JOG(1479) 「楽しい! 明日もやりたい!」と言われる歴史の授業

日本の文化
JOG(1479) 「楽しい! 明日もやりたい!」と言われる歴史の授業
子供たちに「日本という共同体の一員である」という自覚が生まれ、自己肯定感が向上し、その成長が喜びとなる。 ■転送歓迎■ R08.07.05 ■ 85,015 Copies ■ 9,512,139Views■ 過去号閲覧: 無料受講申込み: __________ 東京会場またはオンラインにて、齋藤武夫先生による解説を交えた実際の授業をご受講いただ…

JOG(1479) 「楽しい! 明日もやりたい!」と言われる歴史の授業

子供たちに「日本という共同体の一員である」という自覚が生まれ、自己肯定感が向上し、その成長が喜びとなる。

■1.好きな教科のトップに「歴史」!?

伊勢: 花子ちゃん、小学校で一番人気のある科目は何だと思う?

花子: それはやはり体育では? 皆でドッジボールをしたりすると楽しいですから。図画工作も好きな子は多いかも。

伊勢: そう、たいていは体育が一番人気なんだけど、実は「歴史」がトップになる学校が、次々と出ているんだ。

花子: えっ、歴史の授業が一番好きな教科? なんか信じられないです。歴史って暗記ばかりでつまらない、というイメージしかありませんけど。

伊勢: そう思うよね。でも実際に結果が出ているんだ。これは齋藤武夫先生という、主に小学校で教えられていた先生が20年かけて開発した歴史授業なんだ。それを実践した兵庫県の小学校では、卒業アルバムのアンケートで「好きな教科ランキング」の1位に歴史がなったんだよ。

花子: 体育とか図工を抜いて、歴史が1位なんですか?

伊勢: そうなんだ。千葉県の小学校でも同じようなことが起きていて、それまでずっと1位だった体育を抜いて歴史が1位になったという報告があるんだ。

 これは齋藤武夫先生という、主に小学校で教えられていた先生が、20年もかけて開発してきた歴史授業で、今、それを自分の学校で実践している先生方が、全国で数百人いるという。提出されたレポートでは、齋藤先生は「ほぼ私と同じ成果が出る」ということを確認されている。

花子: えーっ。そんな授業があるなら、私も小学校時代に受けたかったです。

伊勢: 齋藤先生の授業は、YouTube「国の宝を育てる授業」で、『日本が好きになる! 歴史全授業』シリーズとして、順次、公開していく。その冒頭に、齋藤先生が直接、この授業の狙いや内容を説明されている。以後、各地でこの授業を実践している現役の先生方が、交替で授業1時間分を15分程度で解説していく。
__________
「楽しい! 明日もやりたい!」と言われる歴史の授業・・・全授業の解説動画が始まります。」齋藤武夫
https://youtu.be/zEVw-qb793I (一般公開中、誰でもご覧になれます)[齋藤]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

■2.「皆さんがこの1400年前の大和朝廷のリーダーだったら」

伊勢: なぜ、子供たちが「楽しい! 明日もやりたい!」と言うのか、その授業の一端を、「仏教を入れるかどうか」という問題を例に挙げて、齋藤先生はこんなふうに紹介している。わずか17分の動画だから、花子ちゃんにもぜひ見てほしい。
__________
例えば、昔、仏教が朝鮮半島から入ってきた時に、日本には日本の神様がいて、みんなその日本の神様にお世話になってたわけですね。で、仏教が来たと。

蘇我さんはこれを拝もうという、物部さんはいや日本の神様を今まで通り大事にしようという大論争が日本初期に出てきますが、子供に何が問題になってるかっていうのを分かるような教材資料を作りまして、「皆さんがこの1400年前の大和朝廷のリーダーだったら、蘇我さんの話を聞いて、物部さんの話を聞いてどっちを応援しますか」っていう問題を作ったわけなんですね。[齋藤]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

花子: わあ、面白いですね。自分がその頃の大和朝廷のリーダーだったらどうするか、って考えるんですね。蘇我さんと物部さん、どちらにも言い分がありそうで、すごく悩みそうです。

伊勢: そうだろう。そして子供たちに自分で考えて貰い、自分ならどうするか、話し合って貰うんだ。理由も含めてね。ただし、どちらが正解ということはない。先人が違う方を選んでいたら、そこから違う歴史が始まっていた可能性がある、ということでね。

花子: 正解がないんですね。でも、だからこそ、真剣に考えられる気がします。

■3.日本という共同体の一員という自覚から生まれる自己肯定感

伊勢: 齋藤先生は、この授業を通じてこんな経験をされたんだ。

__________
それで子供たちにどんな変化が起きたかと言いますと、まさに私が作ろうとしていた日本人としての自覚と誇りが、育っていったわけですね。日本が好きになって、「日本のために何かできるような人になりたい」とか、そういう願いも聞かれるようになってきました。・・・
 この目標を達成すると「子供たちの自己肯定感のようなものが、めきめき上がってるな」「自分に自信を持ってやる気も出てきて、学級経営もすごくうまく回るようになってるな」ってことに気がつきました。つまり「日本という共同体の一員だ」という自覚が芽生えることが子供たちの自己肯定感の向上に非常に大きな効果があったということが分かったわけなんですね。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

花子: 齋藤先生の授業で、自分が日本という共同体の一員だという自覚が生まれるんですね。そこから、自己肯定感が生まれ、さらには「日本のために何かできる人になりたい」という気持ちが出てくる。歴史の授業でそこまで成長するなんて、すごいと思います。

伊勢: そうなんだ。子供たちも、そういう自分の成長を感じて、歴史の授業が大好きになるのだろう。

■4.若手の先生方による授業実践

伊勢: その後、多くの小学校の先生方が齋藤先生の授業の説明を聞いて、自分の授業でも実践を始めた。その一人が、千葉県の岡本先生だ。岡本先生は、自分で授業を始めた経緯を、こう説明している。

__________
 私が斎藤武夫先生の「日本が好きになる歴史 全授業」に出会ったのは2018年。私が小学校教員9年目で3度目の6年生を担任していた年です。当時お世話になっていた教頭先生から素晴らしい歴史授業の実践があるとご紹介いただきました。

 その年大宮で行われていた斎藤先生が時々この実践について教えてくださる勉強会にも参加しました。その年、斎藤先生に頂いた資料や勉強会で教わったことをもとに授業実践を推進していたのですが、子供たちが「日本ってすごい」「ご先祖様たち、ありがとう」と日本を誇らしく思っている様子を授業実践を通じて見ることができました。この授業実践の素晴らしさを感じた1年でした。[岡本]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
__________
岡本裕司「日本が好きになる!」授業を視覚からアップデートする」
https://youtu.be/6WAmiZ0qC5Q
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

花子: 若手の先生も、齋藤先生の授業を自分で実践して、子供たちの成長を感じとることができるのですね。それは教える立場からしても、とても嬉しいでしょうね。

伊勢: そう思うね。岡本先生は、3年間実践して、その効果を十分味わった後、1年間の育児休暇を使って、70時間分のパワーポイントのスライドをすべて作り直したんだ。歴史人物の画像とか、歴史的建造物の写真などもふんだんに使ってね。それによって、子供たちが当時の問題をよりリアルに受けとめられるようになった。

 齋藤先生、岡本先生の導入説明のあとは、1時間目から、若手の先生方9人が入れ替わり立ち替わりで、岡本先生のスライドを使いながら、「この場面で、こう問いかけると、子供たちがすごく盛り上がります」などと、授業風景を説明してくれる。それを聞いていると、それぞれの先生方が本当にやりがいを持って、齋藤先生の授業の実践に取り組んでいることが感じられるね。

■5.聖徳太子はどういう思いで、仏教を導入したのか?

伊勢: 若手の先生方にとっても、今までの教科書で歴史を教えていたのとは、まるで違った手応えを感じたんだと思うよ。それは従来の教科書の記述と比べるとよく分かる。仏教の導入について、ある小学校の教科書では、こう説明している。
__________
仏教をあつく信仰していた聖徳太子は法隆寺などを建てて仏教の教えを人々の間に広めようとしました。
 しかし聖徳太子は、豪族の力を十分におさえることができず、622年に49才でなくなりました。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

伊勢: 小学校の先生は、こんな文章をどう授業の中で説明するのか、途方に暮れてしまうだろう。子供たちには何か興味を持ってもらうために肉付けする必要があるけど、そもそも小学校の先生は、国語、算数、理科、社会から、はては図画工作から体育や家庭科まで教えなければならないから、それも大変だ。

花子: 私もこの辺は習ったはずですが、全然、記憶にありません。

伊勢: まあ、花子ちゃんの先生も、限られた時間で精一杯、何か解説したんだろうけど、概念的な説明をしただけでは、心にも記憶にも残らないよね。

 そもそも、この文章では、何のために、聖徳太子が仏教を広めようとしたのか、太子の思いが伝わらない。単に「自分があつく信仰していたから」という説明だけでは、支配者が自分の信仰を民衆に押しつけただけとも解釈できる。

 齋藤先生の授業の9時間目「仏教伝来と聖徳太子」では、次の太子の言葉を紹介して、どういう意味か、子供たちに考えさせる。
__________
わがくにの神々を幹として、仏教を枝として伸ばし、日本を豊かな国にしていこう。[齋藤H27]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ここから、また子供たちに「聖徳太子のお考えはどういう意味なのでしょう?」と聞く。すると「両方大切にする」といった答えが返ってくる。その上で、「1500年後のいまの私たちも、神様と仏様の両方を大切にしている」とまとめる。

花子: なるほど、私たちもお墓参りでお寺に行ったり、初詣で神社にいきますけど、こういう文化は聖徳太子から生まれたんですか!

伊勢: まさにそうなんだね。これは現代の専門の学者も述べていることだ[JOG(1282)]。齋藤先生の授業では、子供たちに自分で考えさせて、そういう最先端の学説にまで、触れさせるのだね。それも心に残る方法で。

■6.「人間形成につながる授業」「日本人としての自覚と誇りが育まれる歴史授業」

伊勢: 齋藤先生の授業と今までの教科書を比較したところで、齋藤先生がどういう思いで、この授業をつくってきたのか、振り返っておこう。齋藤先生は、小学校を中心に教師をしながら、20年もかけて、この授業をつくってきたんだ。その思いをこうまとめている。
__________
  20年間実践した歴史授業の願い

・歴史を、ただの暗記科目ではなく、子供たちの人間形成につながる授業にしたい
・日本人としての自覚と誇りが育まれる歴史授業をつくりたい[齋藤]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

花子:20年間もずっと同じ願いを持って授業を作り続けてきたんですね。「人間形成」とか「日本人としての誇り」って、歴史の授業でそこまで考えるんですね。

伊勢:そうなんだ。そしてこれは実は、教育基本法と学習指導要領が定めた歴史教育の目的、つまり「国家および社会の形成者の育成」に、ぴったり合致した願いなんだよ。ところが現在の歴史教育が暗記物でつまらない、と言われるのは、この教育の目的を、多くの教科書の執筆者たちが無視しているからだと思うんだ。彼らは歴史研究者であって、歴史教育者ではない。

 さきほどの「仏教をあつく信仰していた聖徳太子は法隆寺などを建てて仏教の教えを人々の間に広めようとしました」などという記述が良い例だね。こういう概念的な知識を教え込むだけで、花子ちゃんは、「さあ、今度は私が日本の国のために何かしよう」などと考えるかな?

花子: とても思いません。そもそも現代の私たちと何の関係もない知識のようですから。

伊勢: 歴史を学んで得られる感動とか感謝から、「日本のために何かしたい」という志が出てくるんだね。

■7.「リーダーの立場で問題を考え、話し合う」

伊勢: 齋藤先生は、「日本が好きになる歴史授業」の柱を次の4つにまとめているんだ。
__________
  歴史授業の4つの柱
1 日本のよさと独自性を学ぶ
2 先人の立場に立って考える
3 歴史を「自分ごと」として学べる
4 リーダーの立場で問題を考え、話し合う[齋藤]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 このうち第4項が、子供たちが歴史を好きになる主要因だね。冒頭に紹介したように、仏教導入に関して「蘇我さんの話と物部さんの話と、どっちを応援しますか」という問題を子供たちに話合ってもらう。これは第2項「先人の立場に立って考える」や第3項「歴史を『自分ごと』として学べる」とも深くつながっているんだ。

花子:「リーダーの立場で問題を考え、話し合う」というのが一番大事なんですね。

伊勢:まさにそこがポイントだ。これは文科省が学習指導要領で提唱している「主体的・対話的で深い学び」の実践そのものなんだ。

 主体的とは自分の頭で考え、心で感じることだ。対話的とは、その考えや感じたことを友達と語り合うことだ。自分の考えたこと、感じたことを言葉にすることで考えが深まるし、うまく言葉にできないところは自分がまだ理解できていない部分だということも分かる。こういう学習のメリットは、すでに学習心理学でも明らかにされているんだよ。

花子:言葉にしようとして初めて、自分が分かっていないことに気づく、というのは私も経験があります。でも「深い学び」とはどういうことでしょう?

伊勢: それがまさに「日本という共同体の一員だという自覚が芽生える」ことで自己肯定感が育ち、その結果として、日本が好きになって、「日本のために何かできるような人になりたい」と言う志が生まれてくる。こういう人間的な成長が「深い学び」であって、それによって、「国家および社会の形成者の育成」という教育基本法と学習指導要領の目的が達成されるわけだ。

 子供が「国の宝」だというのは、子供たちこそが将来の「国家および社会の形成者」になれるからだね。そういう意味で、齋藤先生の授業は、まさしく「国の宝を育てる授業」そのものだね。

スポンサーリンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました