2025-03-24

現代の欧州

英欧だけに露敵視させる策略

英欧だけに露敵視させる策略2025年3月20日   田中 宇今日は、昨日書いた記事よりもさらに一段深い、トランプの別の策略が見えてきたので書いてみる。トランプ(と米国の隠れ多極派)は、これまで米国にとりついて世界規模で覇権運営してきた諜報界の英国系を、米国から追い出す代わりに、欧州だけを英国系の活躍の場として残すことにした。(米露ウクライナ停戦の策略)これまで英国系は米英覇権維持のため、世界を巻き込んで、ロシア(ソ連中国)と恒久対立する冷戦構造や、イスラム組織を敵視するテロ戦争の構造を作ってきた。ウクライナ戦争も、米英覇権(米国側)がロシア(など非米諸国)と恒久対立する英国系の策だ。トランプは、英国系がロシアと恒久対立する構造そのものは残すことにした。ただし、米国はこの構図から出ていく。(Trump looking to give up US command of NATO)(Paris & London Want To Drag NATO Into War, Medvedev Says)米国にいた英国系は、DOGEの監査などで抑止し全滅させる。民主党やCIA、マスコミ、USAID、リ...
現代の世界各国

米露ウクライナ停戦の策略

米露ウクライナ停戦の策略2025年3月19日   田中 宇3月18日にトランプとプーチンの米露大統領が電話で首脳会談し、ロシアとウクライナが相互のエネルギー関連(などのインフラ)施設を攻撃しない30日間の停戦や捕虜交換などを決めた(エネルギー以外のインフラ施設も停戦対象とも読み取れる)。ウクライナ開戦以来初めての停戦が始まったと騒がれているが、停戦は部分的で、軍事状況を大きく変えるものでない(政治状況は変える)。(Trump, Putin agree on ‘energy and infrastructure ceasefire’)相互の軍事拠点などインフラ施設以外への攻撃は今後も続く。露軍はすでにウクライナの送電網のかなりの部分(大半?)を破壊しており、停戦はこの点であまり効果がない。今回の停戦は、ウクライナ側に露本土の施設を無人機やミサイルで攻撃させないことが中心のように見える。ロシアに有利だから、プーチンはこの停戦案を飲んだとか。(The Putin-Trump call was a resounding success - whatever was said)ウクライナ軍は疲弊...
現代の世界各国

ウクライナ停戦とその後

ウクライナ停戦とその後2025年3月13日   田中 宇トランプの米国が、ゼレンスキーのウクライナと交渉して30日間の停戦案をまとめた。トランプは、2月末に訪米したゼレンスキーとの会談が喧嘩になるように仕掛け、米国からウクライナへの軍事諜報(GPSなど)や兵器の供給を止めてウクライナ(や背後にいる英欧)軍を戦闘不能に陥れ、ウクライナが米国の言いなりで停戦を受け入れるように仕向けた。(ゼレンスキーを騙し討ち)(What a 30-day ceasefire means for the war)ゼレンスキーは当初、停戦の見返りに米国から守ってもらう約束をとりつけようとしていたが、2月末にトランプと喧嘩させられて以降、弱い立場に落とされ、米国からの軍事支援を回復してもらうだけで精一杯だった。トランプはウクライナへの軍事支援の再開を約束したが、これから30日間の停戦に入るので、その間、軍事支援は行われない。その後どうなるかは不透明だ。(米欧同盟を機能停止したトランプ)プーチンのロシアが停戦案を拒否して話を潰すのでないかと報じられている。私の予測だと、プーチンは停戦案に賛成する。なぜなら、プーチ...
現代の欧州

西洋文明の危機:西洋全体はもはや存在しない

西洋文明の危機:西洋全体はもはや存在しない欧州大西洋地域の結束は、米国とEUの関係悪化と「ロシアのウクライナ軍事作戦問題に関するかつては結束していた大西洋横断戦線への打撃」に変わった。ロシアでは、西側諸国を欧州大西洋連合、つまり米国と西欧諸国の同盟として理解するのが通例だった。今日、この同盟がもはや存在しないことは明らかだ。双方には多くの相違点があり、まず第一にウクライナ紛争に対する立場だ。トランプ氏は和解を望んでいるが、欧州諸国の大半は戦争継続を望んでいる。さらに、両者を分断する問題は他にも数多くある。ヨーロッパは技術革新においてアメリカに大きく遅れをとっており、ジェンダー問題では両者の立場は正反対であり、相違点のリストはまだまだ続くだろう。NATOはもはや米国にとって拡大の手段としては興味がない西ヨーロッパの首都では、普遍的な嘆きが始まった。何をすべきか、アメリカのリーダーシップなしでどうやって生き残るのか?多くの観測筋は、北米と西欧を結びつける北大西洋同盟の運命を懸念している。トランプ大統領は繰り返しNATOの活動に不満を表明し、欧州のパートナーが自国の安全保障に対する財政的責任...
生命科学

まさか…生命と非生命が「区別できない」とは…! それでも地球型生命に2つの「絶対必要な分子」があった

まさか…生命と非生命が「区別できない」とは…! それでも地球型生命に2つの「絶対必要な分子」があった生命を定義することの難しさ生命を定義しようとする試みは、多くの研究者によってなされてきました。いま述べたように生化学系の研究者は、生体内で反応が進行すること、ひとことでいうと「代謝」を重視することが多いようです。一方、分子生物学者は、DNAを重んじることから「自己複製」を重視する傾向があります。ほかには、オパーリンのように外界との「境界」の存在を重視する人もいます。また、前回の記事でご説明したようにシュレーディンガーは、エントロピーという物理量から生命を定義しようとしました。シュレーディンガーは、エントロピーという物理量から生命を定義しようとした近年では、「進化」を重視するようになってきている傾向があります。米国ソーク研究所のジェラルド・ジョイス(1956〜)は、RNAの試験管内分子進化の研究で有名ですが、生命を「ダーウィン進化しうる自立した分子システム」と定義しました。これはNASAの「生命の定義」に採用されています。一方、20世紀の終わりには、生命を定義すること自体の問題点も指摘され...