2025-04-10

現代の米国

高関税策で米覇権を壊す

高関税策で米覇権を壊す2025年4月7日   田中 宇トランプ米大統領が、世界各国に対して各種の高関税策をかけ始めている。その目的は「米経済覇権体制=グローバリズムの解体・破壊」、別の言い方をすると「世界経済の多極化」だ。米覇権が低下すると、世界は自然と多極化する(すでにしている)。だから、米覇権の破壊と多極化は同じものだ。1980年代の米英金融自由化(経済の債券化。ビッグバン。プラザ合意)以来、世界は、米国(米英欧)が金融、その他の世界は製造業、という役割分担があり、米金融の利益率が世界の製造業より高い状態が維持され、この要素が米(英)覇権の中心になっていた。(US tariffs hit Europe, China harder than expected, recession risks rise: Barclays)この米金融覇権体制は、米国が世界から商品を旺盛に輸入する替わりに、世界は対米輸出で儲けた資金を米金融界に預託(投資)し、米国が資金面で世界を席巻する仕組みだった。覇権放棄屋(隠れ多極主義者)のトランプは今回、世界から米国への輸入品に高関税をかけ、米金融覇権体制を潰し...
現代の欧州

ウクライナでの勝利を前提にした西側の脚本が崩壊、西側の支配システムも崩壊

ウクライナでの勝利を前提にした西側の脚本が崩壊、西側の支配システムも崩壊 2月23日に実施されたドイツの連邦議会選挙で第1党になったCDU/CSU(キリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟)の支持率が組閣前に低下、最新の世論調査によると、その支持率は第2党のAfD(ドイツのための選択肢)と同じ24%だ。組閣前に新政府は国民から見放され始めている。 選挙でCDU/CSUは32%を獲得、第2党のAfD(ドイツのための選択肢)は21%だった。現首相のオラフ・ショルツが率いるSPD(社会民主党)は20%で第3党だが、CDU/CSUを率いるフリードリヒ・メルツは選挙公約を投げ捨て、ロシアとの戦争を続けるために多額の負債を国民に追わせることを決め、SPDや第4党の同盟90/緑の党に接近している。 メルツはアンゲラ・メルケルのライバルと言われた政治家だったが、2004年にはメイヤー・ブラウン法律事務所の上級顧問に就任した弁護士でもある。2009年には政界から身を引き、大企業の重役を務めているのだが、そうした会社のひとつがブラックロック。2016年から20年にかけて監査役を務めている。 1970年代から...
現代の米国

トランプ政権が関税を課すのは金利を下げ、国内産業を復活させるためだとの見方

トランプ政権が関税を課すのは金利を下げ、国内産業を復活させるためだとの見方 ドナルド・トランプ政権は各国に高率の関税を課そうとしている。貿易赤字に応じて税率を決めているようで、世界経済に対する悪影響を懸念する声があがり、報復するという発言もある。 こうした懸念は当然だろうが、ヨーロッパはバラク・オバマ政権がウクライナで仕掛けたクーデターによって大きなダメージを受けている。2014年2月のクーデターによってキエフは事実上のネオ・ナチ体制。その体制をコントロールしているのはイギリスやアメリカのネオコンだ。 クーデターの前、ヨーロッパとロシアは経済的な結びつきを強めていた。最も重要な商品はロシア産の天然ガス。アメリカや中東で生産されるエネルギー資源より安く、ヨーロッパ経済を支えていたのだが、クーデター後、ベラルーシとポーランドを経由してドイツへつながるヤマル-ヨーロッパ・パイプライン、ウクライナを経由するソユーズ・パイプラインはアメリカによって寸断されてしまった。 それに対し、ロシアとドイツはウクライナを迂回するパイプラインのプロジェクトを建設していた。そのひとつが「ノード・ストリーム1(N...
現代の米国

トランプ関税で米国内も大混乱…始まった深刻な不況と「ふさわしくない市民」の排除=高島康司

トランプ関税で米国内も大混乱…始まった深刻な不況と「ふさわしくない市民」の排除=高島康司トランプ政権の高関税の発動に各国は脅えている。しかしながら、高関税適用で懸念される米国内の余波も大きい。新たな不況は始まる可能性が高い。これらのリアルな状況を詳しく伝える。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)【関連】今ここが人工知能「人間超え」の出発点。米国覇権の失墜、金融危機、大量辞職…2025年には劇変した世界が待っている=高島康司※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2025年4月4日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。高関税の導入で米国内で起こっていること日本時間の4月3日、午前5時にトランプ大統領は相互関税が適用される国々が発表になった。すでにトランプ政権は、カナダとメキシコに25%、中国に20%の関税の適用、ならびにアルミ、鉄鋼、自動車、自動車部品にはすべての国に一律25%の適用を発表している。今回、新たに発表になった高関税は、すべての国々に一律10%の関税を適用した...
生命科学

生命は「宇宙で生まれた」…パンスペルミア説の「2つの根拠」から明らかになる「否定はしないけれど、すっかり鵜呑みにはできない」ワケ

生命は「宇宙で生まれた」…パンスペルミア説の「2つの根拠」から明らかになる「否定はしないけれど、すっかり鵜呑みにはできない」ワケ「生命は宇宙で生まれた」というアレニウスの着想生命の起源は謎に包まれている。生命は地球で生まれた可能性が高いけれど、起源がはっきりとしない以上、宇宙で生まれた可能性も完全に否定することはできない。「生命は宇宙で生まれた」という仮説をパンスペルミア説という illustration by gettyimagesこの、「生命は宇宙で生まれた」という仮説のなかで、もっとも有名なものがパンスペルミア説である。パンスペルミア説は、スウェーデンの物理化学者でノーベル化学賞の受賞者でもあるスヴァンテ・アレニウス(1859~1927)により、1903年に提唱された。アレニウスは、胞子のような何らかの強固な構造を取った細胞が、地球の歴史の初期に、宇宙からもたらされた可能性を示したのである。スヴァンテ・アレニウス photo by gettyimages細胞が宇宙空間を移動する手段として、アレニウスは光の放射圧を考えた。物体が光を放射したり吸収したり反射したりすると、微弱だが圧力...