米銀行業界の脱「脱炭素」に、ザッカーバーグの脱「ファクトチェック」…いまアメリカで脱「リベラル」の動きが加速している「深刻な理由」

米銀行業界の脱「脱炭素」
私は今年の元旦に自分のYouTubeチャンネルで「2025年大予測 敗北必至のリベラル 既に世界史的転換点に」という動画をアップした。タイトル通り、この動画は、2025年はこれまで見えにくかった脱「リベラル」の世界的な動きが、一気に表面化する年になるのではないかという予測を打ち出したものだ。
そして実際、既にこの流れが加速していることを感じさせる動きがいろいろと出ている。

銀行業界にはNZBA(ネット・ゼロ・バンキング・アライアンス)と呼ばれる組織がある。NZBAは文字通り、二酸化炭素の放出量ネット・ゼロに向かって動く、銀行業界の連合体だ。
このNZBAから、昨年12月にシティグループ、バンク・オブ・アメリカ、ゴールドマン・サックス、ウェルズ・ファーゴ、モルガン・スタンレーといった大手のアメリカの金融機関が相次いで抜け出し、残っていた唯一の米大手銀行のJPモルガン・チェースも1月になってついに抜け出した。この結果、米大手銀行でNZBAに属するところはひとつもなくなった。
NZBA事務局長のサラ・ケミット氏は、米大統領選挙でのトランプ当選による政治環境の変化がその理由だとしているが、私はその見方は単純にすぎると考える。
というのは、今から2年以上前の2022年9月の段階でも、米大手銀行のNZBAに対する不満はかなり高まっていたからだ。
NZBAは当初は入っていさえすれば「わたしたちは地球環境の未来のことを考えています」みたいなポーズが取れるくらいのゆるい位置づけだった。
だがその後、国連などからの圧力も受けて、NZBAに参加する銀行の融資姿勢などに対する締付けが強くなってきたのだ。
これに対してJPモルガン、モルガン・スタンレー、バンク・オブ・アメリカなどが不満をいだいているということが、この段階で報じられている。
つまり、過剰な脱炭素の要求に対する反発は、もうこの頃から金融業界では広がっていたのだ。だから米大手銀行が先月から相次いでNZBAからの離脱を決めたのは、NZBAのあり方に不満を持っていた金融機関が、トランプ政権発足をこれ幸いとして動いたと見たほうが正しいだろう。
ザッカーバーグの脱「ファクトチェック」
脱「リベラル」で目立った動きをしているのが、メタ・プラットフォームズだ。
メタ・プラットフォームズは、Facebook、Instagram、threadsなどのSNSを運用している企業で、CEOはマーク・ザッカーバーグだ。
ザッカーバーグは、「間違いや検閲が多すぎる状況に陥っている。表現の自由という原点に立ち返る時だ」と、今月に入って述べた。
SNSに投稿されるものには、誰も文句をつけたりしない穏当なものもあれば、立場によって見解が大きく異なる物議を醸すものもある。
物議を醸すものについては、これまでは「ファクトチェック機関」が「ファクトチェック」なるものをやって、「フェイクニュース」を取り締まっていたが、本来公正・中立であるべき「ファクトチェック機関」が偏っていて、「ファクトチェック機関」が支持したい内容は◯、支持したくない内容はXという、とんでもない「ファクトチェックもどき」がなされてきた。
そこでザッカーバーグは、行われた投稿について、それがフェイクニュースかどうかを「ファクトチェック機関」の検査結果をもとに自社で判断し、「フェイクニュース」だとされた投稿を排除するという路線をやめることにしたのだ。
その代わりに、旧ツイッターのXが導入している「コミュニティーノート」に類似したシステムを導入することを明らかにした。
「コミュニティーノート」方式だと、物議を醸す投稿も、原則として全て残ることになる。そのうえで、内容に疑問符を感じるものについては、証拠をあげて疑義を提出して書き込めるようにするわけだ。
このやり方であれば、各人の表現の自由を最大限尊重する形になる。
バイデンの圧力に屈服していた
ザッカーバーグはまた、コンテンツポリシーなどを監督するチームをカリフォルニア州からテキサス州などに移転させる計画も明らかにした。
つまり民主党の牙城で左翼傾向が特に強いカリフォルニア州にコンテンツポリシーなどを監督するチームを置くのを避けて、テキサス州など共和党の強い州に移すというのだ。
これは、カリフォルニア州に集まっていた社内の左派グループとは一緒にやっていけないという意思表示でもあるのだろう。
このザッカーバーグの動きは、トランプ勝利に迎合した突然の路線変更のように捉える向きもあるが、私はそれは違うのではないかと思っている。
昨年8月に、ザッカーバーグは下院司法委員会のジム・ジョーダン委員長に宛ててレターを書いている。
このレターの中でザッカーバーグは、風刺的に扱おうが、ユーモラスに扱おうが、新型コロナに関連するコンテンツは検閲(削除)するようにバイデン政権から絶えず圧力を受けてきて、その圧力に自分たちは屈服してきたと書いている。
ハンター・バイデン疑惑も検閲してしまった
バイデン大統領の息子のハンター・バイデンのラップトップパソコンの話が2020年の大統領選挙の時に持ち上がったが、これについても同じような圧迫を受けて屈服してきたのだと、ザッカーバーグは正直に語っている。
このラップトップパソコンには、バイデン一家とウクライナのガス会社ブリスマの黒いつながりがあることが記録として残っていることが報じられたが、この話がロシアの陰謀の作り話の可能性があるという警告をFBIが行ってきたことを、ザッカーバーグはレターの中に書いている。
結局はロシアの陰謀なんて話ではなくて、実際に本人のパソコンに書き込まれていた内容だったということを、ザッカーバーグは後から知ることになった。
こうした話をニセ情報として却下し、検閲を行ったことが、2020年の大統領選挙の結果に大きく影響したのは間違いないが、こうなったことをザッカーバーグは悔いているのだ。
それでこういうことが二度と起こらないようにポリシーを変更したことも明らかにした。
そのうえで政府側の要求に抵抗する声を上げなかったことに、ザッカーバーグは深い後悔を表明した。
バイデン政権に心底嫌気さす
レターの中でザッカーバーグはまた、チャン・ザッカーバーグ・イニシアティブと名付けられた慈善団体を通じて行った、2020年の大統領選挙に対する金銭的な支援にも言及した。
一方を応援するつもりはなく、選挙インフラをサポートするつもりで、中立的な立場を目指したつもりだったが、一方を他方よりも利するものになったとの声があることは承知しており、同様の選挙支援を行う計画は今後はないとの内容も書き込んでいた。
これが昨年の8月のことだ。主流派マスコミでは連日ハリスがトランプより優勢だと伝えていたその段階で、ザッカーバーグは民主党に背を向けるような、こうした声を既に上げていたのだ。
大統領選挙よりも1ヶ月以上前の9月にも、共和党の著名な戦略家のブライアン・ベイカー氏をメタ社に招き入れることをやっている。
そして選挙が終わり、今年の1月になるとザッカーバーグは、メタの渉外担当の責任者から社内左翼のニック・クレッグ氏を放逐し、共和党系で子ブッシュ政権で次席補佐官を務めたジョエル・カプラン氏を後任に任命した。さらに総合格闘技団体UFCのCEOで、トランプ氏に近いダナ・ホワイト氏をメタの取締役に起用することで、民主党色の強いメタの体質を大きく転換させる姿勢も示した。
ザッカーバーグはバイデン民主党政権のひどいやり方に、心底嫌気が差したのではないか。
有名なポッドキャスターであるジョー・ローガンの番組に今月出演したザッカーバーグは、バイデン政権のスタッフの強引な姿勢について、They pushed us super hard to take down things that were honestly were true. (正直言って正しいことを取り下げるよう、彼らは我々にスーパーハードに迫ってきた)とも述べている。Facebookのスタッフに対してscream and curse(叫び罵倒する)ことをやっていたとも語っている。こうしたバイデン政権に対する恨み節は、私はザッカーバーグの本音だと考えている。
公平性ってなんだ
ところで、「多様性」(Diversity)「公平性」(Equity)「包摂性」(Inclusion)をまとめたDEIと呼ばれる、「リベラル」が強力に推進してきたものがあるが、これも急速に崩れてきた。
一見すると、なんか良さげな雰囲気のものだが、はっきり言ってとんでもないものだ。
男性より女性、女性よりトランスジェンダーのような性的マイノリティ、白人よりヒスパニック、ヒスパニックよりも黒人やネイティブアメリカンを優先させるために作り上げられた、逆差別プログラムと呼んだ方が適切ではないか。
DEIによると、マイノリティの側で今の段階で能力が不足しているのは、社会に備わっている構造的差別のせいで、この構造的差別の影響を取り除いた人選をすることが重要だ、みたいな話になる。
そのくせ、アメリカでは明らかに圧倒的なマイノリティである、我々アジア系の人たちをどう扱っているかというと、なんとそのまま差別していいかのような扱いになるのだ。
アジア系の人たちは小さい頃からよく勉強する傾向が強いが、そういう傾向にある以上、成績に従って大学受験の合否を決めると、上位校に占めるアジア系の割合が、人口比で考えると当然高くなる。そのまま成績で合格を認めてしまうと、アジア系以外の人たちの枠を奪うかのように考えて、アジア系の合格者数を極端に抑え込むようなことまで、ずっと行われてきたのだ。
地黒のインド系の人が、インド系であると受験に不利になるから、私は黒人だ、アフリカ系だと偽ることで難関の医学部に入学できたことを、正直に告白しているなんてこともある。
こういうくだらないことを行わせてきたのがDEIだ。
実際このDEIに関連して、大学入試における逆差別が生まれているではないか、これは合衆国憲法に違反するのではないかとの訴えがあり、この件に米最高裁が「大学入試の人種優遇措置は違憲」との判断を、昨年下した。
ロサンゼルス森林大火災への批判
そしてこのDEI方針を取りやめたり規模を縮小する企業が、今続出している。
ザッカーバーグ率いるメタは当然DEI方針を取りやめたが、Amazonも多様性と包摂性に関する時代遅れの取り組みを段階的に廃止することを表明した。
米マクドナルドも、管理職に占める女性比率を45%、人種・性的少数者の比率を35%に引き上げるなどとしていた目標を撤回し、サプライヤーに求めていたDEI 誓約を廃止することを打ち出した。
ウォルマート、フォード・モーター、ハーレーダビッドソン、トヨタ自動車なども、DEIの取り組みを縮小することを表明した。
カリフォルニアで起こった大規模森林火災についても、環境が大切だ、ワカサギを守れと言って、もともと山火事多発地域であるのに、山火事が起こることに備えた十分な貯水をすることをやらなかったことが、規模を拡大してしまった大きな要因だ。
DEIを優先した人員採用を行った結果、任務を遂行できる能力・体力のある人間を採用せず、体力も経験も劣る女性消防士や性的マイノリティの人たちを積極採用し、幹部としてどんどん登用するようなことをやっていた。
DEIみたいなことにはバカみたいにお金を使う一方、肝心な人や財産を守るための防災費用はバンバン削られたのだ。
一見優等生的に見えがちな「リベラル」のヤバさに気が付かないと、カルフォルニアみたいなことになってしまう。これは教訓にしたいところだ。



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