禁じ手でひっくり返る米大統領選…トランプ・ハリス両陣営の“ゴネ得”戦略とは?本当の戦いは投開票後か=高島康司

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禁じ手でひっくり返る米大統領選…トランプ・ハリス両陣営の“ゴネ得”戦略とは?本当の戦いは投開票後か=高島康司 | マネーボイス
2024年アメリカ大統領選挙が11月5日(日本時間11月6日)に迫るなか、民主党・共和党それぞれが敗北時に検討しているとされる“禁じ手”が注目されている。トランプ・ハリス両陣営が合法的手段を越えた実力行使を視野に入れるなか、国を揺るがす混乱が生じる可能性が浮上。2021年1月6日に起こった連邦議会議事堂乱入事

禁じ手でひっくり返る米大統領選…トランプ・ハリス両陣営の“ゴネ得”戦略とは?本当の戦いは投開票後か=高島康司

2024年アメリカ大統領選挙が11月5日(日本時間11月6日)に迫るなか、民主党・共和党それぞれが敗北時に検討しているとされる“禁じ手”が注目されている。トランプ・ハリス両陣営が合法的手段を越えた実力行使を視野に入れるなか、国を揺るがす混乱が生じる可能性が浮上。2021年1月6日に起こった連邦議会議事堂乱入事件を越える大混乱になることは避けられない。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)

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※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2024年11月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

ハリスが敗北した場合の禁じ手

米大統領選挙が間近に迫っている。ハリス陣営もトランプ陣営も全力で最後の選挙キャンペーンを行っている。米有カシンクタンクの「ブルッキングス研究所」は、「大統領選の最重要州で大接戦」という記事を発表し、7つある激戦州のひとつで、19人という選挙人数をかかえるペンシルバニア州が、大統領選挙の勝敗を決することになるだろうと予測した(原稿執筆時点:2024年11月1日)。

また、合法的予測市場である賭けサイト「カルシ(Kalshi)」では、ペンシルベニア州の勝率が、トランプ58%、ハリス42%とトランプが圧倒的にリードしている。さらに、9つの世論調査機関の平均値をリアルタイムで掲載している「リアルクリア・ポリティックス(Realclearpolitics)」によると、トランプはハリスとのリードを広めており、全国の支持率ではトランプが0.8ポイントほどハリスをリードしている。そしてトランプは、7つの激戦州すべてで、支持率がわずかながらハリスを上回っている。

トランプとクリントンが争った2016年の大統領選挙では、全国の得票数ではクリントンが300万票ほどトランプを上回ったものの、選挙人の獲得数ではトランプが上回り勝利した。情勢に変化がなければ、2024年の選挙では、トランプが全国の総得票数でも、選挙人の獲得数でもハリスを上回り、勝利する可能性がある。「リアルクリア・ポリティックス」のデータに基づき、50州すべての選挙人獲得数をシミュレーションしているユーチューブのチャンネルは、ハリスが242人、トランプが過半数の270人を上回る292人の選挙人を獲得し圧勝するだろうと予測している。

トランプは民主主義否定の独裁者?ハリス陣営のネガティブキャンペーン

このような状況なので、民主党の危機感は非常に大きい。なんとしてでもトランプの優勢を逆転するためのキャンペーンに力を入れている。それは、トランプを民主主義を否定する独裁者として、トランプを印象づけるネガティブキャンペーンだ。

前トランプ政権のホワイトハウス首席補佐官を務めた退役海兵隊大将のジョン・ケリーは、29日に掲載された一連のインタビューで、前大統領は「一般的なファシストの定義に当てはまる」と述べ、ヒトラー率いるナチスドイツの将軍たちの忠誠心についてトランプが評価していると語った。

これは、トランプ前大統領のホワイトハウススタッフが大統領職をどう捉えているか、また政権に返り咲いた場合にどのような権力行使を行うかについて、前大統領の側近が警告を発した最新の一例である。

ファシスト的発言に加えケリーは、「ニューヨーク・タイムズ紙」に対し、前大統領は「間違いなく独裁者的な手法を好む」と語った。またケリーは、「アトランティック誌」に対し、トランプが第二次世界大戦中にヒトラーのナチス将軍たちがドイツの独裁者に対して示したのと同じ敬意を軍人たちから示してほしいと語ったことを認め、そのときの様子を語った。

民主党はすぐにこの発言に飛びついた。ハリスの副大統領候補であるミネソタ州知事のティム・ワルツは、ウィスコンシン州での集会で、ヒトラーの将軍たちに関する報道された発言について、「皆さん、ガードレールはなくなりました。トランプは狂気へと向かっています。米国の元大統領であり、米国大統領候補がアドルフ・ヒトラーのような将軍を望んでいると言っているのです」と述べ、トランプは独裁者だとして、その危険性を強調した。

また、民主党左派の重鎮、バーニー・サンダース上院議員もことあるごとにインタビューやスピーチで、トランプは合衆国憲法を無視するファシストの独裁者だとしてトランプを強く非難している。これはハリスも同様だ。あらゆる機会でトランプをファシストの独裁者だと非難し、トランプが当選すると、合衆国憲法を無視する大統領独裁制になると、その危険性を強調している。

「プロジェクト2025」の「統一行政理論」

このように民主党は、トランプを危険なファシストの独裁者だとするキャンペーンを一斉に始めた状況だ。トランプの危険性を訴えることによって、形勢を逆転する戦略だ。

そして、こうしたトランプ批判の根拠になっているが、トランプ政権が政策として採用する可能性の高い政策計画書の「プロジェクト2025」だ。これは920ページもあるトランプ政権を意識した政策計画で、保守の著名なシンクタンク、「ヘリテージ財団」が作成したものである。

ちなみにこの政策計画書は、「統一行政理論」という合衆国憲法の解釈に基づいている。「統一行政理論」とは、大統領に連邦政府の省庁の改編や官僚の罷免、さらに省庁や政府部局の予算の没収権などを認め、大統領の行政府に対する絶対的な権限を認めるとする理論だ。批判者はこれを大統領独裁制と呼ぶ。

「プロジェクト2025」の基本的な骨子はこの理論で一環している。行政府に対するすべての権限を大統領に集中させ、その巨大な権力を使って、「ディープ・ステート」と呼ばれる「ネオコン」を中心とした軍産複合体系集団の連邦政府における牙城をたたき潰すとしている。これは「ディープ・ステート」のみならず、トランプ政権の意向にしたがわないすべての部局が処分対象のなる。さらに、5万人の職員を解雇し、トランプに忠誠を誓う政治任命の公務員に置き換えることを約束している。

民主党のハリス陣営は、このような「統一行政理論」に基づく「プロジェクト2025」は、まさにトランプの大統領独裁制を可能にする計画書であるとして、トランプがファシストの独裁者であることの証左だとみなしている。

「合衆国憲法第4条第4項」

トランプの優勢がはっきりするにつれて、民主党はトランプの大統領就任の阻止にやっきになっている。たとえ、トランプが選挙で勝利しても、トランプ政権の成立を実力で阻止する構えだ。

そのときに適用を検討しているのが、「合衆国憲法第4条第4項」の規定である。前回の記事では、トランプが勝利してもバイデン政権は権力の委譲を拒否する可能性があると書いたが、この委譲拒否の根拠になっているのが、「合衆国憲法第4条第4項」である。この条項には次のようにある。

合衆国は、この連邦のすべての州に共和制の政府を保証し、各州を侵略から保護するものとする。また、立法府の申請に基づき、または(立法府が召集できない場合は)行政府の申請に基づき、国内暴力からも保護するものとする。

ちなみに共和制の政府とは、世襲の君主制に対する対立概念である。アメリカの共和制は、主権を持つ国民が大統領と議会を選出する民主共和制を基本としている。これは連邦を構成する各州も同じで、州民の選挙で選ばれた民主共和制の政体を維持しなければならない。憲法のこの条項は、大統領府に州の民主共和制の維持を義務づけるものである。当然この規定は、連邦政府に対しても適用されると解釈されている。

前回の記事にも書いたが、これは選挙を通して民主共和制を否定する独裁者の出現を阻止するための条項だ。したがって、もしトランプが当選すると、民主党はこの条項を適用し、大統領独裁制を主張し憲法を否定するトランプから合衆国の民主共和制を守るために、バイデン政権は権力の委譲を拒否する権限があるというのだ。バイデンはこれを宣言した直後に辞任し、ハリス副大統領が大統領に就任する。ハリス政権が成立すると、ハリスは「憲法制定評議会」を発足し、この手続きの合法性を審議し、確認する。

これはあまりに極端で、いくらなんでも実行は不可能ではないかと思うかもしれないが、民主党のハリス陣営は「憲法第4条第4項」を適用して政権を維持することを本当に検討しているようなのだ。いま行っているトランプを独裁者とするキャンペーンは、まさに「憲法第4条第4項」の適用を意識したものだ。

トランプの対応、選挙の結果をひっくりかえす

では、トランプ陣営が敗北した場合、どのような対策を考えているのだろうか?民主党以上にトランプ陣営も、簡単に敗北を認める気配はない。特に今回は、敗北したとしても接戦になるので、簡単に引き下がることはない。

トランプ陣営が検討しているのは、選挙に不正であったとし主張し、選挙結果をひっくりかえそうとした2020年の大統領選挙と基本的に同じ手法である。

まず、トランプが僅差で敗北した激戦州で、なおかつ州議会で共和党が過半数を占める州で、選挙に不正があったとするキャンペーンを実施する。支持者を総動員して抗議運動を組織する。このとき、規定では5分の1の州議会議員が票の再集計に同意すると実際に再集計ができることになっている。共和党が議会の過半数を占める激戦州ではこの条件が満たされる可能性が高いので、実際に票の再集計は実施される。このとき不正選挙があったことを根拠に、共和党の票を積みましする。

各州は12月11日までに選挙人を確定する。そして12月17日に集まって投票し、結果を上院などに送付すると定めている。12月11日までに、再集計した結果を元に選挙人を共和党支持に入れ替える。そうして選ばれた新しい選挙人で12月17日に投票し、結果を連邦議会の上院に送付する。

その後、選挙人の投票結果は2025年の1月6日に開催される上下合同議会の投票で確定される。それを受け、1月20日にトランプが大統領に就任する。このような方法だ。

大混乱は避けられない

前回の記事にも書いたが、いま両陣営が敗北した場合に検討されている上記の手段を本当に実行するのであれば、2021年1月6日に起こった連邦議会議事堂乱入事件を越える大混乱になることは避けられない。

トランプの激戦州における票の再集計と選挙人の入れ替えは民主党からのすさまじい反発を招くだろうが、それよりもやはり、民主党が実施する「憲法第4条第4項」の適用による権力委譲の拒絶であろう。

本当にこれが実施されるのかどうかはまだ分からない。もちろんトランプが勝利した場合、民主党は国内の分裂と混乱の回避を優先し、トランプの勝利を容認するかもしれない。しかし、そうではない対応をする可能性も十分にあるのだ。もしそうなった場合、怒り狂ったトランプの岩盤支持層は、武器を取って抵抗するだろう。

ここまで混乱するだろうか?大統領選挙は日本時間の11月6日だ。目前に迫っている。本当に注目しなければならないだろう。

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