なぜ、米トランプ政権が“長期”になると「日本の中小企業」が“危機”に陥るのか?

現代の日本
なぜ、米トランプ政権が“長期”になると「日本の中小企業」が“危機”に陥るのか? - まぐまぐニュース!
トランプ政権が新しい政策を次々と打ち出していますが、日本の中小企業に与える影響はどれほどのものなのでしょうか。今回のメルマガ『j-fashion journal』では、ファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんが、現段階の予測として、日本企業への影響の度合いとともにトランプ政権の政策内容を分かりやすく紹

なぜ、米トランプ政権が“長期”になると「日本の中小企業」が“危機”に陥るのか?

トランプ政権が新しい政策を次々と打ち出していますが、日本の中小企業に与える影響はどれほどのものなのでしょうか。今回のメルマガ『j-fashion journal』では、ファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんが、現段階の予測として、日本企業への影響の度合いとともにトランプ政権の政策内容を分かりやすく紹介しています。

トランプ政権の政策が日本の中小企業に与える長期的影響

皆さん、こんにちは。トランプ政権が次々と新たな政策を打ち出しています。その影響がどのように伝わるのか、現段階での予測について、皆さんと共有したいと思います。

1. 関税引き上げと貿易コストの増加

トランプ政権は「アメリカ第一主義」を掲げており、輸入品に対する関税引き上げを公約に含めています。例えば、全輸入品に10~20%の関税、メキシコやカナダからの輸入に25%、中国に対しては最大60%の関税が検討されています。これが実行されると、日本の中小企業、特に輸出依存度の高い製造業に影響が及びます。

日本の中小企業は、大企業に比べて海外市場へのアクセスやコスト吸収能力が限定的です。米国向け輸出品に追加関税が課されれば、価格競争力が低下し、受注減少や利益率の圧迫が予想されます。

特に、自動車部品や電子機器など、米国のサプライチェーンに組み込まれている中小企業は打撃を受けやすいでしょう。

米国市場への依存度が高い企業は、市場の多角化(例えばアジアや欧州へのシフト)を迫られる可能性があります。しかし、中小企業は資金や人材の制約から、新市場開拓に時間がかかり、適応が遅れるリスクがあります。

2. サプライチェーンの再構築とコスト増

トランプ政権の保護主義政策は、グローバルサプライチェーンの分断を加速させる可能性があります。特に、メキシコや中国を生産拠点とする企業への関税強化は、日本の中小企業にも間接的な影響を及ぼします。

日本の中小企業は、大企業の下請けとして部品供給を担うことが多く、メキシコや中国経由で米国に輸出される製品に関与している場合があります。関税引き上げにより、現地生産コストが上昇すれば、これらの企業は新たな生産拠点の検討や価格改定を余儀なくされます。

サプライチェーンの再編が進む中、中小企業は米国現地生産への移行を求められる可能性があります。しかし、海外進出のための資金力やノウハウが不足している中小企業にとっては、現地生産への転換が難しく、取引先からの発注減や契約打ち切りに繋がる恐れがあります。

3. 円安進行と輸入コストの上昇

トランプ政権の政策(関税引き上げや減税による米国経済の過熱)がドル高・円安を招くシナリオが考えられます。既に市場では円安傾向が見られ、2025年2月20日時点で1ドル=150円を超える水準が続いています。

円安は輸出企業にとって有利に働く一方、原材料やエネルギーを輸入に依存する中小企業にとってはコスト増を意味します。製造業だけでなく、サービス業や小売業でも、輸入品の価格上昇が利益を圧迫する可能性があります。

コスト増が長期化すれば、中小企業は値上げを検討せざるを得ず、国内市場での競争力低下や消費者の購買力減退による需要減少が懸念されます。また、為替変動リスクへの対応策(ヘッジなど)を導入する余裕がない企業も多く、経営の不安定化が進む可能性があります。

4. 米中対立の激化と間接的影響

トランプ政権が中国への強硬姿勢を強めれば、米中貿易摩擦がさらに激化します。日本の中小企業は、中国市場や中国からの調達に依存している場合も多いため、これが波及効果として影響します。

中国経済の減速が進めば、中国向け輸出や中国企業との取引が減少する中小企業が出てきます。また、中国からの安価な部材調達が難しくなれば、代替調達先を見つけるコストと時間がかかります。

中小企業は、中国依存からの脱却を迫られるものの、新たな調達先(東南アジアなど)の開拓にはリソースが必要です。適応できない企業は競争力を失い、市場からの退出リスクが高まるでしょう。

5. 機会とポジティブな側面

一方で、一部の予測では、日本が米中対立の「漁夫の利」を得て、米国への輸出が増える可能性も指摘されています。

ニッチな技術や高付加価値製品を持つ中小企業は、米国の国内生産回帰政策に伴う需要増を捉えられる可能性があります。特に、半導体や先端素材など、経済安全保障上重要な分野で強みを持つ企業が該当します。

こうした機会を活かすには、技術革新や米国企業とのパートナーシップ強化が必要ですが、中小企業単独では投資余力が不足しがちです。政府の支援策(補助金や海外展開支援)が鍵を握ります。

6.総合的な見通し

長期的には、トランプ政権の政策は日本の中小企業にとってリスクの方が大きいと見られます。特に、関税引き上げによるコスト増、サプライチェーンの混乱、米中対立の波及効果は、資金力や柔軟性に乏しい中小企業にとって深刻です。一方で、米国市場での新たな需要や円安による輸出メリットを活かせる企業は限られ、大半の中小企業は適応に苦しむ可能性が高いです。

7.中小企業が取るべき対策

(1)市場の多角化: 米国依存を減らし、アジアや欧州市場への展開を模索する。

(2)コスト管理: 為替リスクヘッジや省エネ技術導入でコスト増を抑える。

(3)政府支援の活用: 輸出支援や技術開発補助金を積極的に利用する。

(4)協業強化: 大企業や他中小企業との連携で、リスク分散とリソース共有を図る。

結論として、トランプ政権の政策は中小企業に厳しい環境をもたらす可能性が高いものの、適応力と支援次第で影響を軽減し、機会を掴む道もあると言えます。

常に、現状と将来予測を行い、今後の政策の具体化を見極めることが重要です。

■編集後記「締めの都々逸」

「強いリーダー 米国優先 へなちょこ日本が割を食う」

結局、日本の中小企業は、国内市場でしっかりと商売することが大切なんでしょうね。グローバルサプライチェーンの下請けではなく、最終製品を作り、国内市場で販売する。その製品が、海外でも売れるなら、まずインバウンドに売る。国内にしっかりと軸足を置くことが大切だと思います。(坂口昌章)

スポンサーリンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました