、機密が漏れる心配をして機能を落とすというのは、おかしくないか。ヨーロッパ諸国の本音としては、ロシアの怒りが自分たちに直接向けられるのを避けたかったからではないのか。その結果として、ウクライナ軍はせっかくF16を引き渡されたのに、その活用方法が著しく制限されてしまったのだ。

ヨーロッパはロシアに怒られないように立ち回る

欺瞞的な「リベラル」の立場に立っていても、ウクライナがロシアに負けるのは何としてでも避けなければならないとは思っているだろう。かといってウクライナがロシアに勝てる力を与えてしまい、怒ったロシアが自分たちに刃を向けてくることも、本音では恐れているのである。

ヨーロッパ諸国はロシア産の原油に深く依存してきたが、ウクライナ戦争が始まったことで、ロシア産の原油に依存しないようにすると言い出した。それ自体は対ロシア政策として正しいとは思うが、ヨーロッパ諸国はここでとんでもない抜け穴を使ったことを見逃してはならない。インドがロシア産の石油を大量に購入して精製すれば、インド産のガソリンとか軽油とかに切り替わることになる。そのインド産のガソリンとか軽油を購入することで、それらが元々はロシア産の原油だということを知っていながら、ロシアから買っていない、ロシア産から切り替えたぞという逃げを打ったのである。

天然ガスについても、ロシア以外の国から購入するために、開発途上国がロシア以外の産ガス国と結んでいた天然ガス契約を、もっと金を払うからといって破棄させて、自分たちがその天然ガスを横から奪うようなことも行った。こうした行為は倫理的に恥ずべき行為ではないのか。

本来であれば、自分たちの安全保障を最優先して、脱CO2路線を一時的に棚上げにし、自分たちの領域で石油や天然ガスの開発を急いで進めるべきだったのだ。さらにアメリカのバイデン政権やカナダのトルドー政権にもお願いして、西側でできる限りの増産体制を築くべきだったのだ。そうやってロシアの石油・天然ガスを早期に市場から排除して、ロシアの外貨獲得能力を大きく削ぎ落としていたら、ロシアの戦い方にも大きな影響を与えることができただろうに、そんなこともやらなかった。「自分たちは世界に率先して脱CO2を推進しているのだ」という「イメージ」が崩れないことを最優先にして、本当にやらなければならない政策から逃げたのである。

「掘って掘って掘りまくれ!」と、石油や天然ガスの増産に力を入れて、ロシアの外貨収入に真剣に打撃を与えようとしているのは、むしろ「親露」っぷりを非難されているトランプ大統領ではないのか。

「キレイゴト」のヨーロッパは信用できない

見た目のキレイゴトを優先して、現実離れしたことを上から目線で色々と言ったりやったりしてくるヨーロッパが、真っ当な地域に変わらないうちは、ヨーロッパを信用することなんてできないというのが、トランプ大統領の本音なのだ。ヨーロッパは今なお、「リベラル」を克服して本音で語れるように育った政治勢力を「極右勢力」だとして排除することを当たり前にしているが、こういう偽善が許せない気持ちは、私の中にもある。

今、トランプ大統領が率いるアメリカは、キレイゴトよりも実際的な問題解決を優先できる国家だ。イランにおいてもベネズエラにおいても、極めて限定的な軍事作戦で大きな成果を挙げた。トランプ大統領はヨーロッパがアメリカと同じ成熟した国家群に変わることを期待しつつ、いまだに実際的な問題解決能力を十分に発揮できないヨーロッパ諸国を小馬鹿にしていると見ればいいだろう。

キレイゴトの立場からは、キレイゴトを満たさないトランプ政権に対して「あれがなってない、これがなってない、もう信用できない」という非難の大合唱になる。政界に限らず、オールドメディアもこの点では同じだ。キレイゴトを優先し、事実を捻じ曲げてまでトランプ批判を平然と行うメディアをトランプが問題視するのは、当たり前ではないか。報道は自由だが、事実を捻じ曲げて報じる自由はないだろう。学術界にしても同様の問題を抱えている。

目下日本においては高市内閣の支持率は極めて高いが、オールドメディアの報道では高市内閣は一般的に否定的に扱われる。SNSが発達したことで、「リベラル」の欺瞞性が今や明らかなのに、オールドメディアは自分たちの路線をなかなか切り替えることができないでいる。近く行われるであろう解散総選挙では、旧来の「リベラル」路線を取るのか、実際的な問題解決のできる成熟路線を選ぶのかの選挙になるだろう。私たち日本人も、この歴史的な岐路でまさに試されているのである。

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