2025-04-19

現代の日本

ただの“いいなり”

ただの“いいなり” 今度はいきなり相互関税の実施を90日間停止だそうで、それを受けて株価は急騰するなど、世界経済はトランプに振り回されて大騒ぎである。相互関税の実施を発表して以後、報復措置をとらず水面下で交渉意思を伝えてきた75の国々との間では、順次貿易や為替その他について交渉していくとする一方で、「最後まで付き合ってやる」と報復措置に出た中国に対しては125%の関税をかけるという二刀流で、引き続き妥協と交渉を迫っている。結局のところ、アメリカに有利なディール(取引、商談)ができるよう、まずはでっかくアドバルーンを上げて各国を揺さぶり、恫喝し、協議の席につかせる――ということなのだろう。 「90日停止」発表の3時間前にはトランプ自身がツイッターで「絶好の買い時だ!」と投稿しており、そこから株価は爆上げとなった。誰の目から見てもそれはそうなる。政権に入り込んだウォール街出身の猛者どもやトランプ界隈はさぞかしインサイダーで稼いだのだろう。日本との関税交渉を担当するベッセント財務長官なんて、もともとがウォール街のヘッジファンドマネージャー(ジョージ・ソロスが経営するソロス・ファンド・マネジメ...
現代の世界各国

世界恐慌は始まっている?レイ・ダリオとクルーグマンが警告する米国衰退と新たな世界秩序=高島康司

世界恐慌は始まっている?レイ・ダリオとクルーグマンが警告する米国衰退と新たな世界秩序=高島康司これから世界恐慌のようなことは起こるのか?トランプ政権が世界に課した相互関税を巡る動きが激しい。日本を始め各国はトランプ政権との個別交渉に乗り出しており、経済に甚大な影響を与えることになる高関税の税率の引き下げを目指している。4月16日にはイギリスとの合意が成立する可能性が報じられ、一律10%の関税率にする方向で動いている。相互関税の適用はすでに90日間の猶予が決定されているが、各国の交渉によっては一層低い税率が適用され、ちょっとした安堵感がこれから広がるにかもしれない。しかし、状況はそんなに単純ではない。株価の不安定、市場の大きな変動、そしてさらに憂慮すべきことに、米国債の利回りが上昇しているにもかかわらずドル安が進行している。先週、投資家は米国債から急いで撤退し、10年債利回りは過去数十年で最も急上昇した。これは、トランプの貿易政策の転換により、一部の投資家が世界の主要市場としての米国の長年の役割に疑問を投げかけるきっかけとなった。2024年末時点で外国人が8兆5,000億ドルの米国債を保...
現代の中国

中国最強カードを切る! 「米軍武器製造用」レアアース凍結から見えるトランプ関税の神髄

中国最強カードを切る! 「米軍武器製造用」レアアース凍結から見えるトランプ関税の神髄中国・江蘇省 輸出用レアアースを輸送(写真:ロイター/アフロ)習近平国家主席が遂に中国の最強カード「レアアース凍結」を切った。4月13日の論考<米軍武器の部品は中国製品! トランプ急遽その部品の関税免除>で、米軍武器製造の際の海外サプライチェーンにおいて中国製品が最も多いことを書いた。その中には他国で代替できるパーツがないわけではない。それでも中国に頼っているのは値段だけの問題ではなく、中国でしか製造できないパーツが多いからだ。中でもレアアースは中国の生産が世界一であり、中国でしか精錬できないものが多い。中国の精錬技術は世界の85%~99%を占める。そのため中国が「対米輸出を凍結する」と宣言した瞬間に米軍は武器を製造できなくなる可能性が高い。そのからくりを追いかけている内に、ようやくトランプ大統領がなぜ鉄・アルミなどに関税をかけ始めたかという、「トランプ関税」の神髄が見えてきた。◆中国の「レアアースなど」規制に対する一連の動き中国政府は4月4日に、7種類のレアアースを輸出規制の対象にすることを発表した。...
現代の世界各国

ロシア勝利で変わる「ナラティブ」…ゼレンスキーとウクライナはなぜオワコン化したか?「自由と民主主義」の物語の終わり

ロシア勝利で変わる「ナラティブ」…ゼレンスキーとウクライナはなぜオワコン化したか?「自由と民主主義」の物語の終わりウクライナ戦争におけるロシアの実質的な勝利によって、私たちを取りまく「ナラティブ」が急速に変化している。なぜゼレンスキー大統領とウクライナは急速にオワコン化したのか?欧州を含む世界が「自由と民主主義」に疑いの眼差しを注ぎ、「ウクライナ戦争の責任はNATOと米国にある」と考え始めた理由とは?日本の主要マスコミがいまだ正面から報じないこの劇的変化の背景について、『未来を見る! 「ヤスの備忘録」連動メルマガ』著者の高島康司氏が詳しく解説する。ロシア勝利で覆された、自由と民主主義という「ナラティブ」トランプ政権の仲介で見えてきたウクライナ停戦。今後も難しい問題はあるだろうが、ウクライナ戦争の停戦、そして和平条約の締結に向けた動きが加速し、最終的にはウクライナにおける占領地のロシア併合容認、そしてウクライナのNATO加盟断念と中立化、ゼレンスキー政権の退陣などを骨子とするロシアの要求を容認した和平条約が実現される可能性が高くなっている。ロシアの勝利と言ってもよい状況に、次第になりつつ...
科学論

もはや魔法では…この宇宙を支配する「4つの力」が秘めた「不思議すぎる性質」

もはや魔法では…この宇宙を支配する「4つの力」が秘めた「不思議すぎる性質」世界に存在する「4つの力」前回の記事で、この宇宙にあるものは素粒子でつくられているという話をしました。でも、宇宙は「もの」だけではできていません。例えば、サッカー場にボールを持って選手が集まっただけでは、サッカーの試合をしたことにはなりません。ドリブルして、パスして、シュートをすることで、サッカーをしたと言えます。このドリブルして、パスして、シュートしてという動きについて、ここまでまったく触れてきませんでした。この動きを生み出す作用を「力」と呼びます。この宇宙では、ものだけがあっても、力が働かないと何も起きません。力と聞いて、皆さんはいろいろな力を思い浮かべると思います。ボールを蹴ったり、ゴールに点が入らないようにボールを止めたりする力。ボールを投げたり、バットで打ったりする力。鉛筆の芯を折ってしまう力。「おしくらまんじゅう」をする力もあるでしょう。私たちはいろいろな種類の力を使っている、と思っています。でも、本当にたくさんの種類の力を使っているかというと、そうではないのです。この宇宙に働いている力を整理していく...