なぜ日本が不利?「日米地位協定」知られてこなかった問題点と運用の根拠とは

現代の日本

「対米従属からの脱却」は日本の課題であり、可能性であり、世界からの期待でもあると思います。
しかし、明文化された条約や協定によって「対米従属の状況」は現実の中で実体化しています。

明治維新後の日本もこのような数々の「不平等条約」を当時の「欧州列強」との間で結んでいましたが、一つ一つ解決してきた歴史があります。
現在は「世界のパワーバランスの変化」「パラダイムシフト」の時代であり、日本が本来の主権国家として立ち直る絶好の機会であるように思います。

今回はこのような内容記事の紹介です。

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なぜ日本が不利?「日米地位協定」知られてこなかった問題点と運用の根拠とは
沖縄慰霊の日にあたる6月23日は、「日米地位協定」の発効日でもある。今年、本土復帰50年を迎えた沖縄には、約5万人の米軍関係者が駐留する。彼らには、日本のいくつもの法律が適用されない取り決めがある。それが日米地位協定だ。基地周辺の住民に及ぼす影響は大きいこの協定は、約62年、一度も改定されていない。2004年には背景に「合意議事録」という"密約"があったことも明らかになった。一般に知られてこなかった協定の問題点を、グラフィックで解説する。

沖縄慰霊の日にあたる6月23日は、「日米地位協定」の発効日でもある。今年、本土復帰50年を迎えた沖縄には、約5万人の米軍関係者が駐留する。彼らには、日本のいくつもの法律が適用されない取り決めがある。それが日米地位協定だ。基地周辺の住民に及ぼす影響が大きいこの協定は、約62年、一度も改定されていない。2004年には背景に「合意議事録」という”密約”があったことも明らかになった。一般に知られてこなかった協定の問題点を、グラフィックで解説する。(Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部/企画:森健/監修:琉球大学准教授・山本章子)

優遇される米軍関係者の地位

図解

日米地位協定では、公務中の米軍関係者が刑事犯罪を起こした場合、米国の軍法裁判で裁かれると規定している。日本の捜査機関や司法が扱えるのは、米軍が身柄引き渡しを認めた場合に限る。

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米兵は出入国管理法から除外され、米軍基地経由で日本にパスポートなし・検疫不要で入国できるとしている。そのために、沖縄県では米軍関係者からコロナ感染が広まったとされる。

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米軍機は日本の空港への事前通告なしでの使用が事実上認められ、民間機よりも優先的な空港使用が認められている。米軍機が民間空港に着陸した回数は2021年で314回にのぼり、民間機が空港に降りられない問題も起きている。

日米地位協定の歴史

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日米地位協定は、1960年に当時の岸信介内閣により締結された、全28条の協定だ。日米安全保障条約(日米安保)の改定時に、それまであった日米行政協定(1952年調印)が改定されて作られた。基本的には、駐留米軍の地位や、自由な行動を保障する内容となっている。公務中の事件・事故は米国側に第一次裁判権があるため、過去には軍関係者が犯罪を起こした場合に基地に逃げ込んでしまい、日本の捜査機関が捜査や刑事訴追ができないなどの問題が起きてきた。

琉球大学准教授の山本章子氏は、成立の経緯について下記のように補足する。

山本章子氏山本章子氏1952年の日米行政協定について、当時の吉田茂首相は国会審議や承認を経ず、日米の外務当局者の交渉だけで成立させました。明らかに不平等な内容で、国内での反対は自明だったからです。その後、日米行政協定への不満が高まり、国内で全面改定が要求されてできたのが日米地位協定です。

プロフィール

山本章子(やまもと・あきこ)/琉球大学 准教授
1979年北海道生まれ。一橋大学法学部卒業、同大学院法学研究科修了課程修了。編集者を経て2015年に一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。2020年から現職。専攻は国際政治史。

米軍基地の7割が集中する沖縄県では、これまでに米軍関係者によるさまざまな事件が発生し、その影響は日米地位協定をめぐる動きにも及んだ。

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1995年の少女暴行事件後、日米合同委員会は17条の「運用改善」に合意。殺人や性的暴行など重大事件に限り、日本側が起訴前の米兵の身柄引き渡しを要請した際に米軍側が「好意的配慮」を払うとした。また、米軍基地に由来する環境汚染事故を受けて、2015年には調査のための日本側の基地立ち入りを限定的に認める「環境補足協定」、2017年には軍属(軍人ではない、米軍関連の仕事に就いている米国人)の範囲を見直し、地位協定の対象を絞り込む目的の「軍属補足協定」なども結ばれた。

沖縄県は1995年(大田昌秀知事)、2000年(稲嶺恵一知事)、2017年(翁長雄志知事)に地位協定自体の見直しを要請してきた。しかし、地位協定そのものはこれまでに一度も改定されず、強制力を伴わない実務的な「運用改善」や「補足協定」での対応が重ねられてきた。山本氏は本質的な改善に至っていない点を指摘する。

山本章子氏山本章子氏「運用改善」は、米軍の努力義務で強制力がありません。1995年の合意後も「好意的配慮」はなかなか行われず、身柄引き渡しは実現しない期間が続きました。日本政府が度重なる要請をした結果、身柄引き渡しが行われるようになりました。一方で2017年の軍属補足協定も、本来は軍属の人数を減らすのが目的でしたが、締結後に逆に増えている現状があります。

沖縄の問題だけではない、日米地位協定に残された課題

日米地位協定が抱える問題は沖縄県だけにとどまらず、基地周辺で多くの課題を残している。

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日米地位協定の3条は、米軍は訓練などの運用を必要に応じてできると規定している。飛行訓練などは夜10時以降しないと1996年の騒音規制の運用改善で取り決めがなされた。だが、実際には現在もその時間を超えて活動している。

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4条により、米軍には基地返還時の原状回復義務がなく、土壌が汚染された場合も補償する必要がない。そのために、米軍基地周辺からは泡消火剤などに含まれる発がんが疑われる有機フッ素化合物「PFOS」などの有害物質が検出されており、汚染土壌から地下水を通じて公園の湧き水でも検出されている。

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18条により、米軍関係者による事件・事故で、被害者が加害者側に民事請求した場合、日本政府が一部負担で補償金を払うことになっているが、米軍が責任を認めないと進まない。このため1996年に「SACO(日米特別行動委員会)見舞金」の制度が設けられた。これにより日本政府の判断のみで補償が可能になったが、補償金は十分ではなく、手続きも煩雑で被害者の負担は大きい。

日本は常に”有事”? 駐留米軍の運用、他国との比較

地位協定は、他国軍の駐留を受け入れる場合に、その駐留についての法的な地位を定めるためのもので、米軍を受け入れてきた国には日本のほかドイツ、イタリア、韓国などがある。だが、ドイツやイタリアでは、NATO(北大西洋条約機構)軍地位協定における、国別の補足協定の改定を実現している。

その結果、有事の際はNATO軍地位協定が優先されるが、平時においては、ドイツでは米軍の訓練にドイツ側の許可や承認を得ることが必要になり、イタリアでは同様にイタリアの司令官に事前通告と承認を得ることが必要になった。また、米軍機の事故ではドイツ軍やイタリア軍が主体的に調査できるようになるなど改定された。

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山本章子氏山本章子氏ドイツ・イタリアと比較して、日本は平時と有事の区別がなく、いかなるときも有事を想定した訓練に使える点が問題。そのために、夜間でも有事を想定した戦闘機などの離発着訓練も可能になっているのです。

なぜこうなった?

実は日米地位協定の条文には、あまり具体的なことは書かれていない。長年明らかにされてこなかった「合意議事録」の存在が大きく、この文書のなかに書かれていた”密約”が、今まで起きてきた問題の大半を占めている。

Q.日米地位協定合意議事録とは?

山本章子氏山本章子氏日米地位協定合意議事録(以下、合意議事録)は、日米安保改定の際、日米両政府の担当者が日米地位協定とは別に作成し、2004年まで非公開でした。合意議事録という形式は、交渉担当者が後任に引き継ぐ「備忘録」でしかありません。にもかかわらず、地位協定本文よりも重視されてきました。例えば、日米地位協定では刑事裁判権について、基地の外で起こった事件・事故の捜査は日本との取り決めに従う、とあります。しかし合意議事録では、日本の警察が捜査できない内容となっており、こちらが重視されてきました。国家の主権にかかわる問題が起きています。

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Q.具体的に、何が問題なのか?

山本章子氏山本章子氏日米地位協定は民主主義的な決議を経ておらず、国会で議論せずに運用が決められています。そもそも、日米行政協定の改定は占領期における米軍の地位の特権をなくすことが目的でした。なのに、実際には合意議事録という形で特権が維持され、改定の趣旨を台無しにしていることも問題です。

Q.解決するにはどうすればいいのか?

山本章子氏山本章子氏合意議事録は法的には日米両国間の行政的な取り決めですが、国会の審議を経ていないがゆえに、本来は廃止する場合も日米両国の合意があれば廃止できる存在です。問題は、政府にその意思があるかどうか。日本が米国に改定を要求してこなかったのは、米軍にとって不利な運用を要求すると、日本から撤退されるかもしれないという懸念があるのでしょう。「米軍がいれば国の安全が守られる」という日米安保に依存した安全保障政策の影響が、このような形で表れているといえます。安全保障上、日米安保は重要でしょう。ただ、それを維持するのと地位協定や合意議事録をそのままにするのは同じではないはずです。地位協定がどうあるべきか、国民的な議論が必要ではないでしょうか。

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