
JOG(1482) 皇位継承の基本的知識・見識を学ぼう ~ 読売新聞社説を「反面教材」として
国柄探訪: 皇位継承の基本的知識・見識を学ぼう ~ 読売新聞社説を「反面教材」として
読売新聞社説は「読売らしく」ない事実隠し・詭弁・強弁のオンパレードで、皇位継承の知識見識を学ぶための最適な「反面教材」
■1.読売社説のユニークさ
伊勢: 皇室典範改正が成立したね。衆議院通過は7月10日、「中道」も賛成し、97%の議員が賛成したそうだ。7月17日、参議院では賛成が76%ほどだった。衆参合わせて議員数では、およそ9割が賛成したことになる。
花子: 9割なら、ほとんどの国会議員が賛成したということですね。どんな内容なんですか?
伊勢: 改正法成立に関して、各社が社説を掲載している。その中で一番驚いたのは、読売新聞の7月18日付け社説「皇室典範改正 象徴天皇制の根幹を傷つけた」だ。読売新聞は新聞最大手として中道的良識的な立場と考えていたが、どうも皇位継承に関しては異質な姿勢を示している。読売社説はこう書いている。
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旧宮家から養子を迎える制度は、皇位継承をむしろ不安定化させる恐れがある。改正皇室典範は、養子の子の皇位継承資格について「実方(実家)の系統による」という一文を唐突に明記した。
旧宮家は既に一般家庭であるにもかかわらず、改正典範では「実方の系統」との表記を用いて、事実上皇族扱いしていることも、強い違和感を禁じ得ない。
今の旧宮家は現在の皇室の系統とは600年前の室町時代に分かれ、80年前に一般人となった。しかも、皇籍を離れた当時の男系男子は今の天皇陛下とは36~38親等離れているという。[読売]
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花子: 「一般家庭なのに皇族扱い」とか「600年前に分かれた系統」って言われると、確かに唐突に聞こえますね。
伊勢: 実は、この記事には伏せられている重要な史実がいくつもあって、それらをしっかり理解することが、皇位継承を論ずる上で不可欠なんだ。

■2.「旧宮家から養子を迎える制度は、皇位継承をむしろ不安定化させる恐れがある」?
伊勢: まず、「旧宮家から養子を迎える制度は、皇位継承をむしろ不安定化させる恐れがある」という一文自体が、歴史事実の正反対を述べている。「宮家や傍系から養子を迎える制度」は皇統を安定させる手段として、歴史上、4度も成功してきた実績がある。そもそも、現在の皇室も、この制度により養子とされた方の直系子孫なんだよ。
花子: え、そうなんですか?
伊勢: 明治維新の100年ほど前、江戸時代中期の第118代・後桃園天皇が22歳で御在位のまま崩御された。皇女として欣子(よしこ)内親王が遺されたが、女性天皇にはならず、閑院宮家(かんいんのみやけ)の第6皇子で9歳の師仁親王(もろひと・しんのう)が急遽、後桃園天皇の養子として迎え入れられ、即位された。これが光格天皇だ。そして欣子内親王を皇后とされている。
花子: その閑院宮家というのはどういう家だったんですか?
伊勢: 閑院宮家とは徳川幕府の儒学者・新井白石が皇統の断絶を危惧して、第113代・東山天皇の皇子である直仁(なおひと)親王を始祖として創設された宮家だ。その約70年後に、実際に閑院宮家から光格天皇が養子として迎えられて皇統の危機を救ったことで、新井白石の慧眼が実証された。
この光格天皇の直系として仁孝天皇、孝明天皇、明治天皇から今上陛下まで続いている。[JOG(1113)]
花子: つまり、今の天皇陛下も、もとをたどれば養子縁組で皇位を継いだ方の子孫なんですね。
伊勢: その通りだ。このような例は史上、この光格天皇を含めて、4度あった。百地章・国士舘大学名誉教授は次のように説明されている。
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男系の皇統断絶の危機も四回ありました。第二十五代武烈天皇から第二十六代継体天皇までは十親等(応神天皇まで二百年遡る)、第四十八代称徳天皇から第四十九代光仁天皇までは八親等(舒明天皇まで一三〇年遡る)、第一〇一代称光天皇から第一〇二代後花園天皇までも八親等(北朝の光厳天皇まで百年遡る)、
江戸末期の第一一八代後桃園天皇から第一一九代光格天皇までは七親等、東山天皇まで七十年遡る)と開きがありましたが、遠く離れた傍系の男系男子によって皇位継承が行われました。そして、先人たちの血の滲むような努力により、皇統断絶の危機を回避することができました。[百地、p14]
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伊勢: この歴史を見れば、宮家とは皇統断絶の危機の際に、男系の養子を出すことが主な務めであることが分かる。「旧宮家から養子を迎える制度は、皇位継承をむしろ不安定化させる恐れがある」というのは、まさに史実と正反対の意見だね。
■3.「600年前の室町時代に分かれ」?
伊勢: こうした例から皇位継承の大原則は「男系」ということであって、かならずしも「直系」ではないことが分かる。「男系」の系統を守るために宮家が創設され、いざという時にそこから養子を迎えるというのが、万世一系の皇統を守ってきた先人たちの叡知だ。
花子: では、読売新聞の「600年前に分かれた系統はだめ」という主張は、その叡知と矛盾するんですか?
伊勢: そうだね。「現在の皇室の系統とは600年前の室町時代に分かれた系統はだめで、光格天皇の70年ほど前に分かれた系統なら良い」というのは、どこでどんな理由で線引きしているのだろうか?
しかも、「今の旧宮家は現在の皇室の系統とは600年前の室町時代に分かれ」と言うこと自体が、現皇室と旧宮家の婚姻上の繋がりを隠した言い分だ。
明治天皇の4方の皇女は旧宮家に嫁がれている。竹田宮家、北白川宮家、朝香宮家、東久邇宮家だ。東久邇宮家へは昭和天皇の第一皇女である照宮成子(てるのみや・しげこ)内親王が盛厚王と結婚された。昭和天皇の皇后である香淳皇后ご自身も、旧宮家の一つである久邇宮家のご出身だ。こうした婚姻を通じて旧宮家は現在の皇室と非常に近い関係にある。
花子: そんなに婚姻で繋がっているのに、それを隠して、「600年前に分かれた」なんて言うのは、おかしいですね。
伊勢: そうだ。これも宮家が皇統のバックアップとして、直系との血縁の近さを維持する一つの叡知だった。
養子として即位された光格天皇も、先帝の皇女である欣子内親王を皇后として迎えられている。現代で言えば、旧宮家の男系男子が愛子内親王と結婚されて、そこでお生まれになった親王が皇位継承権を持つというのは、皇室の歴史から見れば当然のケースとなる。
■4.「旧宮家は既に一般家庭」?
伊勢: さらに読売社説は「旧宮家は既に一般家庭であるにもかかわらず」というのも、史実を見ればおかしな指摘だ。旧宮家の方々は正統な男系であり、かつ現行憲法下でも皇族だった。皇籍から離れられたのは、占領軍の圧力によるもので、日本国民の意思ではない。占領軍の魂胆は「皇室の弱体化」にあり、その結果が現在の皇位継承の危機となっている。
花子: つまり、旧宮家を一般人扱いにするのは、「皇室の弱体化」を図った占領軍の意向を踏襲することなんですね。
伊勢: まさにその通りだね。しかも皇室の歴史では、一度、一般人となられた方が、皇籍に戻られて、即位された前例もあるんだ。第59代宇多天皇は、一度臣籍降下して「源定省(みなもとのさだみ)」となった後、先代の光孝天皇の崩御間際に皇族に復帰し、親王を経て即位された。
そのお子様、第60代醍醐天皇は、宇多天皇が臣籍の時にお生まれになった方で、臣籍でお生まれになっても男系でさえあれば、いざという時に即位されることもありうる、という先例がある。
こうした事情を一切隠した上で、読売社説は旧皇族を「一般人」と決めつけて、こう指摘している。
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今の皇室に代わり、一般人から皇族となる養子の子孫が新たな天皇として別系統を作れば国民が目にする皇室の風景は一変しよう。それで理解を得られるのか。[読売]
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花子: 「一般人が新たな別系統を作る」という言い方は、なんだか旧宮家の方々をまるで皇室とは無関係の赤の他人みたいに扱っているように聞こえますね。
伊勢: それが私には、詭弁・強弁に聞こえるんだ。
■5.「女系天皇も排除しない皇位継承策を」
伊勢: そして読売社説はその後、こう述べている。
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国会と政府は女性宮家創設と、女性・女系天皇も排除しない皇位継承策を議論しなければならない。[読売]
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花子: 読売新聞は女系天皇も認めるべきだと主張しているんですね。
伊勢: そうなんだ。ところが面白いことに、この女系天皇の主張は、読売社説自身の論法でこう論破することができる。
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今の皇室に代わり、一般人から(女性宮家の配偶者として)皇族となる人間の子孫が新たな天皇として別系統を作れば国民が目にする皇室の風景は一変しよう。それで理解を得られるのか。
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花子: あっ、読売新聞が旧宮家の養子説を批判するのに使った論理が、そのまま女系天皇にも当てはまってしまうんですね。
伊勢: まさにそうだ。皇室の血筋を引いていない男性は、旧宮家とは違って、正真正銘の「一般人」だ。その「一般人」の子は、母親が皇室の血筋を引いていても、男女に関係なく女系となる。そして、女系が皇位を継承した例は、126代の皇位継承の歴史で一回もない。それこそ真の「別系統」だ。皇室の長い歴史でも先例のない女系天皇、「それで理解を得られるのか」と返したいね。
花子: 読売新聞は旧宮家を「別系統」と批判しながら、自分たちが主張する女系天皇こそ本当の「別系統」になってしまうということですね。
伊勢: そういうことだ。見事なブーメランだろう。
■6.女性皇族が「鈴木さん」という一般人と結婚して、その子が皇位に就いたら、「鈴木王朝」の始まり
伊勢: 百地教授は、イギリスの王室が千年近い歴史を持つといいながら、その中では、女系の継承者が現れる都度、王朝の交替が起こり、結局、11もの異なる王朝が登場していることを示している。
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たとえば、ヨーク朝の最後は女性のエリザベスでしたが、その女性とチューダー家の男子ヘンリー七世が結婚し、「チューダー朝」が始まりました。次に、チューダー朝の最後の女性、メアリーがスチュアート家のヘンリーと結婚するとスチュアート朝が始まりました。
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なお、イギリスの王朝名の変遷からもわかるとおり、世界の王朝の名称は、ヨーロッパ、中東、アジアのいずれを見ても初代国王(男子)の姓に由来しています(皇室にはそもそも姓はありませんが)。そして、イギリスやスペインなどは別として、ほぼ例外なく男系継承が行われてきました。それ故、これは「男女平等」などとは全く無関係なことがわかります。[百地、p19]
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花子: イギリスって千年近い歴史があるのに、王朝が11回も変わっていたんですね。それは知りませんでした。
伊勢: そうだ。女系継承が起きるたびに、父親の姓が王朝名になるから、王朝がその都度変わってしまうんだ。万世一系の日本の皇室には姓はない。しかし、女性皇族が一般人男性の「鈴木さん」と結婚して、その子が女系として皇位を継いだら、そこから「鈴木王朝」が始まってしまう。
花子: それこそ本当の意味での「別系統」ですね。
伊勢: まさにそうだね。女系天皇を認めることは、男女平等の問題などではなく、王朝の交替、つまり皇統の断絶を意味する。それが歴史上、一度たりともなかったことが、日本の皇室の本質なんだよ。
■7.国会議員の9割が賛成した法案に「分断招く議論を避けよ」
伊勢: さらに読売社説は、結びでこう指摘している。
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(小見出しとして)分断招く議論を避けよ
養子制度を巡って世論は分かれている。与野党は「静謐な環境」での議論が必要との共通認識を持っていたはずなのに実際は、拙速な議論で衆参両院とも質疑を1日で終わらせた。 [読売]
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花子: 「分断招く議論を避けよ」という見出しは、なんだか改正に賛成した9割の議員の方が分断を招いているように聞こえますね。
伊勢: そこが問題だ。しかも「質疑を1日で終わらせた」というが、現在の皇室典範改正の議論は、平成29(2017)年に国会の決議として「安定的な皇位継承を確保するための諸課題を速やかに検討するよう」政府に求めたところから始まっている。10年来の議論があるのに、またそれを隠して、「衆参両院とも質疑を1日で終わらせた」と強弁する。
花子: 10年間も議論してきたのに、「拙速」と言うのはおかしいですね。
伊勢: まさに詭弁だね。国民の代表たる国会が決めたことは、国民は従う、それが議会制民主主義の原則だ。それをも無視して、読売社説はこう主張する。
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旧宮家から養子を取る制度は白紙に戻して再検討すべきだ。
国会と政府は女性宮家創設と、女性・女系天皇も排除しない皇位継承策を議論しなければならない。[読売]
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花子: 議員の9割が賛成した法案を「白紙に戻せ」というのは、ずいぶん強引な主張ですね。
伊勢: 何様のつもりなんだろう、と言いたくなる。しかも、これほど事実隠しと強弁・詭弁のオンパレードの言い分でね。読売社説こそ「分断招く議論を避けよ」とお返ししたい。
常日頃、良識的な報道や言論を展開している読売新聞が、こと皇位継承に関しては、突然変異してしまったように感じた。自民党の中にも、2名ほど今回の採決に欠席した議員もいたが、同様に読売新聞社の中にも、読売らしくない強弁・詭弁・史実隠しまでして「象徴天皇制の根幹を傷つけたい」人々が巣くっているのかも。
いずれにしろ、この社説は、相当な史実隠しに基づく強弁・詭弁のオンパレードで、一般国民が今回の皇室典範改正の本質を知るには最高の「反面教材」だったね。



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