バイデン大統領次男の醜聞が再燃…トランプによる「51人へ復讐」ののろしが上がった!

現代の米国
バイデン大統領次男の醜聞が再燃…トランプによる「51人へ復讐」ののろしが上がった!(塩原 俊彦) @gendai_biz
アメリカにはいま、ドナルド・トランプ次期大統領の誕生によって、復讐されるのではないかと恐れている人が大勢いる。そこで、トランプがやり玉に挙げている51人について紹介しよう。トランプは6月9日にラスベガスで行われた選挙集会で、つぎのように発言した。

バイデン大統領次男の醜聞が再燃…トランプによる「51人へ復讐」ののろしが上がった!

激怒

アメリカにはいま、ドナルド・トランプ次期大統領の誕生によって、復讐されるのではないかと恐れている人が大勢いる。そこで、トランプがやり玉に挙げている51人について紹介しよう。

トランプは6月9日にラスベガスで行われた選挙集会で、つぎのように発言した。

「51人のインテリジェント・エージェントは、ラップトップはロシアからのものだと言った。彼らは自分たちがしたことに対して訴追されるべきだ」

この発言は、ビデオ(下を参照)にアクセスすれば、26分過ぎのところで容易に確認できる。どうやら、トランプはこの51人について激怒しているらしい。

2024年6月に開催されたラスベガスでの選挙集会

(出所)https://www.c-span.org/video/?536150-1/president-trump-holds-rally-las-vegas

すべては「ニューヨーク・ポスト」のスクープからはじまった

なぜトランプが怒り心頭なのかを説明しよう。この顚末(てんまつ)を知れば、2020年11月の大統領選が「盗まれた」と、トランプが言いつづけてきた理由がわかる。私自身も、これから説明する内容を知って、たしかに選挙は盗まれていたと確信している。

ことの発端は、2020年10月14日付の「ニューヨーク・ポスト」(NYポスト)が報じたスクープ(下の写真)であった。バイデン大統領の次男であるハンターが、誤ってバイデンの地元デラウェア州ウィルミントンのコンピューター修理工場に置き忘れたシルバーのアップル製MacBook Proというノートパソコンが出どころである。コンピューターとハードディスクは2019年12月にFBIによって押収されたが、ハードディスクを引き渡す前にコピーを取り、後にルドルフ・W・ジュリアーニ元市長の弁護士ロバート・コステロに渡したと店主はいう。

このコピーにある電子メールによると、ハンターは、父ジョーがウクライナの政府高官に圧力をかけ、同社を調査していた検察官を解雇させる1年も前に、父親ジョー・バイデン副大統領(当時)をウクライナのガス会社(ブリスマ)の幹部に紹介していた。「この会談は、ハンターが最高月給5万ドルでブリスマの取締役に就任した約1年後の2015年4月17日、ブリスマの取締役会顧問であるヴァディム・ポジャルスキーがハンターに送ったとされる感謝のメッセージのなかで言及されている」という。

「明らかになった:ウクライナの重役、ハンター・バイデン 副大統領の父に「会う機会」を感謝する」という「ニューヨークタイムズ・ポスト」のスクープ

(出所)https://nypost.com/2020/10/14/email-reveals-how-hunter-biden-introduced-ukrainian-biz-man-to-dad/

火消しに回った「民主党支持母体」

2020年11月の大統領選を目前に控えた時期における、バイデン父子の「腐敗」を暴く内容の不祥事は、選挙結果に重大な影響をおよぼすはずだった。しかし、実際には、そうならなかった。なぜか。民主党支持者が猛烈な火消しに走ったからである。

その手始めとして、10月19日に、51人の元情報当局者(トランプのいう「インテリジェント・エージェント」)が、声明を発表し、このメールに疑義を唱えたのである。そこには、「バイデン副大統領の息子であるハンターのものとされる電子メールが米国の政治舞台に登場したこと、その多くが、彼がウクライナのガス会社ブリスマの取締役を務めていたことに関連するものであったことは、ロシアの情報操作の典型的な兆候をすべて示している」と書かれている。要するに、NYポストの記事を否定する内容が盛り込まれていた。

ジム・クラッパー元国家情報長官、マイク・ヘイデン元国家安全保障局長官・中央情報局(CIA)長官、レオン・パネッタ元CIA長官・元国防長官、ジョン・ブレナン元中央情報局(CIA)長官などを含む超大物が署名した声明を公表して、このスクープの拡散を阻止する圧力が露骨にかけられたのである。

Photo by gettyimages

この声明を機に、「ニューヨーク・タイムズ」「ワシントン・ポスト」などの民主党贔屓(びいき)の主要メディアは、「NYポスト」のスクープを出鱈目(でたらめ)と言い募り、鎮静化に努めた。

それだけではない。フェイスブック(現「メタ」)とツイッター(現「X」)は、「NYポスト」紙の記事へのリンクの配信を制限し、共有する前にファクトチェッカーが主張を検証する必要があるとした。しかし、後に、こうしたSNSの対応が連邦捜査局(FBI)の圧力ではかられた拡散防止策であったことがわかった。その事実について、2022 年8 月、メタの最高経営責任者マーク・ザッカーバーグは、ジョー・ローガンのポッドキャストでインタビューに応じ、フェイスブックが2020 年の選挙中にバイデンの息子(ハンター)に関する記事を制限したのは、FBI の「誤報警告」に基づくものだったと語っている。

おそらく、バイデン父子の腐敗疑惑がもっと多くの国民の目にさらされていれば、バイデン勝利はなかったであろう。民主党贔屓の偏った報道だけでなく、当時、トランプ政権でありながら、民主党の大統領候補ジョー・バイデンを推す勢力がFBIの権力を用いて、まったく不当な圧力をかけた結果、トランプは敗れたのである。だからこそ、トランプは「盗まれた選挙」と言いつづけてきたのだ。

本物だったラップトップ情報

まず、ラップトップ情報が本物であったことを確認しなければならない。今年6月5日午前10時半ころ、ここで紹介した、シルバーのアップル社製MacBook Proが、プラスチックカバーに包まれて裁判所に登場した。2018年に薬物使用を公表せず銃器申請で嘘をついた罪で起訴された大統領の次男、ハンター・バイデンに対する連邦検察の裁判で、連邦検察官デレク・ハインズがデラウェア州の陪審員の前でノートパソコンを掲げたのである。

この裁判で、FBI捜査官は、そのノートパソコン内のメッセージや写真、ハンターがクラウドコンピューティング・サーバーに保存していた個人データから、薬物使用が明らかになったと証言した。そして、6月11日、陪審員はハンターを三つの重罪で有罪とした。

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これが意味しているのは、問題のノートパソコン情報の信憑性(しんぴょうせい)である。6月6日付の「NYポスト」の社説には、「2020年の選挙前夜、主要報道機関はほぼ例外なく、ハンター・バイデンの証拠となるノートパソコンに関する『NYポスト』紙の有名なスクープを『ロシアのディスインフォメーション(騙す意図をもった不正確な情報)』として否定した」との記述がある。さらに、「しかし、ジョー・バイデン自身の司法省がハンターの銃裁判の証拠としてノートパソコンを提出した今、報道各社はまるで否定していなかったかのように、この話を簡単に取り上げている」として、激怒している。

少し時間が経過した6月11日付のNYTは、つぎのように、何とも歯切れの悪い記事を書いている。

「多くの国内報道機関が、ノートパソコンの存在とその内容に関する主張に疑問を呈し、主要なソーシャルメディア・プラットフォームは『NYポスト』紙の報道に関する投稿を制限した。保守派は、これらの反応はリベラル派の検閲の証拠だとのべた。ノートパソコンの報道で『NYポスト』紙が主張したことの多くは、バイデン大統領と汚職的なビジネス取引との関連性を追求したもので、証明はされていない。しかし、ノートパソコンにはハンター・バイデンを悩ませ続けるに十分な証拠があった」

どうやら今年6月になっても、NYTやWPが2020年10月以降に行った報道に対して、何ら反省しているようにはみえない。たとえば、WPが「ワシントン・ポスト紙は『ポータブル・ドライブ上のデータの一部は本物のようだ』と判断することができた」と報道したのは2022年3月30日になってからにすぎない。「NYポスト」が激怒するのも当然だろう。

51人の不誠実

もちろん、声明に署名した51人は、当然、大きな責任を負っている。この人たちは、おそらく根拠のないままに、「NYポスト」のスクープの火消しに協力したのではないか。なぜなら、パソコンのデータには、「身元不明の女性と性行為をしながらクラックを吸っているように見える12分間の淫(みだ)らなビデオや、その他多数の性的画像が含まれていた」からである。こんな内容までロシアが捏造したというのは、「嘘」以外の何ものでもない。その凄まじさを知りたければ、2023年10月になって公表された「デーリー・メール」のスクープを観てほしい。ハンターの獣のような醜態がよくわかる。

おそらく51人は、米国で「エスタブリッシュメント」と呼ばれる既得権益層は自分たちの既得権を守るために、大した根拠もなく声明を出し、「NYポスト」のスクープの火消しに手を貸した。だからこそ、トランプは怒り、復讐をしようとしていることになる。

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すでに、下院では、2023年1月10日、221対211の投票で、下院決議12号「司法委員会の特別調査小委員会として連邦政府の兵器化に関する特別小委員会を設置する」が可決された。そして同小委員会が「NYポスト」の記事の「信用を失墜させる」努力調査を開始している。

WPが今年11月14日付で報じたところでは、声明に署名したジョン・ブレナン元CIA長官は、「トランプはたしかに敵に対して報復を求めるだろうが、私は海外に脱出するつもりはない」という。しかし、「匿名を条件に取材に応じた別の署名者は、捜査が何ら進展しないとしても、懸念は捜査そのものにあるとして、欧州の国で市民権を申請している」との記述もある。

私的復讐の禁止

拙著『復讐としてのウクライナ戦争』(下の写真)のなかで、私は復讐・報復・制裁について考察したことがある。人はなぜ復讐という感情をもち、それを制御するための制度をどのように整備してきたかについても分析したものである。そんな私からみると、トランプの復讐心は理解できるものの、近代化の過程で、私的復讐が禁止されてきたことを考えると、どうにもやりきれない気持ちになる。

問題は、公的権力者やそうした立場にかつてあった者がディスインフォメーションを垂れ流し、民主主義の根幹を揺さぶっているにもかかわらず、非難さえしないという主要マスメディアとエスタブリッシュメントの間の共謀関係にある。トランプの復讐がエスタブリッシュメントへの攻撃にある以上、このアメリカの権力構造そのものを変革する必要があることを示している。この問題の根っこは深く、深刻なのである。

(出所)復讐としてのウクライナ戦争
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